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不信

 魔獣を撃退し、馬車を出発させた。

 御者に聞いたところ、魔獣に襲われるのは珍しいというか、ほとんどないとのことだった。

 ならば、この状況はどういうことだろうか。


 最初の襲撃から二時間後、今度はオオカミのような魔獣が集団で現れた。

 馬車からアメリアが降りた。


「今度は数で勝負ですか……無駄なことを」


 武蔵はアメリアのつぶやきが聞こえてしまった。

 低い、冷えた声で話すアメリアを知らない。

 背筋に悪寒が走った。


「馬車周辺に簡易結界を張ります。出ないようにしてくださいね」


 アメリアは結界を張り、一人で戦った。

 牙をむき出し襲い掛かってくる魔獣に対し、いなすように攻撃をかわす。

 隙ができた魔獣の首を一刀にした。

 うなり声とともに次の魔獣が飛びかかった。

 後ろに飛び、回避したアメリアは手をかざし、魔術を使った。

 三匹の魔獣に直撃し、燃えた。

 火に怯んだ魔獣に近寄り、一匹目同様に首をはねた。


 すべてを倒し終わったアメリアの軍服は、返り血に染まり、青が黒く変わっていた。


 馬車の結果を解き、アメリアが戻ってきた。

 無意識に武蔵は怯えてしまった。

 その行動にアメリアは目を伏せ、武蔵から一番離れた席に座った。




「武蔵くん、その行動はダメだよ」


 次の休憩時、雪に怒られた。

 武蔵もわかっている。わかっているが、目の前で繰り広げられた戦闘とアメリアの絶対的な強さに怯えてしまった。


「わかっている……わかっているけど、本能が怖いというんだ。雪は怖くないのか?」


 戦闘後、アメリアに普通に接していた雪。怖くないのだろうか。


「アメリアさんはアメリアさんだから怖くない」


 雪が何を言いたいのか、微妙にわからないが、アメリアを信用しているのだろうか。

 武蔵は答えが出ないまま、馬車での旅を続けた。



 その後も魔獣の襲撃は続いた。

 そのたびにアメリアが剣を振るい、魔獣を撃退した。

 慣れてきた雪は声援を送るほどだった。

 武蔵はその様子を見ながら、雪が言ったこと、アメリアへの振る舞いを考え続けた。



 そして、答えが出ないまま北の娯楽の都市“ニガヴィー”に到着してしまった。



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