魔導書の作成
「では、魔導書を作成します。おそらく、空間系の魔術を封じ込めたものと思われるので、試してみましょう」
真っ白なページを開き、手をかざしたアメリアが何かを唱え始めた。
手のひらから光が放たれる。青白い光は本に吸い込まれていく。
しばらくして、手の光が収束した。本を閉じ、アメリアは一息ついた。
魔導書は以外にもあっさりと作成された。
「空間系の魔術を封じ込めましたので、その球体を乗せてみてください」
武蔵は抱えていた球体を本の上に置いた。
球体が本にゆっくりと沈んでいった。
球体のすべてが本に沈むと、ぼんやりと本が光始めた。
「次に、前の魔導書のページをつなげましょう」
雪が切り取ったページを取り出した。
アメリアに渡し、最後のページに接着剤でつなぎ始めた。
ケイシーは無事なのだろうか。
武蔵は作業をじっと見つめた。
ページがつなぎ終わった。
「ケイシー……」
ぽつりと武蔵が言った。
つなげたページに文字が浮かび上がってきた。日本語だ。
『私は無事です。ありがとう』
短い文章だったが、武蔵にはそれで十分だった。
「この文字は!“イズミ”が用いた幻の文字ではないか!何と書いてあるんだ?」
ハンナが乱入してきた。まだ暴走は収まっていなかったようだ。
「ハンナ、ちょっと落ち着いてくれないかしら」
「これが落ち着けることか!幻の文字はいまだに未解明なのだよ」
暴走したハンナの相手はアメリアに任せた。
武蔵と雪が本をじっと見た。
「雪、よかったな。ケイシーが生きている」
「うん、よかった。でも、なんで魔導書が燃えたんだろう……」
疑問はそれだけではない。図書館内にあったはずの魔導書が、外へ持ち出されたことも疑問として残っている。
サラ女王が言っていた妨害が始まったのだろうか。
考えても答えは出てこないが、この先気を付ける必要があるだろう。
「“イズミ”が結界を築いた後の足取りが全くわからないんだから、国中に散らばった幻の文字で書かれた文章にヒントがあるかもしれないのよ」
ハンナとアメリアの言い合いはまだ終わっていなかった。
「それに、王宮にある霊廟も何が祀られているのかわかったものじゃないわ。アメリア、あんたの権限で中見せてよ」
そうだ、王宮には過去の英雄の霊廟があるとダンが言っていた。
武蔵もハンナの話に興味がわき、アメリアとの言い合いを聞いた。
「あそこは王族と一部の家臣以外は立ち入り禁止区域。一介の研究者が許可される場所ではないわ」
腕を組み、顔をそらすアメリア。しかし、ハンナはしつこく粘った。
「総団長の随伴ならいけるでしょう」
「だから、無理よ。女王陛下の許可くらいは必要となるわ」
二人の話の中で、気になるキーワードが出てきた。
武蔵はアメリアに恐る恐る聞いた。
「アメリアさん、総団長って……」
アメリアからではなく、ハンナが答えた。
「何、あんたたち知らなかったの?アメリアはこの国の軍部トップの総団長様よ」
「だから、なんでもできたんだ……」
ダンが話していた、複数のギフトを持つ総団長。それがアメリアだった。
ならば、魔獣を倒した剣術も魔術も使えたのか。
王宮でなんでもしていたというのは、このことだったかと武蔵は思った。
「ただの肩書です。それよりも、霊廟への立ち入りはできませんから」
「ここまで手伝って、ただ働きはいやよ」
ハンナの言い分ももっともだ。
「ならば、この魔導書の管理をお願い。図書館が安全ではない今、どこかに隠す必要があるから」
「のった!魔導書はハンナが預かったわ!!」
第三の封印の保管場所が決まった。過去の英雄マニアの元にあれば、大事にされるだろう。




