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ケイシー

「この建物の屋上から元の世界に戻れるから!」


 ケイシーの誘導に従い、三人は走った。第三の封印――球体は武蔵が抱えている。

 廊下を走り、階段を駆け上がり、屋上へ通じるドアを開けた。


 校舎の周りは火の海だった。


「燃えてる……」


 ぽつりと雪が言った。本が燃えると、この世界まで燃えるようだ。


「火がここまで回ってくる前に、ここから飛んじゃって!」


 三人は驚いた。下は火の海だ。そこに向かって飛び降りろとは、いったいどういうことか。

 躊躇した雪の背中をケイシーが押した。


「早く、落下している途中で、空間の歪みに入るから大丈夫!」


 雪は押されるがままに、屋上のフェンスまで行った。

 フェンスに手を触れた瞬間、そこにあったフェンスは消えた。

 ここから飛び降りる――ごくりと生唾を飲み込んだ。


「ひもなしバンジーって、経験ないんだけど……」


「雪、俺もそんな経験はないから。普通の人はそんな経験しないし」


 雪と武蔵の二人がためらっていると、アメリアが進み出た。


「ここから飛び降りれば、元の世界に戻れるんですね?」


 そう言い、飛び降りた。


「!!!」


 雪は慌てて、下を見た。

 空中に光の輪ができ、その中にアメリアは消えて行った。


「ほら、大丈夫だから」


 ケイシーが胸を張って言った。そして、まだ下を覗き込んでいた雪の背中を押した。


「ぎゃぁああああ!!」


 ひどい叫び声をあげながら、雪が落下していった。

 アメリアの時と同様に、光の輪ができ、吸い込まれていった。


「さて、あとは一人……」


 ケイシーの目が光った。びくっと武蔵は身をすくませた。


「なぁ、ケイシーが先に飛んでくれよ。火が回ってくる前に飛ぶ決心をするから……」


 武蔵は高いところが苦手だった。屋上は柵があるからと言い聞かせていれば大丈夫だが、飛び降りるとなると話は別だ。


「……ダメなんだな。私はここの管理人だから」


 ケイシーが顔を伏せた。


「管理人だから、ここを離れられないのか?それじゃ、火が回ってきたらどうするんだ?」


「一緒に燃えちゃうね……だから、早くここから逃げなよ」


 武蔵はケイシーを置いていくなんてことができなかった。


「他に方法はないのか?一時的に本の外に出る方法とか……」


 その言葉は願いにも似ていた。もし、出る方法があれば、ケイシーが先に取っているだろう。

 ケイシーがここに残るしかないと言っている以上、手立てがないのだ。


「すぐに本についた火を消せば、この世界も問題ないけど、私が気づいたときは火の回りが早く、手遅れだった。だから、封印だけでもどうにかする方法をとるしか、もう道はないの!」


 ケイシーの目に涙が浮かんでいた。よく見ると、小さく体が震えていた。

 ケイシーも怖いのだ。自分の存在が消えてしまうのが。


「……わかった。でも、他に方法がないか最後まであがくからな!俺は諦めることにはなれているけど、今回ばかりは諦めない!!」


 武蔵はそう叫び、屋上から身を投げた。



 光の輪をくぐった瞬間、世界が回転するような眩暈を感じた。

 目を閉じ、球体をぎゅっと抱えなおした。

 眩しい光が目に入り、足が地面についていることに気が付いた。


「武蔵くん!」


 雪の声が聞こえた。閉じた目を開いたら、木や建物の一角が目に入った。


「図書館の中じゃないのか?」


「図書館の裏側です。近道をするのに、昔何度か通ったことがありますから、知っている場所です」


 アメリアの説明を聞き、余計になぜ、と思ったが、先にすることがある。


「本、魔導書は!?」


 武蔵は周囲を見渡した。


「魔術で水を出して、火は消しましたが……」


 アメリアが指差す先を見た。そこには黒く、炭の塊のようなものがあった。


「アメリアさん、魔導書の管理人を外に出したり、保護したりする方法ってないですか?」


 武蔵が何を言いたいのか、アメリアは理解した。理解したが、回答はできなかった。



「アメリアさん、この魔導書からまだ声が聞こえるよ」


 雪がしゃがんで、炭の塊となった魔導書に手を当てて言った。


「本の内部でまだ燃えていないページがあるから、多分そこから声がしているんだと思うんだけど」


 魔導書を開き、炭化したページをめくっていくと、中心部にまだ燃えきっていないページがあった。


「新しい魔導書にそのページを移植すれば、うまくいく?」



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