魔導書
目を開けたら、そこは図書館ではなかった。
窓から光が差し込む廊下にいた。
「ここは……俺たちの高校?」
廊下に見覚えがあった。通っている高校の一階の職員室前だ。
戻ってきたのだろうか。
武蔵はそう思ったが、この高校がおかしいことに気が付いた。
まだ昼間だというのに、人の気配が全くしないのだ。
あの世界に行ってから日にちが経ち、土曜か日曜になってしまったのだろうか。
それでも、運動部が活動しているはずだ。グランドから声がしないのはおかしい。
「ちょっと確認したいことがある」
武蔵はそういい、職員室へ入った。
やはり誰もいない。
教師の机は書類が散乱しており、今しがた、人が居たかのようだ。
武蔵は職員室の後ろにある黒板へ近寄った。
黒板には行事などの日程が書かれていた。
そこに武蔵が探していたものがあった。
「武蔵くん、何か見つけたの?」
後ろからついてきた雪が覗き込んだ。
武蔵が見ていたもの――それは日付だった。
「この年度、十五年前の日付だ」
三人は、一旦職員室から出て、廊下に居た。
「武蔵さん、ここはどこなんですか?」
アメリアは高校を知らないから、説明をしなければならない。
だが、十五年前ということは、武蔵も雪も知らないも同然だ。
頭をかきながら、武蔵は言った。
「ここは俺たちが来た場所の十五年前の場所だと思いますが……人の気配がしないのは異常です」
何とも説明しがたい。
武蔵の説明に、アメリアは首をかしげた。
「十五年前の世界に戻ったということではない、ということですか?」
アメリアが武蔵と雪を見た。
二人とも自信がないため、たぶんと答えた。
「ここに人が来るなんて、すごく久しぶりだな」
そこに第三者の声がした。
三人は声がしたほうを慌てて見た。
廊下の中に小人が浮いていた。
青いシンプルなワンピースを着た女の子だ。
薄い水色の長い髪をなびかせ、ふわふわと浮いている。
「私はケイシー。ここの管理を任されているんだな」
突然の乱入に三人は驚いた。
最初に平静を取り戻したのはアメリアだった。
「ここはどこですか?」
「ここはイズミ様が作られた魔導書の中。そして、第三の封印があるんだな」
ケイシーの説明を聞いて、武蔵と雪は驚いた。
高校の校舎をモチーフに作られたこの空間――
過去の英雄である“イズミ”が作ったということは、同じ高校に十五年前に通っていた生徒の可能性があるからだ。
“イズミ”の情報も欲しいが、第三の封印の状況を確認するのが先だ。
「第三の封印はどこにあるの?」
雪がケイシーに聞いた。
「……忘れちゃいました。すみません!」
そう言い残し、ケイシーは消えた。
三人は手分けして、校舎内を捜索することにした。
今いる一階はアメリア、二階は雪、三階は武蔵と分けた。
「十五年前の校舎だから、L字型だね」
アメリアと別れ、階段に向かっている時、雪が武蔵に話しかけた。
「そうだな、付け足した新校舎部分がないな……あの扉もないってことか」
巻き込まれるきっかけとなった“開かずの扉一号”は新旧の校舎の境目――新校舎側にあった。
“イズミ”はどうやってあの世界に行ったのだろうか。
元の世界に戻るヒントがあれば良いなと武蔵は考えた。
「じゃ、捜索が終わったら、合流しようね」
雪を別れ、武蔵は三階に向かった。
特別教室が並んでいるのは、十五年前も同じだった。
奥から音楽室、音楽準備室、美術室、美術準備室……と順番に入り、中を探した。
最後の部屋――備品室の捜索を終えたが、何もなかった。
武蔵は合流地点である一階の職員室前へ戻った。
「何かあったー?」
戻ると、雪が先に戻っていた。
アメリアはまだいない。
「いや、特に何もなかった」
となると、一階のアメリアが捜索しているところに何かがあったのかもしれない。
雪と武蔵は一階の廊下を歩いた。
しばらく歩いたところで、アメリアを見つけた。
「アメリアさん、どうかしました?」
武蔵は声をかけた。
「いや、ここの扉がどうしても開かなくて……」
そこは何も掲示されていない部屋だった。
「あー!!ここって……」
「雪、何か知っているのか?」
雪は人差し指をさし、叫んだ。
「開かずの扉二号!!」
そこは雪が企画した学校の七不思議のひとつ、開かずの扉二号だった。




