アルーメン
アルーメンは学問の都市と言われるだけあって、王立学校の他にも私学校が乱立していた。
また、特定分野に絞った博物館や図書館なども軒を連ねていた。
そのため、都市の人口構成は若者が多く、武蔵と雪と同年代の人々が行きかっていた。
授業が始まるのか、どこからか鐘の音が聞こえる。
アルーメンは学校が都市となったような場所であった。
「この中から一冊の本を探さないといけないのか……」
図書館に隠されていると日記に書かれていた。だが、図書館だけでも三十以上ある。
日記の内容を確認した際、アメリアが懸念したのがこのことだった。
「でも、三百年前からある図書館なんて、数少ないんじゃない?」
船酔いでまだ若干グロッキーな雪が、投げやりに言った。
「それだ!雪、良いこと言うじゃないか!!」
武蔵は雪を褒めた。
「アメリアさん、三百年前からある図書館はいくつでしょうか?」
「それは一つしかありません。王立図書館です」
アルーメンの中央にあるのが王立学校で、その付属の図書館が王立図書館である。
街の至る所で議論が行われていた。教授らしい人物を中心に学生が集まっていたり、地面に何かを書いていたり様々だった。
人ごみを避け、三人は王立図書館へ向かった。
街の中央部にある学校――王立学校に到着した。
学校は高い塀で囲まれており、入り口は大きな褐色の門扉がたたずんでいた。
「アメリアさん、俺たちここに入るんですよね……?」
想像以上の学校の大きさと立派な門扉に武蔵は及び腰になった。
「女王陛下からの信任の書状がありますので、心配しないでください」
アメリアはさらりと言った。この国において、アメリアの行動はサラ女王がバックについているということだ。
アメリアが有能だということはわかっていたが、ここまで女王の信頼まで得ているということは、相応の地位にいる人ではなかろうか。
自己紹介時にアメリアから王宮で何をしていたのか聞いていない。
確認したほうがいいなと武蔵は考えた。
アメリアは門番の元へ行き、手続きを行なった。
門番が顔色を変え、慌てて敬礼をした。
「さ、行きましょう」
アメリアに続いて、武蔵と雪は門をくぐった。
「アメリアさんって、ここの学校の卒業生だったりする?」
図書館へ向かう途中、雪が話しかけた。
「どうしてそう思いました?」
先頭を歩いていたアメリアは歩調と緩め、雪の隣に移動した。
「こんなただっ広い場所を案内板も見ないで、まっすぐ歩くからだよ」
予想外にも、雪が人物観察をしていた。アメリアは一瞬、目を見張った。
「えぇ、私はここの卒業生です。なので、今日は昔に帰ったような気がして、ちょっと変な気分ですね」
「私も学校って空気が久しぶりだよ」
のどかに話しながら進み、目的の王立図書館へたどり着いた。
王立図書館は三階建て程度の石造りの建物であり、入り口の左右に彫刻が置かれていた。
階段を上がり、入り口の扉を開けた。
入ってすぐの場所にカウンターがあり、司書と思われる数人が座っていた。
アメリアがカウンターへ行き、館内の捜索と閲覧許可を貰った。
「魔導書が置かれている場所へ行きましょう」
アメリアが案内したのは、図書館の二階の奥にある一角だった。
二メートル近い本棚がずらっと立ち並んでいる。びっしりと埋まっている本がすべて魔導書なのだろうか。
想像以上に多い本に、武蔵は絶句した。
「じゃ、ここからは雪様の出番ですねー」
雪が本棚へ近づいた。
「過去の英雄“イズミ”が作成した本っていますかー!?」
静かな館内に雪の声が響いた。
「雪、声がでかい!」
「そういう武蔵さんも声が大きいです……」
武蔵の反射的なツッコミも響いてしまった。
二人の声の大きさに、アメリアが小さい声で注意した。
「武蔵くん、あの本棚の一番上って届く?」
雪が本棚の一つを指差した。
一番上を見たところ、数冊の本が若干前に出ていた。
「その出っ張っている本の後ろから、返事がしたよ」
武蔵は前に出ている本を取り出した。
背伸びして覗いてみると、一冊の本が隠されていた。
腕を伸ばし、本を手に取った。
「これか……?」
表紙は皮でできており、鍵かかかっていた。
武蔵は本を雪に渡した。
「小さい鍵は苦手なんだよなぁ」
ぶつぶつと文句を言いながら、謎の金属棒を取り出し、鍵穴をいじり始めた。
カチッと小さな音を立て、本の鍵が落ちた。
「コレ、無造作に本を開けてしまうと、何かトラップが発動したりしませんか?」
武蔵はアメリアに聞いた。
「魔導書は何かしらの魔術を封じ込めているから、いきなり飛び出すということもあります」
何が飛び出すかわからないのであれば、室内ではなく、もっと広い場所がいいだろう。
「雪、本を持って移動しよう。広い場所に……」
武蔵が声をかけるより早く、雪が本を開いていた。
「武蔵くん、何か言った?」
その瞬間、本からまばゆい光が発せられた。
光が収まったとき、本棚の前から三人の姿が消えていた。




