第二の封印
竜が眠りについたところで、三人は手分けして坑道を探した。
三人は壁に手を添えて歩いた。
武蔵が一番奥に近い場所に差し掛かったところ、人が一人通れる大きさの穴が開いているのを見つけた。
「入り口があったぞ」
坑道は狭く、縦に並んで歩いた。しばらくすると、二手に分かれた少し広くなった場所に出た。
「来た道に目印を残しましょう」
アメリアはそう言い、腰に下げた剣で壁に傷をつけた。
二手に分かれた一方は、塞がったほうにつながっている。そしてもう一方が奥に続く道。
三人は下り気味の道へと進んだ。
坑道内は予想以上に迷路だった。
しばらく歩くと、また分かれ道があり、プレートがかかっていた。
「昔の人が迷わないように、分岐点に名前を付けた跡ですね」
「でも、どっちが奥に進む道なんだ?」
この先にも分岐点がある可能性がある。地図がないため、どのルートが正しいのかわからない。
坑道内で彷徨うはめになってしまうことを避けたい。
「このプレートに聞けばわかるかな?」
雪がプレートに話しかけた。
「どっちが奥に続く道?え?もっと大きな声で話して」
やはり、独り言を言っているようだ。だが、プレートと会話できているところを見ると、ギフトが発動できるようになったのだろう。
武蔵は悔しかった。自分のギフトがまだうまく使いこなせていないのに、雪が使いこなし始めたことに。
実は武蔵はギフト“早く動く”が発動できていることに気付いていなかった。発動がいつも、何かから逃げている時だったためだ。
「たぶんこっちだって」
雪が指示した道へ、三人は歩んだ。
いくつかの分岐点を過ぎ、歩いていたところ、前方がぼんやりと明るくなっているのに気が付いた。
「坑道内で明かり??」
雪が首をかしげた。三人の手元にあるランプ以外の光源はないはずだ。二つの入り口から人が入らない限りは。
三人は警戒し、恐る恐る進んだ。
少し広くなった小部屋にぼんやりを光る球体があった。
東の商業都市“テルフスト”の地下神殿であったものと同じく、台座の上にそれはあった。
台座や球体は同じだが、違う点があった。
それは光の強さだった。雪が触った後のテルフストの球体のほうが何倍も光り輝いていた。
ここにある球体は弱々しく光っているのだ。
「雪、今度はあの球体を持ち上げるなよ」
「わかってるって。触るだけだから」
そう言って、雪は球体に近寄り、触った。
瞬間、光が小さな部屋を包み込んだ。
テルフスト同様に、球体は力強く光始めた。
だが、なんでここの球体は微弱ながらも光っていたのだろうか。
テルフストのように全く輝かない石となっていなかったのは、何か違いがあるのだろうか。
雪は疑問に思ったが、判断するにも材料がないため、考えるのをやめた。
「ほい!任務完了」
雪が敬礼をした。武蔵も笑いながら、敬礼で返し、ご苦労さんと返した。
アメリアが台座に近づき、掘られているレリーフを確認し始めた。
その間、武蔵は部屋の壁を見ていた。
そこには岩盤を掘って、彫刻が施されていた。
何かの一場面だろうか。太陽のようなものに向かって、男が歩いていた。
その隣の壁には上下左右に丸があり、中心に何とも表現しづらいものが居た。
この世界独自の動物か何かだろうか。
「武蔵さん、ここの台座にも読めない文字が書かれているので、解読してくれませんか」
隣の壁に行こうとしたところ、アメリアから呼ばれた。
台座に近寄り、アメリアが指差す場所を見た。
それは前回同様、日本語で書かれた文章だった。
“この文章を読める者へ
もし、竜族のマインラートに出会ったら、彼に伝えて欲しい。
私のことは待たず、仲間を探す旅に出て欲しいと……”
球体に関することではなく、願いが書かれていた。
「マインラートさんって、あの竜のことじゃん」
雪が武蔵の横から台座の文章を覗き込んだ。
帰りは全力で逃げる予定だったが、伝言ができてしまった。
「全力で逃げながら、この文章を叫べばいいんだね」
雪があっけらかんと言い放った。
帰り道は、アメリアが印をつけた道をたどるだけだったため、あっさりと進んだ。
そして、竜の巣へ続く坑道に差し掛かったところで、一旦止まった。
「確認しよう。この道を出たら、竜が起きている可能性がある。そっと竜の巣に出た、まだ寝ていたら静かに退却。起きていたら全力で走り去るでいいか?」
雪が手を挙げた。
「はい、武蔵隊長!あの文章の件がありますです。退却時、それがしが殿を努め、叫びます」
「では私が先頭を行きます。お二人は私が走ったら、後に続いてください」
雪とアメリアの提案を受け入れ、退却作戦は決まった。




