ガランゴジュ
工業の都市“ガランゴジュ”へは、東の都市から歩いて四日かかる。
途中、三つの宿場町を立ち寄ることになった。
二つ目の宿場町に泊まった際、ちょうど吟遊詩人が居酒屋で唄っていると噂を聞いた。
英雄談が聞けるかもしれないため、三人は居酒屋へ行った。
そこには長いローブのような服を着た男が、手にした竪琴を奏でていた。
「次はこの地方で起きた英雄の物語を一興――」
“封印された暗き坑道の奥深く、英雄が光を作られた
光あるとき平和が訪れ、光失われしとき世界は混沌とならん”
詩人が唄い終わった。
光というのは、封印の球体のことだろうか。
次の都市が工業で発展しているから、近くに採鉱所もあるだろう。
仮に光が封印だとしたら、採鉱所の坑道奥深くにあるということだ。
「また次も暗い場所みたいですね」
隣にいるアメリアに武蔵が声をかけた。アメリアも唄の内容について、いろいろと考えていたようだ。
「えぇ、購入しらランプが、また役に立ちそうです。部屋に戻ったら、日記の内容について教えてもらえるかしら」
確かに、あと二日でガランゴジュに着く予定だから、日記の内容について確認した方がよい。
静かにしていた雪が二人に声をかけた。
「お酒って、何歳から飲んでいいのかな?」
ここは居酒屋。周りは酔っぱらって陽気な人ばかりで、とても楽しそうだ。雪がその仲間に加わりたいらしい。
「この国では二十歳から飲めますが、雪さんのところは違うのですか?」
同じだった。異世界補正でお酒が飲める年齢が下がることを祈っていた雪は、がっかりした。
しょぼくれた雪を引っ張り、三人は宿屋に戻った。
「ガランゴジュに関する記述は三日分です」
武蔵はアメリアに三日分の日記の内容を話した。
三月四日、晴れ ガランゴジュに到着早々、体育会系の野郎ばかりが集まった。剣をつるはしに変えて仲間になれと言われた。むさい。
三月五日、晴れ 採鉱所に竜の巣につながり、封鎖された坑道があった。第二の封印はそこで行った。アキラがいない。
三月六日、晴れ アキラがつるはしを持っていた。昨日行った坑道が潰されてしまった。
アキラが坑道を潰したから、“封印された坑道”と唄われたのか。入り口が塞がっていると思われるが、入れるかはその場に行ってから考えよう。
日記には“竜の巣”といういかにも物騒なキーワードが出てきた。
この世界には竜がいるのだろうか。
「アメリアさん、この世界には竜はいるの?」
雪がアメリアに聞いた。
「昔はいたと伝わっています。今は鎧や薬を作るため、乱獲されて絶滅した種族です」
良かった。竜は今はいない。少し見てみたかったという気持ちが武蔵と雪にはあったが、今回はいないほうが良い。
「では、潰された坑道の状況を見て、入れそうになければ竜の巣を探し、そこから入れば第二の封印に辿り着けそうだな」
竜の巣と坑道がつながっているから、何とかいけそうだが、前回同様に“アキラ”を恨んでしまう。
ガランゴジュではまず、入り口を探すこととなると三人は位置づけた。
それから二日後――
南の工業都市“ガランゴジュ”に三人は到着した。
街は谷間となっている場所で栄えていた。
露出した岩肌を掘り、そこに居を構えている家もあった。
あちこちで製鉄が行われ、煙が立ち上っている。金属を加工する音が谷間に響いていた。
三人は拠点とする宿屋を見つけ、荷物を置き、調査に出た。
まずは封印された坑道を探さなければならない。
情報収集をするため、繁華街へ出た。
道の両脇に武器や防具といった戦いに関するものから、ワイヤーやネジ、ナットといった部品まで並んでおり、物があふれていた。
定番は居酒屋だが、まだ日が高いため、店が開いていない。
ぶらぶらと歩いていたら、雪がある店のショーウィンドウで立ち止っていた。
「雪、何かあったのか?」
「この石、すごく綺麗。宝石かな?」
飾られていたのは、色つきの水晶のような石だった。
次の封印が坑道にあるということは、石を取り扱っている店主が何かを知っているかもしれない。
「アメリアさん、この店の店主にちょっと聞いてみましょう」
三人は店に入った。
店内はさまざまな石が所せましと並んでいた。
「らしゃい。ゆっくり見ていきな」
店の奥から声が聞こえた。
奥には顎髭を蓄えた、筋肉隆々な旦那がいた。
「マッチョ……」
雪がつぶやいた。
「すみません、聞きたいことがあるのですが……」
武蔵が恐る恐る聞いた。
「ん?なんだ、観光客か?迷子になったんなら、屯所に詰めている奴らに聞けばわかるぞ」
この街には屯所があるようだ。前の街のような騒ぎを起こしたら、警察官見たいなのが出てくるということか。
「いえ、封印された坑道について、知っている人を探しているのですが」
マッチョの目の色が変わった。
「何の用事があって、探している?」
低くなった声に武蔵は慄いた。だが、このマッチョが何か知っている。勇気を出し、武蔵は理由を言った。
「坑道の奥にある光の状況を確認するためです。それ以外の用事はありません」
目をじっと見つめられた。マッチョの眼力に思わずそらしたくなったが、そらしたらやましいことがあると思われる。
武蔵が我慢した。冷や汗が頬を伝う。
「よし、嘘は言っていないな。坑道はこの街の西側に行ったところにある。一つだけ鉄格子で囲まれているから、すぐにわかるぞ」
マッチョがニカッと笑い、言った。
武蔵はマッチョと心が通じた。
三人は店を出て、街の西を目指した。




