地下神殿
階段を二階分ほど降り、平坦な通路に出た。暗さに加え、地下の冷たい空気が周囲に満ちていた。湿気もあり、時折、水滴が落ちる音がする。
アメリアを先頭に武蔵、雪と続いて歩いた。
それぞれが手にしたランプを頼りに、どこまで続くかわからない通路を歩いた。
「アメリアさん、日記に何かを仕掛けたと記載がありました。気を付けてください」
日記には“アキラ”が何かを仕掛けたとあった。仕掛けがいくつあるかはわからないが、一つは最低でもある。一日で仕掛けたのであれば、そんなに大がかりなものではないだろう。
三人は周囲を警戒しながら歩いた。
突然、アメリアが立ち止った。
「これ、落とし穴よね……?」
アメリアがランプをかざし、通路を広範囲に照らした。石畳の通路の中央部分に藁が置かれている。年月が経過したため、所々隙間も見える。
「えいっ」
雪が落ちていた石を拾い、藁の部分に投げた。
石はいくつかの藁とともに地面の底に落ちて行った。石が底に当たった音がしたのは、しばらくしてからだった。予想以上に深い穴のようだ。
これが“アキラ”が仕掛けたものだとしたら、深い穴を掘るため、一日がかりで仕込んだのだろうか。
三人は中央の穴を避け、壁際に沿って歩いた。
この先に仕掛けはまだあるのだろうか。
「仕掛けがまだあるかもしれないので、慎重に行きましょう」
先頭を歩くアメリアに武蔵が声をかけた。
「武蔵くん。何かふんじゃった……」
後ろから雪の声が聞こえた。
問題はその内容だった。何かを踏んだ――仕掛けを作動するトリガーに違いない。
何が起きるのか。心臓が早打ちする。
天井から、パラパラと小さな石が落ちてきた。
「二人とも、走って!!!」
アメリアさんが走り出した。
歩いてきた通路の天井部分が落下し始めたのだ。
武蔵は叫ぶのをこらえ、走り出した。後ろから雪も走っている。
後ろを振り返らずに走り続けた。通路が途切れ、何かの部屋が前方に見えた。
「あっ!!」
足がもつれた雪が転んだ。その後ろから天井が落下し続けている。
武蔵は慌てて戻り、雪の腕を引いて立たせた。
「大丈夫か?走るぞ!」
雪の腕を引いて、再度走り始めた。前方の部屋の入り口にアメリアが立っていた。
「天井の構造が違うから、ここまでくれば大丈夫よ!もう少し!!早く!!!」
転がり込むように、部屋に駆け込んだ。すぐ真後ろで天井が落下した音が聞こえた。何とか間に合ったのだ。
ぜぇぜぇと息を切らせ、肩で息をしていた。
「し、しばらく、歩けない……」
雪がそう漏らした。武蔵も同意見だった。息切れを起こしていないのは、アメリアだけだった。
「この部屋で、少し休みましょうか」
アメリアの提案に、武蔵と雪が賛同した。武蔵は転がり込んだ時の姿勢――よつんばのまま、息を整えようと深呼吸をした。
部屋は六畳ほどの大きさで、四方を壁に囲まれ、何もなかった。
雪は近くの壁に寄り掛かった。
「へっ?」
雪が寄り掛かった壁がいきなり倒れた。ガラガラと音をたて、崩れる。行き止まりだと思っていた部屋に、隠された通路があったのだ。寄り掛かっていた雪はそのままのけぞるように倒れた。
「まだ奥があったのね」
アメリアが崩れた壁の奥に、ランプの灯を照らした。奥の通路はこれまでの石畳や石の壁とは違った。削られた岩肌がむき出しとなっており、しみだした地下水が壁を伝っていた。
ようやく息が整った武蔵と雪が立ち上がり、アメリアに続いて奥の通路を歩き始めた。
しばらく歩くと、円形の部屋に出た。部屋の中央には台があり、その上に丸い石が置かれていた。
ここが最奥の部屋なのだろうか。日記には“第一の封印をした”とあった。あの丸い石が封印なのだろうか。さまざまな考えが浮かんだ。
アメリアが台を調べていた。武蔵は部屋の周囲を見て、隠し通路がないか探った。
ここで雪から目を離してはいけなかった。
「この石、つるっつるだね」
雪が台の上にあった石を撫でていた。
「雪!慎重に行動しろとお願いしただろう!!」
それまで普通の石だったそれは、突如、青白く光りだした。光は部屋中にあふれた。




