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教会

 翌朝、朝食を済ませた三人は、街の繁華街にある道具屋に寄った。


「こんにちわ。ランプを三つください」


 道具屋に並んでいる商品を見る限り、文明の程度は中世ヨーロッパと同等のようだ。

 アメリアが買い物をしている間、武蔵と雪は柱を見ていた。

 一見、わかりにくいが、柱の木目に沿って傷がいくつかつけられていた。それもかなり深い傷だ。これが日記に書かれていた傷なのだろうか。

 初めて日記に書かれていたことが現物となってそこにあった。やはり、この日記は創作ではなく実際に“イズミ”が書いたもののようだ。


 道具屋を出て、教会に向かった。


 教会はかなりの大きさだった。様式はわからないが、下部が広がり、どっしりとした石造りの教会だ。入り口の扉は高さ三メートルはあるだろう。細かい彫刻が施された扉は、何かの物語の一節を表現しているようだ。

 扉を開け、中に入った。

 しんっと静まり返った内部は、ステンドグラスからの明かりで薄暗かった。中央通路の左右に長椅子が並んでいた。

 アメリアを先頭に中央通路を進んでいった。

 奥にある祭壇の前に男がいた。この教会の神官のようだ。祭壇には剣と鏡が掲げられ、白い花で飾られていた。


「突然の訪問で申し訳ございません。いくつか聞きたいことがあるのですが……」


 アメリアは懐から丸い銀飾りを出した。それを見た神官は驚き、慌てた。


「このような場所に……どういったご用件でしょうか。できる限り、ご協力いたしますので……」


 その様子を見ていた雪は、武蔵にこっそりと話しかけた。


「ねぇ、アメリアさんって、ものすごく偉い人なのかな?」


 武蔵も雪に小声で話しかけた。


「わからない……王宮でなんでもやっていたって言っていたけど、服装は軍人だよな。偉い人ってなんでもやるのか?」


 二人でこそこそとしている間に、アメリアと神官の話がまとまった。


「教会内の調査許可を得ました。……?二人ともどうかしましたか?」


 思わず、アメリアの顔を凝視した二人に、アメリアは不審げに聞いた。


「アメリアさんって偉い人ですか?」


「直球すぎるだろ!もう少しやんわりとオブラートに包んで……」


 そんな二人のやり取りを見たアメリアは、ゆっくりと微笑んだ。


「そこそこですわ」


 これ以上の捜索は不要と言わんばかりの氷の微笑に、二人は沈黙した。




「見つからなーい!!」


 調査を開始してから二時間。一番飽きやすい雪が叫んだ。


「あと探していないのは中央の祭壇だけか……」


 教会内には四方に小部屋があり、それぞれ小さな祭壇が備わっていた。何かの業績を称える絵や彫刻が置かれていた。

 最後の小部屋を調べ終わった武蔵がつぶやいた。

 教会の床や半地下になっている保管室など調べたが、地下神殿につながるような入り口はなかった。


「一応、この教会で一番神聖な場所なので、そっと調査しましょう」


 アメリアが注意した。この教会で最も尊い祈りの祭壇なのだから、調査にも力が入る。備えられている器や花に気を付けて、周囲を探った。


「この鏡、何も映らないよ」


 上から声がした。思わず顔を上げると、祭壇の上に登って、掲げられた鏡を持ち上げている雪が居た。


「そっとと言っているそばから、適当に触るな!雪!!」


 武蔵は思わず怒鳴りツッコミをしてしまった。その間も雪は鏡をいろいろな角度から見たりしていた。

 ある角度でステンドグラスの光が鏡に当たった。何か絵のようなものが鏡に浮きあがった。


「剣が祭壇に刺さっている絵……?」


 雪がそう言い、鏡の横に置かれていた剣を取り、祭壇の中央に刺した。

 ガコッという音がし、何かが外れた。

 少しの揺れがあり、祭壇の後ろ部分が外れた。


「祭壇の後ろに階段が……」


 外れた部分を覗き込むと、地下へ続く階段があった。二メートル先は真っ暗となっているため、どのくらい深いわからない。


「よっと、ここが地下神殿への入り口だね」


 雪が祭壇の上から降りてきた。


「お前、もうちょっと慎重に行動してくれ……してください」


 涙目に、武蔵が雪にお願いした。雪の機転(?)で入り口は見つけられたが、もし、祭壇を壊したら神官に見つかる前に逃げなくてはならない。


「ま、結果良しとして、地下に行きましょう」


 アメリアがランプに火を灯し、地下の入り口に立っていた。

 武蔵と雪もアメリアに続き、ランプに火を灯して続いた。



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