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宿場

 宿場町――バラティアで宿を探したが、大部屋しか空いていなかった。そのため、三人同室となってしまい、武蔵は夜、寝付けなかった。


「……武蔵くん、起きてる?」


 か細い声で雪が話しかけてきた。ベッドは雪を中央にし、アメリア、雪、武蔵の順で寝ていた。雪は武蔵のほうを向いていた。


「起きている……」


「なんか、昔を思い出すね。こうやって一緒に寝るのって久しぶり。私も寝れないよ」


 くすくすと笑う雪に対し、違う意味で寝れない武蔵は何とも言えない状況だった。

 この世界に来て、雪のいる元の世界に戻りたいと思った。

 雪もこの世界に来て、雪と一緒に元の世界に戻りたいと思った。

 繰り返していた日常が、こんなにも恋しい。

 武蔵の目標は一筋の光のように定まった。


「雪、必ず一緒に元の世界に戻ろう。そして、いつもの日常に戻ろう」


 真面目な武蔵の言葉に、雪は笑うのをやめた。そのかわり、寝返りをうち、武蔵に背を向けて小さな声で言った。


「うん、そんなに期待しないでいるから。失敗してもいいから。武蔵くんと一緒なら、大丈夫だよ」




 その後、四日間の道中は小さな魔獣のみで問題なく、東の商業都市“テルフスト”に到着した。

 街は中央の教会を取り囲むようにできていた。

 日没が間近に迫っていたため、三人は急いで宿を探した。


 三軒目でやっと空きを見つけた。街の中心部から少し離れたところだったが、徒歩圏内だった。


「お客さんたち、ちょうどキャンセルが出たからよかったよ。夕食は一階の食堂で食べれるから、荷物置いたらおいで」


 恰幅のよい宿屋のオヤジが言った。この国の四大都市の一つ(アメリア曰く)なだけある。いつも人でにぎわっていて、宿をとるのが難しいようだ。

 二階の部屋に入り、荷物を置いた。部屋を出たところ、ちょうど真向いの部屋から出てきたアメリアに会った。アメリアは武蔵に聞いた。


「過去の英雄の日記には、この街の何が書かれているのですか?」


 日記は武蔵と雪は読んでいるが、アメリアには“テルフスト”に行くとしか話していなかった。気が付いた武蔵は申し訳なさそうに言った。


「夕食のときに詳細を話します。話すのが遅れてすみません」


 アメリアの後ろから雪も出てきたため、三人は階段を下り、食堂へ向かった。




 食堂の席に着き、武蔵は持ってきた日記を開いた。


「日記には“二月二十六日、曇り。テルフストに到着。教会より地下神殿へ行き、最奥にて第一の封印を行なった。道具屋が値引きしてくれない。こっそりアキラが建物の柱の一つに傷をつけた。大きな地震があれば倒壊するかもしれない”とある。明日、教会に行って、地下に降りる場所がないか探してみようと思う」


 どうやら、“アキラ”という人物はいたずら好きのようだ。毎回何か行っている。だが、本題はそこではない。


「教会で地下に降りれる場所があれば、降りて調査も行ないましょう。あと、地下なので教会に行く前に道具屋に寄り、ランプを購入しましょう」


 アメリアの提案に、武蔵は頷いた。


「第一の封印って何かな?」


 運ばれてきた食事を食べながら、雪が言った。第一ということは第二、第三の封印があるということだ。


「わからない。とにかく行ってみないと何とも言えないな」


 むぅと難しく考える雪に対し、武蔵は簡単に言った。日記に書かれていることは最小限の事象しかないため、行かなければわからない。


「次の日のところに、続きがかいてなかったっけ?」


 雪が食べ終わったお皿を従業員に渡しながら言った。


「次の日?“二月二十七日、雨。アキラが神殿に仕掛けをした。容易に立ち入られても困るから、そのままにした”……英雄、止めてくれ……神殿には罠が仕掛けられているということか……」


 雪には街に残ってほしい。思わず武蔵は思ってしまった。“厄病神”様憑きの雪が地下神殿に入ったら、仕掛けられた罠を完全網羅する。


「武蔵くん、今、私を置いて行こうかと思ったでしょー」


 雪に睨まれた。武蔵は空笑いをし、その場をごまかすため、アメリアに話を振った。


「地下神殿って、どのくらいの広さなんでしょうか」


 水を飲んでいたアメリアは首をかしげながら言った。


「地下神殿の大きさがどのくらいかわからないけど、街の下、全体に広がっているかもしれませんね」


 アメリアがそういった。不吉なフラグだ。街の下、全体に広がっていたら、最奥の第一の封印までどのくらいかかるだろうか。 



 食事を終え、各自の部屋に戻った。

 明日は道具屋と教会に向かう。道具屋の柱に傷があれば、日記の検証にもなるだろうと考えながら、武蔵は眠りについた。



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