出会ったクズとクズ
飛び込みから一日掛けで復興進む被災地入りをした。
大石はそれなりに物資が運ばれていく被災地を見て呟いた。
「俺なら……」
合流ポイントに着き、川本太郎を待つ。
その間でスタッフに伝達されたのは……
「なるべく壊れた家屋を撮って来い」
予想通りだった、数人が散って復興の様子が映らないように壊れた部分だけを撮っていく。
なるべく元気な人や他のボランティアも避けて「非常事態ですよ」とアピール出来る一枚を求めて。
ある程度撮れた所で集合がかかる。
「川本太郎先生入られます!」
そう言った取りまとめの人間が拍手をする、合わせるように皆拍手していく。
まるで偉人を迎えるように、被災地の端っこで。
「はい、ご苦労様です」
ミニバンから降りてきたのは本物の川本太郎だった。
纏うオーラは善人だが、大石にはハッキリ分かる。
「クズだ」
目の奥が物語る、ここの状況がどうかを見に来たのでは無い。ここでパフォーマンス用の一枚を撮りに来たと。
「え〜現場はどこかな?」
「あちら抑えてます」
マネージャーか秘書かスーツの男性に誘われて、ある家の前に立つ。
既にハシゴが固定されて屋根に登れるようにセットされた家だ。
「はいはい、じゃ頼むよ〜」
「あ、先生コレを」
ハシゴを登ろうとした川本を秘書が止め、ヘルメットを渡す。
「あははごめんごめん、不自然だもんね」
「スタッフの皆さん撮影お願いします」
川本はハシゴを登り屋根に手を掛け表情を険しく作る。大石はあまりのクズっぷりにニヤけてしまう。
今自分達がやっている事は撮影、言わば「被災地への冒涜」みたいなものだ。
大石は久しぶりの快感に笑みが止まらない。
ある程度撮ったので終了となる。
「はい、先生OKです」
「はぁ〜崩れ掛けの家なんか触りたく無いね」
「お疲れ様です、次は簡易避難所でカレー試食です」
「あぁ、もう作ってくれてんの?」
「はい、お昼準備出来てます」
場所を移動して地域住民が集まる避難所……と言っても人はあまり居ない。
今ここに残っているのは著しく家が壊れた者のみで、大体は家に帰れている。
残る住人達はなんだなんだと見にくる、どうやら知らされて無いようだ。
すかさず川本が歩み寄り手を握っていく。
「大変でしたね!僕が政府に働きかけますからね!」
勢いよく何の事かわからないまま「はぁ」と住人達は勢いに誤魔化されられる。
「すいませーん、ちょっとカメラ入ります〜個人情報あるんで住人さん達中入ってください〜」
スタッフが人払いをする。
「あ、君ごめんだけどスタッフジャンパー脱いで……そう私服で先生の周りに行ってくれる?」
大石と数人が指定され川本の側に行く。
(避難者役って事か)
本当の避難者は避難所に入れておき、川本太郎が来たと喜ばれてる画を撮りたいのだろう。
戸惑い顔の本物より、用意された偽物の方が映える。
大石は良い機会だと川本に近付いて目を見た。
やはり「濁ってる」
外面は本当に優しく強く良い人だが、大石は確信的なシンパシーを感じる。
川本がふと大石を見てくる、目が合いお互い品定めするような一瞬。
川本はフッと笑って「君おんなじだね?」と言った。
この機を逃せないと大石は「側に居させて下さい」と返した。
避難所でカレーを作る振りをした写真を撮り、それを食べている画も撮って撮影は終了した。
「はーい皆お疲れ様〜気を付けて帰ってよ〜」
川本は笑顔を振りまいてスタッフに挨拶していく、スタッフはそこらの日雇いじゃなく信者だ。
感激で涙を流す者さえ居る。
大石は僅か一時間余りを振り返る。
被災地にボランティアで来た。
川本太郎の写真を撮った。
以上である。
さっきの川本の側に居た秘書が近付いてくる。
「君、先生が特別にお話してくれるそうだから来なさい」
「お、ありがとうございます。ここに来た甲斐ありました」
川本が待つミニバンに誘われる。
「やあ、いらっしゃい」
「どうも、大石明夫と言います」
「いやぁなかなか居ないからね〜君相当なクズでしょ?」
「そうですよ、あなたに負けないくらい」
「あはは!久しぶりに本音で話せそうな人が居て楽しいな、ちょっと聞かせてよ」
「そうですね——」
大石は生まれてから今までを包み隠さず話した。
人を煽る快感、グレーゾーンで動く背徳感、職場や学校での行動、先日逮捕され出てきたばかりだと。
「——って感じでここに来ました」
「ふふ、不思議なもんでクズにはクズしか集まらないんだよね。僕の側近もなかなかのクズなんだけど君は群を抜いている」
普通の人には褒め言葉ではないが、この界隈は違う。
クズである自覚が無いと壊れるのだ。
「川本先生聞いても良いですか?」
「どうぞ」
「金が原動力ですか?」
「ふふ、何がとは聞かないんだね。その通りだよ、金稼ぎさ」
「政治家の真似をよくしようと思いましたね」
「僕も君と同じこれしかないって思ったからね、君はこれしかないってここに来たんでしょ?」
「そうです、失うもんが無いですから」
「だよね〜どう?ウチから次出てみない?」
出てみない、これは選挙にと言う事だろう。
ならば答えは一つしかない。
「お断りですね」
「やっぱそう言うよね」
大石はそこらの頭の悪いクズとは違う自負があり、客観的に見る事も出来た。
単なる無職、障害者でもないパイプも無い者が出るのは自殺行為だ。
何より顔を晒すのがクズには高い壁である、どうしてもネットに残り今後が生きにくい事になる。
だからこそ川本太郎が凄いと感じた。
中途半端なクズ行動をすれば信者は離れる、突き抜けたクズの核があるから善人行動に深みが増して騙せる者が出る。
「いや〜支援者も増えたし議会に車椅子の弾除け出来たから、やっと楽になってきたんだよね〜」
大石は言葉通りに受け止めなかった。
支援者は信者の意味だし、車椅子の障害者は普通の者を躊躇わせる盾になる。
「正真正銘のクズで安心しました」
「大石君もなかなか、金困ってるんでしょ?秘書やりなよ」
「願ってもない、ぜひお願いします」
「よーし、じゃあ一旦東京帰ろうか?今家は無いんでしょ?」
「はい」
「なら問題無いね帰ろう帰ろう」
こうして、大石は川本太郎の秘書になった。




