クズの思考
大石は秘書として川本と共に動くようになった。
衣食住も持ち直し人生で一番楽しい時だった。
信者は川本太郎が赤と言えば、それが白でも青でも塗り直して赤と叫ぶ。
本質、正義、正論等関係ない世界であった。
今の社会を作り自分を苦しめた政府相手にも直接文句が言える、相手の答えなんか関係無い。
ただただ、「今困ってる人が居るんだ、何故助けない?」と詰めれば良い。こちらの「要望」では無い、ただの「パフォーマンス」なのだから政府は無視すれば良い。
その姿勢をネタにまた合法的に詰めれる、川本は立ち回りが本当に上手かった。
大石と川本が直接出会った時の被災地の写真はSNS上で大炎上となっている、本当の今の姿を知る者や大多数の「普通」とされる感性ならばパフォーマンスだと明らかに分かる。なのにはみ出し者と信者は被災地の救世主と崇め、勝手に大多数と争い始める。
こんなに面白い余興があるか?と毎日がニヤけてしまう大石だった。
「今度サーフィン行って来るね〜」
あらかたSNS用の仕込みが済んで次の事を起こすまで時間があり川本は旅行に出た、国会には「被災地が苦しんでるのに議論なんかしてられない」とメディアでもそう言い、今の与党をたっぷり批判した上での旅行。
もちろん内密だが、清々しい二枚舌の使い方に惚れ惚れしてしまう。
大石は秘書として配属されてるが実際何かの契約をした訳でも無い、ただ口約束で書面も何も無い。
どうやら何かの登録はされたようで交付金が増えたと川本は喜んでくれた。
大石は楽しむだけで金も入って来る、しかもこれまで搾り取られてた税金からだ。人生最高のピークと言って良いだろう。
川本太郎に会えた事を幸せに思っていた。
とにかく国がやる事にケチをつけるのが基本、その中で川本太郎と言う役割は前線に立ち批判する芝居をするパフォーマンスでクズ予備軍を集める、それだけで良かった。
知識は要らない、敵とした者の足を引っ張り踊れば良いだけだ。それで国から税金を掠め取れるしカンパも集まる。
クズの集まりでも特定の分野に強い者も来る、動画作成やイベンター等々。更には芸能界や著名人も網に掛かる、そう言った者達の力も得て政党は力を増しに増していった。
潮目が変わったのは与党の長が出来損ないのクズになってからだった。
「普通なら」野党と呼ばれる自分達は喜ぶ事態だった。
テレビで現在の与党の長が変わると聞いて川本と見ていた、大石と川本の意見は一致する。
「コイツは頭が悪いタイプのクズ、しかも自分では何もしないクズ中のクズ」
二人してそう評価した、クズと言っても利用価値のある者や特定分野に力を発揮する者とそれらは迎える事が出来る。
しかし、生理的に受け付けないクズも居る。それが散々利用してきた与党のトップになり総理となる。
大石は焦りを感じた、これまではココを突けば嫌がるアソコを叩けば怒ると予想し易かった。
しかし、次の相手は何を考えてるかわからない真性のポンコツクズだと見たからだ。
それは川本も同じ意見であった。
「一時的にこっちが勢い付くが期待値高めすぎるとよくないな、生かさず殺せず程々に強いぐらいで停滞してくれなきゃシノギが減っちゃうし、信者が変な責任感押し付けてくるよなぁ……」
「全く同感です……まあとりあえず形式だけの祝辞贈ります?」
「いや、今回は要らないでしょ。どうせ総理コイツならすぐ降ろされるし、電報代が勿体無いよ」
「わかりました、しかし意外でしたね」
大石は総裁選のハイライトに映るさっき決まったポンコツクズの横に居る者を見る。
「こっちの方だと思いましたが」
「うん、アイツは……気付いてるよね?」
「はい、俺達と明らかに違う……頭のキレる善人ってとこですな」
「ああ、正直アイツだとまた違ってやりにくかったけど……そろそろ潮時かなぁ〜」
川本は潮時と口にして通帳や印鑑、金や土地の証書等を整理し出した。
「ギリギリまで稼ぎはするけど、大石君もトンズラできるように整理はしときなよ?」
「そうですね……とりあえず川本さんが逃げれたの確認したら元秘書として川本ネタ売りに週刊誌行きます」
「あはは!良いねぇ!取り分ちょっと頂戴よ〜」




