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詐欺師に惹かれた愚か者  作者: かずや


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7/8

弾かれたはみ出し者


 大石に想定外の事が起きた。

 人事からの緊急面談が入った。

 今回も前回と同じようにあしらうつもりであったが、人事室に入った時目を疑う光景が広がっていた。

 妙な動きをする者が人事部長と共に居る。

「座りたまえ大石君」

 社内でも浮いた厄介者として歓迎される空気では無い。少なくとも嫌われているだろう。

「今回、障害者の方を雇い入れる事になった。部署は板金、君が担当するように」

 あまりに突然で顔を顰める。

「大石君、その顔は辞めてくれないかな?不満があるなら聞こう」

 大石は何も言えなかった、さすがに本人を目の前に「障害者の面倒なんか見れない」とは言えない。

 だから同席なのだろう。

「……何もないようなら週明けから一緒にやってもらう、会社決定事項だ良いね?」

「……せめて、給与を上げてくれないですか?業務量が増えるんですよ?」

「何を言うのかね?作業量は変わらないし君は同僚達の半分も種類持たないよね?これは過去の従業員作業表のまとめだ。君だけ生産種類と量は十年以上一定推移のままだ、会社としてはこのデータは見過ごせない」

 人事部長はデータを積み上げてきた、おそらく前回小馬鹿にした時から準備したのだろう。

 そして、障害者を当てて……出方を伺っている。

 

 (コイツ……辞めさせる気だな)

 人事部長を睨みつけた、表情を変えず淡々としたままなのが気に食わない。

 色々と表に出すには便利な障害者を自分に当てられるとは思わなかった。

 大石の決断は早かった。


「無理です、辞めます」


 ——大石は無職になり住み込み先も無くした。

 幸い長年働いた分で僅かながら蓄えはあったが、そう長くは持たない。

 会社側退職の準備も早かった、秘密裏に自分の後釜も用意していたようで今回完全に負けであった。

 イライラはピークに達していた。

 大石は常に人を煽れるラインを見極め、法にかからないグレーゾーンで居たが失敗を犯したのだ。

 しかし、イライラの矛先は自分では無い。

 何故なら「自分は悪く無い」のだから。

 悪いのは人事部長、あの場の障害者、会社、社会……

 自分を取り巻いた全てが悪いとしか思っていなかった。

 何一つとして「大石明夫」は悪く無い。

 ただそれだけしか思っていない、はみ出し者とは認識している。ならばはみ出し者のまま金を得る方法を考えねばならない。

 だが、問題があった。

 人に頼った事の無い自分が人に頭を下げるのは許される事ではない、そもそも人のツテもない。

 しかし、現状既に衣食住がままならない。

 物を買う事や店を利用するぐらいなら出来る、後は家だが住民票の取り方もよくわからないしマイナンバーは危険だとネットやSNSで見たから作ってない。

 自分の事だが何をどうすればいいのか途方に暮れた。

 イライラが募る、どうして自分がこんな目に遭わなければいけない?自分は何もしていない、自分程の人間がこんな事になってはいけないのだ。


「全部社会のせいだ」


 大石はボソリと呟きふらつきながら歩き出した。


 ——三ヶ月後

 大石は拘置所から出てきた。


 罪を犯した。

 無銭飲食だった。

 ネットカフェを渡り歩いて仕事もせず、金銭が底をついた時に行った。

 頼むだけ頼み、他の客に紛れて店を後にした。

 店の被害届、防犯カメラの映像、そして日を置いて二店舗目で捕まった。


 反省は微塵もしていない、だって悪いのは社会だから。

 事実のみ認めて拘留されていたが、謝罪は一度もしていない。

 取られる物もないし金もない。

 スマホだけはWi-Fiが繋がるスポットで使える、情報だけは得ていた。

 拘留されていた間に世界は動いたようだ、まだ川本太郎は勢力を伸ばしそうな情勢だ。

「……人に会いに行くか」

 大石は歩き出した……


 そこは街中で見つかった、川本太郎のポスターがデカデカと貼られた選挙事務所だろうか。

 なんだって良い、繋がりさえすれば。

 大石は事務所のドアを叩いた。


 中には事務員が二人程、大石を見てポカンとしている。その内の一人が声を掛けてくる。

「あ、あの〜何か御用ですか?」

「大石明夫と言います、川本太郎先生のカバンを持ちたくここに来ました」

 事務員は更にポカンとしている。

「あのアポは……取ってないですよね?」

「はい、飛び入りです。なんとか先生に繋いで頂きたいのです」

「ちょっと……お待ち下さい……」

 事務員はどこかと連絡を取り出した。

 大石は何日でも待つつもりだ。最悪ここで餓死しても良かった。

 自己擁護のプライドしか持ってないのだから。

「あの、大石さん?今日ここで先生には会えませんが災害ボランティア活動員ですぐ来てくれるなら現地で会えるかもと……」

「いきます」

 運が向いてるように大石は感じていた。

「では、迎えが来ますので」


 願ってもない展開に心は躍っていた。

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