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詐欺師に惹かれた愚か者  作者: かずや


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6/10

変わる世界クズの力


 高校を卒業と同時に両親からは絶縁を宣言された。

 警察沙汰になったあの日以来の会話だった。


「明夫、出て行け」

「……おう」


 これだけであった、別に人の気持ちがわからない訳では無い。

 むしろ、ある程度分かるからこそ煽る事も出来るしはぐらかしも出来る。

 なので、親からしたら自分がどんな存在になっているのか想像に容易かった。


 高校時代の就活では抑えていたのもあり、肉体労働であれば業界は人手不足。

 特にやりたい事はない大石は適当に見繕った株式会社与作の板金加工の住み込み仕事に就いた。

 当初は初めての事で仕事場で自我を出せなかった。

 だからその辺りにある飲食店に目を付けた。


「これ、緩くない?」

 初めてのいちゃもんは某ファミレスチェーンのビーフシチュー。

 味はそこそこ、しかし量が足りない。

 そこで考えたのが「ぬるい」と訴える事だった。

 結果から言えば失敗した。

 さすがに八割以上食べてからだったので、店からは何とも出来ないと拒否の姿勢を取られる。

 大石はダメ元での訴えだったが「なんかぬるくて不味いよな」とボソボソ店長らしき者に呟き、会計時も「あんなもんか?」と聞く。

 本当は温度など食べれれば良かった、出てきた時は熱かったのだから。

 返金や料理を新しく取り替え等は無かったが、大石にとって収穫はあった。


「ご満足頂けず申し訳ございません」

 店長は腰を折り謝罪をする、その姿言動が大石の快感に繋がった。

 一回りも二回りも歳が上そうな男が自分に小さくなって謝っている、良いしれぬ快感が全身を包む。

「おう、半端なもん出すんじゃねぇぞ」

 去り際の一言で更に快感が増す、この体験を機に快楽を満たす行為としてストレス発散に店へいちゃもんを付ける癖が生まれた。


 そうしてクズが出来上がってきた大石は、四十代になろうとしていた。

 給与に不満があった、勤続で見れば二十年越えたとこだが新人時代と大して変わらない。

 むしろ取られる税金が増えていって手取りは減っている。

 昇給が無いのは自身の人を辞めさす行動、協調性の無さだと自覚している。新しい作業も難癖付けて拒否するから上げようが無い、さすがに大石もそこには突っ込めない。

 だから、新人が来ればやらしく詰めて、街の飲食店で嫌がらせのような言動をして憂さを晴らす。

 およそ健全と呼べないサイクルだった。


 川本太郎を認識して、意識の半分はその動向に向いていた時。

 また、日本の地域で大きな地震が起こった。

 半島での地震、原発は今回無事……

 自分ならばと大石が考えた通りに川本は動いた。

 国会であーだこーだの姿よりも、危険を顧みず被災地に乗り込む姿をいの一番に見せるパフォーマンスで支持が見込める。

 まさにその考え通りにSNSでは態勢整え中に無視して乗り込んだ事の炎上と信者の賞賛、後日国会で川本太郎が怒りを滲ませたような勢いの芝居で政府対応の遅さを叩く。

 普通の人が冷静に見れば、控えるように言われてる場所に勝手に行ってそれらしい画を撮るパフォーマンスだと分かるだろう。

 だが、クズの相手はクズまたはクズ予備軍のはみ出し者。

 効果は絶大だった。

 元々の支持層は、更に神格化した川本太郎が居ないと生きていけないまで堕ちていた。

 真性のクズ大石からは被災地支援パフォーマンスと分かっていたが、次に来る選挙でさらに拡大が見えた。

 そうなれば金がもっと集まる。

 細かな仕組みはわからないが、党員が多ければ金も増える。

 パフォーマンスを行い未来に向けて金の元を仕込む、災害なんか天からの恵みにしか思えない。

 それがクズの思考、そしてその思惑通りに動く川本太郎を見て確信した。

「やっぱり金を原動力にしてるか」


 大石は羨ましかった、簡単作業しか任せられていないとは言え拘束された時間と作業で割に合わない手取り。

 対して憧れはパフォーマンスで信者を作り、信者=有権者の後ろ盾に今の政府に適当な難癖を付ければ良い。

 そんなに面白い事を実現させてる川本太郎に大石は感服していた。


 そして、選挙の時期が来て予想通り党勢は更に拡大。

 見た目にも「普通の人なら」文句を言いにくい障害者を議員に据えて話題となった。

「普通の感性なら」表向きは大事な事だよね、と評価せざるを得ない。

 裏を返せば大多数の足を引っ張る存在だ。

 基本的に大多数のカバーが終わってから少数派に広げていく、だが順番を無視していきなり持っていきやすくなる。

 大勢が困り、少数は満たされたら後は勝手にやれば良いで済む。

 そんな混沌とした世界が楽しみで大石は仕方なかった。

 そして良い風に見せながら懐に金を蓄える川本太郎を尊敬していた。

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