クズの半生
地震災害対応の下手さで下野させられた党に代わり、いつもの大体を守ろうとする党に与党は代わった。
そして支持する川本太郎の党は熱狂的な信者により力を増していた、数では無く何かズレた思考回路のはみ出し者が集まりだしたのだ。
政権が交代する混乱に常時党勢は強まり国会議員を僅かに増やしていた。
大石は世の中のはみ出し者達がやっと気付き出したかと状況を見ている。
事あるごとに政府を非難していれば良い、そんな姿勢を強く保ち見せ続ける川本太郎の姿に信者は酔いしれる。
ネット上でもリアルでも疎まれるが、誰も逮捕出来ない。
好き勝手に言い放題やり放題、でも陰口しか言えない世論がイライラする様を大石は手を叩いて笑った。
「何にも出来ずピーピーのたまうだけしか出来ない一般人達は可哀想だなぁ!酒が進んじまう」
極上の酒盛りを毎日味わえていた。
過激な事は全てパフォーマンスだが世間は反応せざるを得ない、だがそれを止める事が出来ず歯噛みして嫌がる大多数の一般人達が面白くて仕方なかった。
——大石は人生の選択を間違えなかったと確信していた。
世間的に歪んだ異物扱いだが疎まれるだけ、生活は出来ている。
大石は幼少期から変わらない異質な感性と性格であった、両親は普通の一般人だが絶縁されている。
未成年だった頃から反普通で口が回った、今やっている新人潰しや上司へ答えさせにくい例を投げると言った事が癖だった。
高校生だった頃だ、県内底辺校。
学期末テストの時。
「先生、テストもう終わったし外行っていいですか」
大石はテストの問題など半分以上ほっぽり出した、まだ時間は三十分以上残ってる。
担当の教員はテストで静かな空間で突如響いた大石の声に固まってる。
「いや、もういいから待つの勿体無いし回収していいっすよ。外出てて良いすか?」
ここで教員がフリーズから解けて怒りの形相となる。
「大石君、何を言ってるんだ!?大人しく待ちなさい!」
「え?なんで?もう放棄するしやる事無いなら外に出た方がカンニングもしないし合理的じゃん」
「大石!……大人しく待て!後で職員室に来なさい!」
「だからなんでよ、行かないよ?それか校長とかと話合いますか?俺は合理的に迷惑かけてもないのに?」
「大石!!良い加減にしろ!」
(あーおもろ、五分は稼いだかなぁ、早くおわらねぇかな)
テストが終わり職員室への呼び出し、だが行く事は無かった。
何故「怒られるだけの時間」に付き合わないといけないのだ、何一つ自分は改善する気は無いしむしろ合理的な提案しかしていない。
「アホらしい、暇じゃねーんだ。新作ゲームが待ってんだよ〜」
大石はさっさと自宅に帰った。
その夜、ゲームに集中していた時だった。
「明夫!!!こっちに来なさい!!!」
父の怒鳴り声が聞こえる。
(何だ?何怒ってるんだ?)
リビングに行くと父は鬼の形相、母は泣き崩れている。
「どうしたの?」
「どうしたのじゃないだろう!!お前テスト中にまた自分勝手な事して!先生の呼び出しも無視しただと!?」
「なんだその事か」
「なっ……なんだその事だと?お前は昔からおかしいと言い続けてきたが恥ずかしいと思わんのか!!」
「思うわけないじゃん、今更良い学校目指すわけじゃないし。今日だって合理的提案したのに考えもせずに先生一方的に怒り出しただけじゃん」
「お前と言うやつは……!!」
父の顔が真っ赤に染まる、そんなに怒っても身体に悪いとしか思わない。
「じゃあ親父はさ、俺の人生先まで答え教えてくれるの?間違いない答えってやつをさ」
「明夫!!」
「だってそうじゃん、考えるのは俺なんだから俺が判断した答えがこたえ……」
大石は衝撃と共に後ろに倒れ込んだ、何があったかはすぐ理解した。
父に殴られたのだ。
「いって、あーあやっちゃったね?ちょっと行ってくるわ」
「何ぃ!?この期に及んでどこ行くんだ!」
「え?警察に決まってんじゃん、ずっと録画してたもん」
大石はテーブルに立て掛けたスマホを確認して、殴られた瞬間を流した。
「お前!いい加減にしろよ!」
「お願い明夫!もう辞めて!普通の子になって……」
大石は構わず飛び出して警察に走っていった……
数十分して自宅に警官と共に帰ってきた、両親の顔はもう虚無感で一杯だ。
警官は親に「大変だと思いますが暴力はいけません」とテンプレの文句を言い、大石は笑ってしまう。
大石も注意をされる。
「学校でもそう、ご両親に明らかに煽るような言動する前に考えよう、ね?」
「え?俺悪いの?」
「明夫!!」
「まあまあお父さん……我々が」
他の警官に制止される父、ならば場の上は自分だと捉える。
「俺が殴られたんですよね?煽るって録画には考え述べてるだけの俺に親父が何か怒って殴ってきたの映ってますよね?」
「いや……だからそういう……」
「だからも何も虐待じゃないんですか?親父が欲しい答えじゃなかったから言う事聞かす為に殴ったんでしょ?」
「だからね、君落ち着いて……」
「落ち着いてますよ?事実殴られた僕が親父にごめんなさいできます?逆でしょ?」
淡々と警官に事実を伝えていく、感情は混ぜない。
「もう……良いです、警察の方々、明夫……申し訳ありませんでした」
父は全ての糸が切れたように力無く謝った。
母は大泣きだ。
「あ、警察の方ありがとうございました。もう大丈夫そうなんで、解散してもらって良いっす」
大石は警察に事は済んだ、もう用は無いと言わんばかりにその場を切った。
警官達は親に何か慰めのような事を話している、大石は興味が無いとばかりに自室に戻りゲームを再開した……
親が爆発したのはこの高校生の時だったが、小学生〜高校生までの間で似たような人と団体の場を乱す言動は幾つもあった。
親は困り果てていた。
そして大石は自覚していた、自分は「クズ」である事も。
何もきっかけは無い、ただただクズとして生まれ生きてきてるのだ。
反省や後悔等感じようがない、真性のクズとして生きている。
それは呼吸するのと同じくらい何も思う事は無かった。




