クズの状況
——政治に興味は無かった。
人が人を救う枠作りで金が貰える、その金は自分達が働いて得た金から巻き上げる税金だ。
もちろん世の中にタダなんて無い、だが使い道が正しいとも使う比率が正しいとも思えない。
大石は社会で言う「人社会のはみ出し者」に該当する。
傲慢他責、自身がイライラすれば立場上反撃しにくい雇われアルバイトや客至上主義の場所で発散すれば良い。僅かなミスやズレを広げに広げて相手だけが悪いように見せる事に長けていた。
こちらは正論と権利を主張し法は犯さない、そうすれば民間内でしか処理せざるを得なくなる。
そうなればこっちのものだ、恫喝は一才しない。自分に落ち度は作らず被害者である事を貫く。
そんな事を繰り返せば会社内でも社会でも浮き出て疎まれる存在になる、だが大石は何ら自分に非が無く周りが着いて来れないだけ。優秀な自分に見合わない馬鹿しか居ないとさえ思っている。
そんな思考回路の大石に全てを守れないが大多数を網羅するやり方の政府を理解が出来るわけ無かった。
なぜなら大石ははみ出し者、国の政策恩恵は受けれないのだから。
そして大石にとって黒く汚い核に見栄えを作ろう光の存在が降臨した。
川本太郎、先日選挙戦で見事に国会議員に入り込んだ自身と同じ匂いを感じる、人生で初めて格上と思った人物だ。
耳障りの良い事を熱く感情的に語る姿は「大多数で進行する議会」で浮きまくった。
時間はオーバー、議題に関係ない質問、公的な場所に於いて人を小馬鹿にする言動。全てが目立ち世の中の多数は「国の癌、投票した者の精神が疑われる」とまで言われ出した。
しかし、政界に入ってしまえば全て「有権者の判断」と言われる投票システム。
どれだけ鬱陶しい存在だろうが、大きく法を超えさえしなければ排除は出来ない。
そんな希少で厄介な存在こそ大石の存在とリンクした。
——20××年、日本のとある地域で未曾有の地震災害が起こった。
地震の起こった場所が悪かった、原発が直撃を受け国内は不安と混乱にデマも混ざって混沌を極めた。
時の政府は思想こそ近いものがあったが、頭が悪いクズの集まりと認識していた大石は後手後手に回る対応と大失言、くだらないプライドを見せて突っ込まれる様を大笑いして眺めていた。
クズはクズらしく立ち回れば良いものを、なんとか賢者アピールしようと馬鹿丸出しのまま手を突っ込んでいる風にしか見えない。
大石のはみ出し者の美学からすれば抱腹絶倒ものだ。
そして、そんな大石が認める川本太郎はアクションを起こした。
「一旦国外に逃げた」のだ。
大石は唸った、明らかな物理的危険には手を出さない。被災地に寄り添うレベルじゃないと判断したのだ。
「流石だ川本さん、被災地は誰かお偉いさんって言われる奴がなんとかするさ」
大石は川本太郎を称賛し、その頃のSNSでは多数派からの大炎上に本物の信者が浮き出る世界になっている。
大石も匿名やニックネームでリアル自身は明かさずに、そこそこ有名な川本太郎信者として認知されていた。
リアルの職場では相変わらず新人が潰されていった、大石によってだ。
川本太郎に心酔しだしてクズ度が増した、恫喝と取られそうな勢いだが相手の僅かなミスだけを突いて改善の時間は与えず追い詰める事が激しくなっていた。
「こんなとこに小さな工具置いて、事故になり誰かが死んだらどうする?お前は人殺し一歩前だ!」
そんな小さな小さなミスを犯す瞬間を蛇のように待ち、発生した瞬間噛み付く。そんな事を繰り返していた。
大石の作業はもう固定化されて、大石しかやらなくなっていた。
板金を指定の型に作るだけ、指定の型も数種類しか無く先輩や同僚は何十種類プラス他の作業も受け持つ。
明らかに大石は隅に避けられていた、新しい事をさせようにも契約書には〜業務変更指示には上長以上の承認印が〜と事あるごとに何かを口出してくる為、次第に頼まなくなってきた。
大石からすればしてやったりの状況、簡単な作業だけで面倒な事や大きな作業は全て回避できる。
そして大多数を守る為の労働基準法とやらを基軸にしていればクビにもされない。
大石は笑いが止まらず地震の件と相まって上機嫌だった。
——地震発生からしばらくして、時の政府は無能なクズさを晒しゴミを撒き散らし対応の悪さを国民に叩かれて敗走していった。
「ふん、もう少し楽しめると思ったが……お?」
大石はフォローしていた川本太郎の政党アカウントに動きを見た。
どうやら頃合いかと日本に帰ってきたようだ、表向きに地震について耳障りの良い事を書いてるが「今も被災地は放射能で危険」の一言がまた炎上していた。
大石は大多数の良い子ちゃんとは違う、文面通り事実危険だと思っているし、ネット民感情なぞ裏返せば建前が無ければ死ぬと思い込んでる馬鹿の集まり怖くもない。
そんな風に思いながらアンチに意味の無い煽りを適当に打ち込んでいった。
炎上があると支持を無くすと言うのは半分不正解だ。
なぜなら自身が支持する川本太郎とその政党は心酔した者か、大石のように「頭が良いクズ」しか既に居ないからだ。炎上する事でその層が結束する、元々少数派だから支持率の影響は無いに等しい。
そして、時代は転機をむかえようとしていた……




