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フェイタル・リンク・ハッピーエンド−異世界転生は咎人を救うのか−  作者: 紗雪あや


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世界の種類と創造種


ただ、こちらに落ち度がないと言ってもらえるのはありがたかった。それで僕の罪悪感が消えるわけではないが、おかげで少なくとも今はこちら側の都合だけに集中できる。

この状況は本来の主人公である僕達には確実にメリットだ。

何せ、メインキャラであるサミュエルとデイヴィッドはユーディに集中していてマリアを完全に視界から外している。激重な二人のシナリオが潰れるなら、今後の展開としては好都合だった。

サミュエル、デイヴィッド、そして騎士ヨハンの三人は、下手にフラグをすっ飛ばしてリンクチェーンを上げると回避不能な監禁ルートに直行する。その問題を考慮しなくて良い。それだけでも実際のところ負担はかなり軽いのだ。


「二人がユーディに執着しているなら、二人のルートとトゥルーエンドは潰せてるな……それなら現状維持でマリアのリンクチェーンを調整しつつ不穏なルートの芽を摘んでいけば、ある程度の展開調整はできるはず。現状、アベルとは敵対する要素もないし、僕の素性さえバレなければ王家ルートに沿うのも状況としてはアリなのか……?」


だけど、それはそれでリスクも大きい。マリアだけならともかく、僕も関わるにはやはり王家は危険だ。いくらアベルが好意的とはいえ、それはあくまでもアベル個人の感情であって王家の総意ではない。

僕と母を消そうとしたのが誰かもわからない現状では、やはり近づかない方が良いだろう。下手をすれば誰かの命を受けてノアあたりが刺客に差し向けられてしまう可能性だって出てくるのだ。

女子二人そっちのけで思考の海に沈んでいると、カン、と軽い金属音が部屋に響いた。

ハッとして顔を上げると、そこには心配そうな表情のマリアと、テースプーンをソーサーの端に当てて愉快そうにこっちを見ているユーディの姿があった。


「お茶会中に考え事かな、一応声もかけたんだけど聞こえてなかった?」

「あ、その、すみません……」


こういった、先の展開を自分なり読むような思考を始めると、どうしても周囲が見えなくなる。前世でも指摘されることの多かった癖だし、気を付けてはいたけれど、さすがにお茶会の最中というのは失礼だろう。こういう事は一人で部屋でやるものだ。


「最初に会った時にもしかしたらって思ってたけど……」


じっとこちらを見てから、ユーディは確信を持っている風に口を開いた。


「カインくん、多分だけど君は『創造種』なんだね」

「そうぞう、しゅ……?」

「そう、創造種。とは言っても日本語の、いわゆる神様的な意味の創造主じゃなくって私の造語ね。創造する種族、って意味」


また。また知らない単語が出てきた、しかも造語だった。いい加減にして欲しい。


「えーとね、簡単に説明すると、前提として世界には上位世界と下位世界の二種類があるの」

下位世界。それは先程も彼女が口にして、僕がスルーしていたワードだ。

「ざっくり分けると、上位世界は『無から自然発生した世界』で、下位世界は『別の世界の存在によって創造された世界』の事だよ」


つまり、どちらが強いとか優れているとかではなく、親子的な意味での上位と下位なのか。


「それで上位世界に住む人間のごく一部……特に夢想家や芸術家に多いのが創造種だね。彼らは自分の心の中に強固な世界を持ってる。それが種となって上位世界から零れ落ちて生まれるのが、下位世界。見た感じでは、君には創造種としての才能が確実にある。もしかして前世では何かクリエイター業でもしてた?」


想像力の強固な人間の空想が、別の世界を作り上げている。上位世界とやらがどうかは知らないが、その理屈なら下位世界はそれこそ星の数ほど存在しているのだろう。ここはそのうちの一つというわけだ。

この世界のベースが日本のゲームである以上、前世の僕達が暮らしていた世界は上位世界で間違いないようだ。

創造種。無意識に空想から世界を創造するなんて、また随分と傲慢な生き物だ。


「前世の僕は……フリーライターでしたよ。割と何でも請ける感じの」

「へえ。うーん、思ったより芸術家感はないね?」

「まぁ、フリーランスなので物によりますよ。雑誌の手伝いからテレビ番組の台本、ソーシャルゲームのイベントシナリオや商品のコピーまで色々とやってましたね」


フリーランスという特性上、収入を安定させるために仕事はなるべく選ばなかったし数をこなしていた。だから積極的に営業はかけていたし、頼まれれば何でもやっていた。人脈作りだと思って、ライターとはあまり関係ない頼まれごともそれなりにこなしていた。その甲斐もあって死ぬ直前の頃には僕も仕事に困ることもなく、都心近くに住んでいても食べていける程度の仕事と収入を得ていた。


「僕の請けた仕事は、有名な仕事で言うと……」


名前の出ていない仕事のうち幾つかを口にすると、女子二人の目が驚きに丸くなった。

挙げたのは大手のカジュアルブランドと、プチプラコスメの有名リップの宣伝コピーだ。さすがに誰も知らない仕事を言っても通じないだろうから、あえてわかりやすいものをチョイスした。


「えっ、それ使ってた! カインすごいね!」

「おお、私でも知ってる化粧品ブランドじゃない。カインくん有名人だ」

「名前の出ない仕事に有名人って表現はどうなんだろう……?」


それにもう僕は別の世界にいて、あそこにはいない。有名人、と言われてもなんとなく複雑な気持ちになるだけだ。

そもそも挙げたブランドに対して、僕は商品開発じゃなくて宣伝用のコピーしか考えてない。売れたことに貢献はしているのかもしれないが、凄いのは商品そのものだ。


「なるほどねえ、そういうパターンの創造種もいるんだ」


興味深そうに目を細めてスコーンを頬張ってから、ユーディは僕をまっすぐに見る。


「もしかしたらどこかに君の下位世界もあるかも知れないね?」



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