まがい物の薬とエリクサー
ルリ達は四人で孤児院へと向かう。
素っ気ない態度のシスターを脅して病気の少女ミーナと面会する。
薬を飲んでも良くならないというミーナ、それに対してスフェールが──
私はマナ君と、アリスちゃん、スフェールの四人で孤児院に向かった。
シスターが出迎える。
「あれ、ディカさんは居ないんですか?」
「司教様は今外出中です」
「……」
なんか素っ気ない態度だな──
「ミーナにあわせてよ!」
「しかし……」
「女。巫女と我に逆らう気か?」
スフェールの威嚇に、シスターはひっと声を上げて、急いで案内した。
案内を終えるとスフェールはシスターを追い出した。
可哀想に思うが、素っ気ない態度のシスターなんて嫌だ。
「マナ、アリスちゃん」
ベッドの上で少女がけほけほいっている。
「ミーナ、病気、良くならないの?」
「うん、シスターがくれるお薬飲んでるけど……」
と瓶を指さす。
スフェールはそれをつかみじっと見つめた。
「これは薬でもなんでもないぞ」
「え?」
「ただの苦みをつけた水だ」
な、なんだってー‼
「フェンリル様、それ本当?」
「本当だ、これでは良くなるものもならん。ルリ、あの薬を」
「はいはい、昨日作った万能薬ですね」
エリクサーとは言わず万能薬と言う。
それをコップに入れて、少女──ミーナちゃんに渡す。
「これで、良くなるの?」
「なるよ、飲んで」
「我らを信じろ」
「巫女様とフェンリル様が言うなら……」
ミーナちゃんはエリクサーを飲み干した。
すると、先ほどからけほけほ言っていた咳がぴたりと止まった。
「体が軽い、息苦しくない」
「お前はもう健康体だ」
「やった、やったぁ! 有り難う巫女様、フェンリル様!」
ミーナちゃんが力一杯抱きついてくる。
エリクサーの効果で体力も一般の子ども並みになっているのか力強い。
「さて、無法者をどう排除してやろうか」
クククと笑うスフェールが結構怖く感じたのは内緒。
しばらくして、教会と街長であるディカさんが戻って来た。
「しきょうさま!」
「おお、ミーナ。元気になったのかい⁈」
「はい、巫女様とフェンリル様の薬のおかげで」
そう言うとディカさんはミーナちゃんの頭を優しく撫でてから私達を見る。
「ミーナの病をどこから?」
「マナ君から聞いたんです、長い事病気が治らなかったって」
「ええ、シスターに薬を買いに行かせて、その薬を飲ませて居たのですがあまり改善しなかったのです」
「その薬だが」
スフェールは瓶と中身の液体をゆらゆらとさせながら見せる。
「薬が、どうしたんですか?」
「苦みをつけたただの水だ」
「何ですと⁈」
ディカさんの目が開かれ一人のシスターへと視線を向ける。
「シスターアレッサ! これはどういうことなのですか⁈」
「ち、違います‼」
シスターは慌てふためいているが、冷や汗をかいている。
「私はそんな事……」
「女」
スフェールが近づき、凄む。
「ひっ⁈」
「女神フェンリナに誓ってそのような事はないと言えるのか⁈」
「い、言えます」
「では、言ってみろ」
「女神フェンリナ様に誓って、ありま──」
教会の中なのに雷が落ちた。
「きゃあああああ‼」
シスターは黒焦げボロボロ。
「嘘のようだったな」
「では、渡していた代金は?」
「此奴の部屋を漁れ、宝石類が出てくるぞ」
ディカさんが驚愕しているシスター達に付いてくるように言うと、シスター達は我を取り戻したかのように、ついて行った。
スフェールの言う通り、シスターの部屋からはアクセサリーや酒などのものが見つかった。
高価な薬だったから、買えたのだと思うとディカさんは言っていた。
いやぁ、悪い事はするもんじゃないね。
「でもこれでミーナは実家に戻れます」
「しきょうさま、わたしもどりません」
「どうして?」
「びょうきでなおりにくい、なおらないから、きょうかいにあずけたかぞくとどうすごせばいいのかわかりません」
「ミーナ……」
「それに、わたしはみこさまとふぇんりるさまにおれいをしたいし、みこさまたちをつれてきてくれたマナとあえなくなるのはいや」
「ミーナ!」
マナは嬉しそうな顔をする。
「だからもどりません、おかあさまたちにもそうつたえておいて」
ディカさんはふぅと息を吐き出しました。
「分かりました、そのように伝えましょう」
「では快気祝いに料理でもするかルリ」
「いいねぇ!」
「ドラゴン肉でいいか」
「……それ高級品じゃない?」
「ああ、超が付く程高級だ」
子ども達やシスターがわらわらと集まってきた。
「ドラゴン肉ですって」
「たべたことなーい」
「おいしいのかなー?」
「そんな高級品いただいていいのかしら」
と口々に呟いている。
「で、何にする?」
「シチューがいいんじゃないかな? たくさん居るんだし、野菜もとれるし」
「なるほど合理的だ」
私達は一度家に戻り、シチューを作る準備をする。
頑張って本格的なものにした。
ワインとか色々入れたりして。
疲れた──
パン酵母で、作ったパン生地でパンをたくさん焼いた。
あと、甘いものを食べたことが無いだろうと思い、ケーキを作った。
生クリームたっぷりのケーキ。
赤いイチゴがのったケーキ、ショートケーキのホールを。
できあがったそれらをアイテムボックスに入れて持ち運ぶ。
教会に戻り、寸胴鍋でこしらえたシチューを教会のコンロに置く。
薪のコンロで適温を保ちながら配膳する。
そしてパンも配る。
ディカさんが祈りの言葉を口にして、子ども達とシスターと食べ始める。
「巫女様、フェンリル様、宜しければいっしょに」
「こいつらも一緒でいいか」
スフェールはマナ君とアリスちゃんを前に出す。
「勿論です」
私達もシチューを椀に注ぎ、椅子に座って食べ始める。
「うーん、本格的に作ってみたけど美味いなぁ」
としみじみ語る私。
「おかわりはあるか?」
「あるよー」
そんな会話をしながら、シチューを食べる。
パンもずっしりとしていて、それでいてふかふかで良かった。
子ども等と私達、そしてシスターやディカさん達であっという間にシチューとパンを食べきってしまった。
「では、デザートといきますか」
そう言って、私はケーキを三個並べる。
子ども達が目をキラキラさせる。
「これは……⁈」
「ケーキですよ、自作したものですが。 (といってもスポンジ部分は既製品だけど)」
そう言って笑う。
「こんなによくしてもらって、巫女様、フェンリル様有り難うございます」
「礼はいい、子ども達が早く食いたそうにしているぞ」
「均等に切るからねー」
とナイフで均等にきって子ども達に渡す。
ちょうど全員分行き渡って無くなったので仲間はずれは居なかった。
「甘くて美味しいわ!」
「このくだものなんだろう?」
「こんな贅沢していいのかしら……」
「巫女様とフェンリル様のお持ちのものなのだからいいのだと思うわ!」
「みこさま、ふぇんりるさまありがとー」
そんな言葉を聞きながら、私とスフェールは顔を見合わせて笑った。
ああ、なんて幸せな時間だ──
苦みをつけただけの水を飲ませていたことが発覚。
ですが、エリクサーのおかげで見事完治。
また横領していたシスターは罰を神から与えられました。
これはスフェールの要素が大きいです。
みんなで食事をしてそれを楽しいと言うルリ。
スフェールも、ルリが幸せなら幸せなのです。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。




