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02. そのゲームはどうでもいい


入学した学園には、この国の第二王子がいた。


金髪に青い瞳、何というか無駄にキラキラしい『いかにも王子様』な第二王子を一目見たとき、マリージュはハッとした。

例の記憶の中で、JKの妹にあたる存在がやっていた『少女漫画みたいなゲーム』で、見たことがあるような気がする顔だったのだ。


(…どんな内容だったっけ… 

 格ゲーにつきあってもらう対価として、つきあわされたゲーム…)


例の記憶の中のマリージュ(現代日本のJK)にとって、ゲームとは戦いであった。

ボタン押してナンボである。

連打して技を繰り出さないゲームに興味なぞない。


戦いには相手が要る。

相手はもっぱら、妹であった。


だが、妹は戦いを好まなかった。

ストーリー性があり、ボタンがひとつふたつあれば事足りるようなゲームを好んだ。

このキャラがお気に入りだの、このスチルがカッコいいだの、きゃぴきゃぴ談義が好きだった。

『スチル』ってなんだろう。『スキル』の間違いってことでいいのか、誰か教えて欲しい。


記憶の中のJKは、妹の好むゲームは正直どうでもよかったのだが、きゃぴきゃぴに付き合った分だけ対戦相手を務めてくれたので、格ゲーのために、やむなく付き合っていた。


そのとき、さんざん妹に見せられた『推し』とやらが、第二王子だったのだ。


何か、『王子様や高位貴族のご子息たちと、学園生活とともに繰り広げられる恋愛模様を、主人公目線で楽しむ』とか、そんな感じの内容だったような…



(うん。覚えちゃいない)



妹がお気に入りの王子ばかり見せるので、王子の顔は辛うじて脳裏を掠めたが、正直なところ名前は一文字も思い出せないし、王子以外の登場人物に至っては、カオどころか髪の毛の色などの特徴的な何かすらチラリとも過らない。どんだけどうでもよかったのかというお話である。


でも、ゲームの細かい内容もキャラクターも覚えていないなりに、ひょっとするとと思う部分があった。


(これはきっとあれだよね。

 リュカくんも、『主人公と恋愛を楽しむ』側のキャラってことだよね。

 だからあんな、漫画でしか見ないような黄色い歓声っぷりを発揮してるのね?)


だって、人の好みなんて千差万別。

金髪が好きな人もいれば赤毛が好きな人も、マリージュのように黒髪が好きな人もいる。

がっしりした体形が好きな人もいれば、細けりゃ細いほどいいという人もいる。

なのに、女性という女性がリュカを崇め奉っている、この国の異常。


なぜ、そんな不可解な事態がまかり通るのか。

それは、何でもアリだから。

『漫画みたいなゲーム』の都合で回る世界だから。


マリージュは、自分自身納得のいく、なかなかそれっぽい着地点に辿り着いた。


(こういうのって、当て馬としてあてがわれている婚約者から、

 どうターゲットを奪い取るか的なアレだよね?)


つまり、リュカがターゲットになった暁には、栄えある当て馬はマリージュということになる。


(…そうなったらなったで、まあいっか…)


親が決めた婚約であって、そこにマリージュの意思はない。

マリージュ的には、この婚約がなくなろうとも特段問題はない。

傷物扱いも、別に何とも思わない。一生結婚しなけりゃいいんである。

領地のすみっこで畑でも耕して、自分の食い扶持さえ何とかなればそれでいい。


家と家との繋がりがどうのは、別にマリージュが得たいわけじゃないし、ここはひとつ、得たいと思ってる人が自分で頑張るってことでどうだろう。

(いえ)のために繋がりが欲しいのは父…ひいては家を継ぐ兄なんだから、兄がこれぞという縁を掴み取ってくれば丸くおさまるお話だと思うのだ。


王家には年頃の姫君がいる。婚約者はまだいないと聞いている。

兄にもまだ婚約者はいないので、兄が姫君をお嫁さんに迎えるっていうのもアリではないだろうか。

侯爵家は姫の降嫁先として許容範囲内だし、兄だってなかなかのイケメンらしい(但し、マリージュの好みではない)し、可能性から言っても十分狙える。


公爵家との結びつきがなくなっても、王家との結びつきがあれば文句なんぞあるはずがない。文句言う前に身の程を知れってなもんである。


(よし。それでいいことにしよう。 お兄様、後はヨロシク)


そもそも、マリージュみたいな当て馬の役割も碌にわかってないような格闘ゲーマーをこんなポジションに置くなんて、ミスキャストもいいところなので、はじめからマリージュは何ら期待されていないに違いない。

きっと、リュカに『婚約者と名のついた存在がいる』ということにだけ、意味があるのだ。


つーか、マリージュにしてみたら、格ゲーじゃない時点で既にどうでもいい。


マリージュは、しれっと他人事を決め込んだのであった。



ヒーローの登場が遅くて申し訳ございません…

次回から(やっと)登場します。

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