30 偽物の世界
主人公視点のお話です。
外に出ると、そこは日本だった。
といっても、実際は日本ではないのだろう。たぶん……そう見えるだけの偽物。
横を見るとナナが目を丸くして、そびえ立つビルを見上げていた。
「高い……」
そう声をもらす。
どうやらナナもあまり外に出るタイプではないようだ。
それにしても……どこか懐かしい街並みだ。
実家に帰りたくなる………
「……………え?」
突然声を上げた私に「どうしたのよ?」と言うナナを置いて、あたりを見渡す。
目の前には見覚えのある建物。
私の通っていた学校。
「私、ここ、知ってる。」
「当たり前でしょ。あなたに影響された世界なんだから。」
それにしても、こんなにもそっくりなんてことがあるのだろうか。
振り返ると城を守るための高い塀が見えた。
リアルではないことを突きつけられる。
信号が変り、車が流れる。
真横を通り過ぎる女子高校生の笑い声に現実に引き戻された。
果たしてこれは現実なのだろうか。
「これ、青になったら向こうに行ってもいいの?赤はだめ?」
腕を組み難しそうな顔で独り言をつぶやくナナの手を無造作にとりひく。
「な、なに?」
「こっち。」
わかる。
信号を渡って、建物に囲まれた細い道を通って、タクシー乗り場の横を過ぎて。
育った街にそっくりな、偽物の街。
高校生時代、友達と歩いた記憶を思い出しながら。
私は商店街へ入った。
私たちの生きる世界は、果たして本物なのか。




