16 女子大生と紅茶
足を止めると眼前には庭園が広がっていた。
案内されたのは色とりどりの花や木が育てられている温室。温室と言っても窓がいくつも開け放たれており、そのどれもに外側から植物のツルが巻きついているため吹き抜けだ。
しかしここは、それすらも美しいと思わせる場所だった。
中に入ってみると決して広くはないが狭くもない空間が取られていることが分かる。ドーム状の円形になった建物に沿って大小様々な鉢に植えられた花、研究器具らしきものも見えた。
そして中央にはテーブルと4人分の椅子。まるでお洒落なカフェのようだ。
座るよう促され椅子に腰掛けると、いつのまに用意したのかレインが紅茶を注いでくれる。
そこであることを思い出した。そう、リアルの私は紅茶が飲めないことを。
焦りで汗が浮くのがわかる。いや、大丈夫、こんなにいい香りだもの…飲めるはず。
「い、いただきます」
レインに微笑み一口くちにする。
(…あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁ……)
ダメだった。
不審に思われていないだろうかと冷や汗をだらだら流しながら一気に飲み干す。
「ご、ご馳走様でした…」
「あら、聖女様喉が渇いていらしたのですね!それならそうと仰って頂けたら直ぐになにか出しますのに。」
いえ、違うんです。紅茶が苦手なだけなんです。
「レイー!せいじょさまのどかわいてるみたいだから、もっとついであげてー!」
いや、その誤解はちょっと…いやかなりまずい。
(レインさんすみません、紅茶は少し、いえかなり苦手なんです……!!)
見栄を張ってごめんなさーいっ!!と心の中で全力の土下座をする。
「……っ…!」
突然レインが耐えきれないといった様子で吹き出した。いつもとは違うレインの姿にルゥエが驚きはしゃぎ出す。
「レイがふきだした!すごい!!やっぱりあしたはどしゃぶりだぁ!!」
せいじょさますごぉ〜い!!と言われても何が凄いのかさっぱりわからない。
「レインがこんなに感情を表に出すなんて……本当に久しぶりに見ました…」
でもどうして笑ったのでしょう?それを私に聞かれても分かるはずもなく。
当の本人は紅茶の入ったティーポットをさげ、新たに何かを準備しているらしかった。
そこにルゥエの爆弾が投下される。
「レイ〜〜さてはせいじょさまのこころをよんだね?」
一瞬でその場が凍りついた。
え?なに、心を…読んだ?
(じゃあ私が紅茶飲めないのも……)
「えっと、レイン。それは本当ですか?ルゥエ以外の心は読まないと、あれほど言っていたのに…」
そんななか、元凶は落ち着いた様子でミルクらしきものが入った新しいポットをもってきた。
そしてなんの前触れもなく脳内にこえが響く。
(どうか無礼をお許しください、聖女様。)
体感したことの無い感覚の違和感に言葉が出ない。
(いつもは読まないようにしてるんです。僕のこの力を不快に思う人も多いから。でも今みたいに叫ばれると耳を塞いでいても聞こえてしまいます…)
…そんなに切羽詰まった声をしていただろうか。
かああと熱くなる顔を耐えきれずに覆う。
「…ごっ、ごめんなさいっ……、紅茶少し苦手なんですっ……」
(わかってます…だから口直しにミルクを持ってきました。)
これなら大丈夫ですか?という質問に大声で「大丈夫です!!」と返事をしまた一気に飲み干そうとすると、それに気づいたのか窘めるように(ゆっくりでいいですからね)と言われる。
ミルクは急激に上がった体温をゆっくりと溶かしてくれた。
ここまでご精読頂きありがとうございます(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)
私は、紅茶が、飲めません!!
(お茶と名のつくものは「緑茶」と「ほうじ茶」と「麦茶」だけでよい!!)
飲めるようになりたいとは、思うんですけどねぇ…




