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第5話 沙希

 桐野さんのエロゲー談義からようやっと解放され、スマホも回収した俺は家路につく。


 途中でコンビニに立ち寄り、アイスを二つとポテトチップス、カップラーメンを購入した。


 これらは俺にとって重要な食料。


 もちろん家に帰ればご飯を作ってもらえるのだが、どうしても夕ご飯だけでは食べた気がしない。


 レジ袋を片手に提げながら家に帰ると、リビングからテレビの音が漏れ聞こえてくる。


 どうやら沙希がもう家に帰ってきているらしい。


 リビングに入ると、ソファに座ってテレビを見ている沙希と目が合う。


「あ、お兄おかえりー」


 ショートパンツから伸びた健康的な脚を折りたたみ、膝を抱えててソファに座っている沙希が手を軽く上げて迎えてくれる。


 彼女の名前は、飯田いいだ 沙希さき


 苗字が違うが、別に沙希は義妹とかそういう複雑な家庭というわけではない。


 沙希が我が物顔でリビングを占拠しているのも当たり前。なぜならここは彼女の家だから。


 つまり、俺がこの家にお世話になっているということ。

 俺はいとこである飯田家に居候しているわけだ。


 高校に入学してから、俺は飯田家にお世話になることに。


 橋の下に捨てられていたとか、親が他界して引き取ってもらったとか、そんな漫画やアニメの主人公のような理由ではなく、単純に学校が遠いため。


 実家から電車で二時間ほどかかる距離。往復で四時間もかかってしまう。


 そんな遠い場所から通学するくらいなら、学校に近い距離にある家に住めばいいんじゃん、と誘ってもらったのだ。


 ということで、俺はいとこの飯田家にしばらく厄介になることになった。


「お兄、なに買ったのー?」


 片手に下げたレジ袋を目ざとく指摘してくる沙希。


 俺はレジ袋からアイスを取り出し、沙希に放り投げて渡した。


「ほら、沙希の分」


「やった、アイスじゃん! あざまちゅ!」


 アイスの袋を豪快に破り捨てて、パクリ、と一口食べてご満悦な表情を浮かべる沙希。


 俺も沙希の隣に座り、自分のために用意しておいたアイスを食べ始める。

 シャリシャリした氷の粒が、喉を通り抜ける。


 夏に食べるアイスというのはどうしてこんなにも美味しのだろうか。


 俺は一口二口、アイスを齧りながら隣に座る沙希のようすを眺める。


 一つ下の沙希は、別の高校に通う一年生。

 小さいころからの付き合いということもあり、沙希も俺のことを「お兄」と呼ぶため、従妹というより妹に近い関係性である。


 だからなのか、家族以外の人と食事をするとどうしてもご飯が喉を通らない俺だが、沙希とはそんなことを気にせずに食事ができる。


 俺がぼんやりと眺めていると、視線に気付いたのか、沙希が小首を傾げて不思議そうに見てきた。


「なに、お兄? あ、ウチのアイス食べたくなった?」


「いや、大丈夫かな。お腹壊しちゃう」


 沙希にあげたのはソーダ味のアイスキャンディー。俺のはソフトクリームの形をしたアイス。


「あ、そ。じゃあお兄の一口ちょうだい」


 沙希が雛のように口をあけて、食べさせてくれと人差し指を口に当てる。


 俺はその口にアイスを運んであげると、艶めかしい舌使いでペロペロと舐め始める。


「うん、美味しい!」


 沙希が舌なめずりし唇の周りをぐるりと一周させる仕草は、他人であればドキッとしただろう。


 けど、悲しいかな。従妹であり、妹のような存在のその仕草を見ても、俺の感情は一つも動かない。


 客観的に見ても沙希はとても美少女であり、明るく親しみやすい性格は男女問わずモテると察する。


 沙希の容姿は、桐野さんのような生まれつきの金髪ではなく、美容院で金髪に染め上げ、耳につけたピアスから所謂ギャルのような見た目をしている。


 本来であれば俺のようなモブで、いつも教室の隅っこにいるような人物とは縁遠い存在。従妹という近い関係でなければこうして話すこともなかっただろうな。


 アイスを食べ終えた沙希は、まだ食べたりないのか勝手に俺のレジ袋を探り始めた。


「お、ポテトチップスも買ってるじゃーん」


「こら、それは俺が食べようと思って買ったんだよ!」


 注意する俺の言葉を無視して、沙希はレジ袋からポテトチップスを取り出し包装を開けてしまう。


「あー、勝手に食うなよ」


「ごめんにょー、ゴチでーす」


 次から次へとポテトチップスを口に放り込みながら謝られても全然誠意を感じられない。


「おわびの印に、食べていーよ」


 ポテトチップスを差し出されても、それは元々俺のものだから。


 沙希がポテトチップスを摘まみ、俺の口に無理矢理運んでくる。それを無感情に咀嚼する俺。


 ポテトチップスを食べながら、沙希がショートパンツから伸びた白く健康的な脚を俺の太ももの上に乗せてきた。


「お兄、足疲れたー。マッサージしてー」


 ズボンの上からでもわかる柔らかな脚。毛穴一つないのではないかと思うほどの魅力的な肌。


 俺は言われるがまま沙希の太ももに手を伸ばし、優しく揉んであげた。


「……ん、気持ちいいー」


 指が柔らかな太ももに沈み込むたびに、沙希は熱を帯びた吐息を漏らし、気持ちよさそうにしている。


 昔からそうなのだが、沙希は俺との距離感が近い。

 俺のことをお兄と呼んでいるし、実の兄のように思っているんだろうな。だから、こんな風に甘えてくるんだろう。


「そう、そこそこ……、あー、気持ちいいー……」


 どうでもいいけど、そんな風に甘い声で言わないでくれ。身内のこういう声は萎えてしまう。


 艶やかな声を、俺はげんなりとした表情を浮かべながら聞き流していると、沙希が挑発するような笑みを浮かべる。


「よかったねー、お兄。こんな美少女の美脚を揉めるなんて、嬉しいでしょ」


「俺のこの表情が見えないのか?」


 こんなにあからさまに嫌そうにしているのに、どこをどう見たら喜んでいるように見えるのか。


「またまたー、本当はすごい喜んでるくせに! お兄のむっつりー」


 わざわざ揉んであげているのに、なんたる言いぐさ。

 少し懲らしめるために、俺は揉んでいる指に力を込める。


「ぁんっ」


 少し力を込めすぎたのか、沙希がさらに色っぽい声を漏らした。


「変な声出すな!」


「急に強くするからじゃん! ウチのせいじゃないし!」


 さすがに恥ずかしかったのか、沙希が顔を真っ赤に染め、俺の肩を小さな拳で何度も叩いてきた。


「イタッ、痛いって!」


 男性の肩を、女性が可愛らしくポカポカと叩く絵面はとても可愛いだろうが、沙希は容赦ない力加減で叩いてきているので実際はとても痛い。


 俺は反撃のために、太ももを揉む力に指を込める。


「ひゃぁんっ! ん、ぅあん!」


 俺の予想外の反撃に、沙希の身体が小刻みに震え、嬌声を上げだす。


 ここで反撃の手を緩めてしまうと、またさらに容赦ない攻撃を受けてしまう。なので俺は、反撃の手を一切緩めない。


「はっ、ああっ……やぁんっ!」


 そのあとも沙希の太ももを揉みしだき続け、気付けば俺に凌辱された本人はぐったりとしながら身体を痙攣させている。


 さ、さすがにやりすぎたかな……?


「さ、沙希、大丈夫か……?」


「お……」


「お?」


「お兄のバカー!」


 俺の頬に、真っ赤な紅葉が咲いた。

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