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第17話 エロゲー談義

 今回は放課後ということもあって校舎に残っている生徒が少ないので、別々に下校して途中で落ち合うわけじゃなく、一緒に校舎から三人で出た。


 早瀬さんとは途中で別れ、桐野さんと一緒に帰路につく。

 途中で桐野さんが俺の肩を叩いた。


「ユキユキの家に行くまでにコンビニあるじゃない? 寄ってもいい?」


「いいけど、なにか買うの?」


「家にお邪魔させてもらうんだし手ぶらはね。沙希ちゃんにもなにか買ってあげたいし」


 桐野さんの心遣いは嬉しいしありがたいが、いちいち家に来るたびに買ってもらうのは申し訳ないので俺は首を振ってその提案を断った。


「いいよ。家に遊びに来るだけなんだからわざわざ買わなくても」


「じゃあ次はそうさせてもらおうかな。今日は買いたいものもあるから一度寄りたいかも」


 次はそうさせてもらう、という不穏な言葉を残して桐野さんはコンビニに入っていった。


 待つこと五分ほど。桐野さんが片手にレジ袋下げながら出てくる。


「はい、これ」


 レジ袋から取り出し、俺に渡してくれたのはソーダアイス。


「ありがとう」


 お礼を言ってアイスを受け取ると、桐野さんがアイスを齧りながらため息を吐いた。


「それにしてもあっついわね……」


 桐野さんが額を拭うのを横目で見ながら、俺もアイスを一口齧りついた。

 口内にアイスの冷たさとソーダの甘味が広がっていき、夏の暑さを少し和らげてくれる。


「沙希ちゃんは家にいるの?」


 桐野さんがソーダアイスを咥えながら尋ねてきた。


「たぶんいるんじゃない?」


「綺麗な金髪よね、沙希ちゃんって。維持とか大変そう」


 もっと綺麗なブロンドヘアーの人が何か言ってる。沙希が聞いたら怒りだしそうだな。


「沙希ちゃんを見てると、こう妄想が広がるから仲良くしたいのよね。見た目がギャルっぽいし……オタクに優しいギャルって今トレンドじゃない?」


 じゃない?って聞かれてもあんまり興味がないからわからないんだけど。


「沙希はオタクとか関係なしに優しいからな」


「そう、そうなのよ! オタクに優しいギャルって確かに響きはいいんだけど、たぶんそういう人ってみんなに優しいと思うのよね」


 桐野さんが食べきったアイスの棒を、指し棒のように振って熱弁する。


「だからオタク趣味に理解あるギャルって言葉の方が正しいわよね。沙希ちゃんはオタクって感じはしないけど、理解あるギャルって感じ」


「沙希は確かにそんな感じするかも。どんな趣味も受け入れてくれそう」


「どんだけ最高なのよ。全肯定従妹ギャルとか希少すぎない?」


 希少かどうかはわからないけど、アニメとか漫画にはいそう。


「そんなエロゲーとかないのかしら。すっごい興奮するのに」


 桐野さんの妄想話を聞きながら、俺はシャリシャリとアイスを食べきった。


 適当に相槌を打っていたので気付かなかったが、いつのまにか桐野さんの地雷を踏んでいたようだ。


 いつもと違うのは、俺がそんなエロゲー談義を嫌がってないこと。


 熱が入ってきたのか、桐野さんはアイス棒さらに勢いよく振り回す。


「最近は年下物自体が不人気なのかしら、あんまり見なくなったのよね」


「そうなの? あんまりアニメとか見ないけど、妹キャラとかはいまだに人気なイメージ」


 俺が疑問を呈すると、桐野さんは「わかってないなー」と呟きながら片目をつぶり、チッチッチと指し棒を左右に振る。


 その小馬鹿にした態度に若干イラッときたが、ここは大人しく我慢し俺は続きを促した。


「年下がメインじゃないと。サブはどうしてもサブなの。メインヒロインの扱いで主人公と付き合うことが約束されてほしいのよね」


 そういうものなのか。


「ユキユキには沙希ちゃんという攻略対象がいるんだから、ちゃんと関係が進展したらあたしに報告しなさいよ」


 豪快に笑いながら桐野さんが俺の肩をバシバシッと叩いてきた。

 とりあえず沙希とは関係が進展することはないし、報告する義務もないのは確かだ。


 そんな下らない話をしていると、いつのまにか家の前まで着いていた。


 前回はあれだけ気になった視線を、今日はまったく気にならなくなっていた。


 俺がそれだけ耐性を身についたからなのか、それとも桐野さんとの会話が楽しかったからなのか。

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