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第296話 vs魔都⑩

 BARの二階にて、Katsu-首領-達は襲い来る悪魔達と終わりの見えない戦いを強いられていた。

 闇乃トバリの『エレボスの外套』の活躍もあって、彼等の旗色は決して悪くはないのだが……その趨勢と打って変わって、Katsu-首領-の表情は険しい物となっていた。


「く……っ、まさか──窓がもう一つあったとは……ッ!」


 封鎖した窓を背に戦う彼の視線の先……階段を挟んで真向いの部屋には、大通りを臨む窓ほど大きくないにせよ確かに部屋と外を繋ぐ窓があり、彼等が戦う悪魔達の過半数はその窓から侵入して来ていた。


(迂闊だった! もう一つのふすまの先も、調べておくべきだった……!)


 Katsu-首領-の作戦では、大通りの窓を封鎖した後は階段から上って来る悪魔を有利な状況で倒し続けるだけで籠城が可能となる予定だったのだが、このもう一つの窓の存在でその作戦が狂わされてしまった。

 ……しかし、彼を責めるのも酷というものだろう。

 彼が見落とした窓は大通りの方面ではなく、その真裏に存在する小さな窓だ。

 寧ろ突発的な作戦における『想定外』がこの程度で済んでいる分、彼の分析力と判断力は高いと言えた。


(考えろ……考えろ! あの窓さえ塞ぐ事が出来れば、まだ十分カバーできる!)


 この部屋の天井は精々二メートル程度。

 飛翔による優位性が取れない悪魔を切り伏せながら、Katsu-首領-は余裕を持って次の打開策を探して視線を薄暗い室内に巡らせる。


(悪魔があの部屋から飛び込んで来た時に破壊したふすま。アレを凍らせれば、窓は塞げるか……? いや、既に破損している以上耐久性に問題がある! 凍らせる前に破られるのがオチだ!)


 タンスや畳はまだ残っているものの、しかしそれを持ち上げたり床から剥したりすれば、それはあまりにも大きい隙となる。これほどの数の悪魔がいる室内でそのような事をすれば……先ずただではすむまい。

 なるべく窓の傍にある物で塞ぎたいというのが、彼の本音だった。

 だが──


(く……っ、無理だ……! 流石にここから窓の周辺の状況を正確に観察する事は出来ない……! 部屋を暗くした弊害か……!)


 闇乃トバリの『エレボスの外套』を活かす為、大通りの灯りを塞いだ事が間違いだったとは思わない。

 そうしたからこそ、これ程の数的不利の状況で悪魔達相手にも有利に立ち回れているのだから。


「──Katsu-首領-さん! 一度こいつら、『()』で吹っ飛ばしますか!?」

「いや、まだこの状況を維持する方がベターだ! 俺が合図するまでは……──ッ!」


 オーマ=ヴィオレットから教わった魔力の大砲で、また窓周辺を一掃するべきではと提案するダイバーだったが、Katsu-首領-はとある事情からそれを否定。

 引き続き現状の維持をしつつ打開策を練ろうと視線を窓の方へ向けた瞬間、窓の外に浮かぶ悪魔の一体の手に雷が走ったのが見えた。


(狙いは俺か……! くそ、やむを得ん!)

「皆、片目を瞑れ!」


 肌にピリピリと感じる敵意から狙いが自分であると判断したKatsu-首領-は、悪魔の雷の魔法に対処するべく、長剣に魔力を注いでバチバチと帯電させる。

 次の瞬間、指向性を持たせて真っ直ぐに放たれた雷がKatsu-首領-へと迫った。


(頼む──まだ、バレないでくれ……ッ!)


 祈りながら振り抜いた帯電する魔剣が、悪魔の放った雷を正面から弾いたその瞬間──


「く……っ!」


 カッと眩い閃光が部屋を包み込んだ。

 それこそ、Katsu-首領-がこの状況で最も恐れた現象……部屋を覆う影がほんの一瞬だけ霧散し、『エレボスの外套』で影に同化していた闇乃トバリの姿がくっきりと浮かび上がってしまった。


「!」

「見たカ!?」

「見タ、見えタッ! アイツダ!」

「司令官様ノ言った通リダ! 光を作レ! 炎の魔法デ部屋を照らセ!!」


(しまった……!)


 ついに悪魔達にバレてしまった『エレボスの外套』の弱点。

 これから彼女達は炎や雷といった、()()()()()()()()で闇乃トバリを狙うだろう。

 闇乃トバリの『エレボスの外套』は、そう言った魔法攻撃に対しては無力なのだ。


(炎ならば水魔法で……いや、敵に雷魔法がある以上、部屋の床を不用意に湿らせるのは危険だ……!)

「──ッ! トバリ、もう良い! 危険だ! こっちに戻れ!」


 万事休す。そんな言葉がKatsu-首領-の頭に過る。

 確かに屋内という環境であれば、個々の実力で上回る彼等はまだ戦えるだろう。その為の訓練をチヨやオーマ=ヴィオレットが付けてくれていたのだから。

 しかし、それも数の暴力で攻められればいつまで持つかは分からない。彼等には今、外にどれだけの悪魔が控えているのかもわからないのだ。


(潮時か……! 撤退の指示を──)


 彼は隊のダイバー達の命も預かっている。

 『一旦撤退し、また魔都に入るところから出直すべき』という決断を、部隊のメンバーに共有しようと口を開き……




「──Katsu-首領-さーーーん! 無事ですかーーーっ!? 助けに来ましたよーーーーっ!!」

「っ!? この声……クリムか!?」


 唐突に響いた希望の声に、一転して活路を見出した。



「速く……もっと、速く……っ!」


 Katsu-首領-隊の籠城する建物を視界に収めながら、魔都に立ち並ぶ家々の屋根を駆けるクリム。

 カラカラと音を立てる瓦を蹴り、屋根から屋根へと跳び移り、時には【エア・レイド】や焔魔槍のワイヤーを使って宙を舞う。

 隠密をかなぐり捨てて最短距離を突っ切る彼女の姿は、焔魔槍が仄かに赤く輝いている事もあって、上空の悪魔からも非常に目立っていた。


「どこに行く気ィ~?」

「行かせナイヨ!」


 当然クリムの迎撃の為に数体の悪魔が差し向けられ、彼女の前に立ちはだかるが……


「っ! よ……っ、はっ! ──【クレセント・アフターグロウ】!」

「ナ……ッ!?」

「こいつッ、生意気ナっ!」


 悪魔達の魔法は【マジックステップ】やワイヤーを用いた変則的な軌道で、ほんの一瞬も足止めできないままあっさりと躱される。

 そればかりか燃える三日月状の斬撃を飛ばされ、逆に悪魔の一体が翼を焼き切られる有り様だ。

 Katsu-首領-隊の籠城する目標地点に近付く毎に彼女の迎撃に割かれる悪魔は増えて来るも、クリムはそれらの対処を最小限にしながら包囲を強行突破。


「──Katsu-首領-さーーーん! 無事ですかーーーっ!? 助けに来ましたよーーーーっ!!」


 目的の建物の一階の屋根に着地すると、氷漬けになったタンスや畳で塞がれた大通りに面した窓に向かって、自身の到着を知らせるべく呼びかけた。


「クリムか!? こちらはまだ何とか堪えているが、少しマズい状況だ! 外は今、どうなっているんだ!?」

「外は悪魔がいっぱいです! でも直ぐに助けますから、もう少しだけ頑張ってください!」

「解った! ──聞いたな、皆! ここからが本当の正念場だ!」


 クリムという救援の到着とKatsu-首領-の激励に、建物の中からダイバー達の士気の高まりを示す雄叫びが上がる。

 その様子を苦々しく見ていたのは、上空から悪魔達に指示を飛ばしていた司令官だった。


「チッ……面倒な事になッタ……!」


 建物の中の様子を仲間から聞き、光を作る事で状況を打開できるのではと考えた司令官。その直感はまさにKatsu-首領-の策の急所を突く一手だった。

 これで人間側の士気を崩せれば、後は物量で圧し潰せる……そう考えていたまさにそのタイミングで、新手の人間が現れてしまった。

 しかも、差し向けた悪魔達の妨害を難なくすり抜けて来た事から、実力も確かだ。士気が上がってしまった中の人間達も、ここから更に粘るだろう。この流れを断ち切る、最も手っ取り早い方法は……


「お前達は中ノ人間共を攻撃し続けロ! 私はこのチビを殺ス!」


 人間達の士気の元を絶つ。

 だが、下っ端の悪魔ではいくら差し向けたところで返り討ちに遭うだけだろう。

 口では『チビ』と罵りつつも、その実力の高さは認めていた悪魔の司令官は、腰に佩いたサーベルを抜き放ち、炎を纏わせてクリムの目の前に躍り出たのだった。

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