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第247話 悪魔の正体

ちょっとリアルの都合で、もしかしたら次回以降の更新ちょっと遅れるかもしれないです……

「チヨが元・人間……!?」

「まさか……他の悪魔達も皆……!?」


 悪魔であるチヨから齎された事実に、驚愕を隠せないダイバー達。

 彼女達はつい先ほど倒したばかりの『鱗の悪魔』と『長舌の悪魔』を思い出し、もしかしたらと嫌な想像をしてしまっていた。


「いや、ほとんどの悪魔はその辺の適当な魔物を強引に変化させたものだよ。その中で私は元・人間ってだけ」


 だが、その想像は他ならぬチヨによって半ば否定された。

 その言葉で自分達は元が人間である存在を殺した訳ではないのだとホッとする一行。

 ……しかし、ティガーはさらりとまたもや明かされた事実を聞き逃しはしなかった。


「……ちょお待て、悪魔は適当な魔物を変化させた言うたか? それって、ウチらがいくら倒しても、悪魔の数はすぐ補填されてまうっちゅう事か!?」

「!」


 先程彼女達が倒した悪魔は、いずれもそこらの魔物と比べて明らかに脅威的な能力を持っていた。

 【騎士の宣誓】と同じ意識の誘導や、クロコレオンよりも精度の高い透明化からの高速の舌槍による奇襲等、それらの能力によって命の危機に陥った事もあるティガーにとって到底聞き逃す事の出来ない爆弾情報だ。

 ティガーの確認に対し、チヨは少し考えた後に頷いた。


「そうだね……少なくとも、アイツにはそれが出来る。『祭器』がある限りは、ね」

「祭器……って、確かヴィオレットさんが破壊したあの大釜……?」

「アレは悪魔を作る為のもんやったっちゅうんか!?」


 次々と明らかになって行く悪魔の秘密に、ダイバー間で驚愕と動揺が広がる。

 もしも下層で見つかったあの大釜が悪魔を作る為の道具だったというのなら、行方不明になっているもう一つの祭器を早く見つけ出し、破壊しなければならない。

 しかし、今度はティガーの質問に対して、チヨは明確な答えを返してはくれなかった。


「作られた理由は厳密にはちょっと違うと思う。まぁ……結果的にはそういう用途で使われてたけど」

「なんや引っ掛かる言い方やな……? 悪魔以外の物も作りたかったみたいな……」

「正直、私もアイツが本当は何を作りたかったのかは知らないんだ。でも──強引にあの釜に押し込められて、悪魔にされた私を見て、『失敗だ』って言うくらいだ。求めてた仕上がりじゃなかったのは間違いないと思うよ」

「……」


 さらりと自嘲するように明かされたチヨの過去。その片鱗からも窺える悍ましい人体実験とその結果に、思わずダイバー達が言葉を失った。

 するとそんな反応を見たチヨは、慌てたように手を振りながら話題を変える。


「っと、こんな話をしに来たんじゃなかった! やめやめ! とりあえず、祭器に関してはもう無い筈だから大丈夫! 少なくとも、アイツがまた祭器を作るまでは悪魔が増える事はないよ!」


 恐らく自分の過去で気を使われるのが嫌なのだろう。

 チヨは矢継ぎ早に彼女がダイバー達に声をかけた本題を切り出した。


「それで、本題だけど……あなた達だけであの街に入るのは止めておいた方が良い。少なくとも、空中で戦えるヴィオレットちゃんがいないと勝ち目は無いよ」


 そう真剣な眼で断言するチヨ。

 正直それはあの魔都の姿を見たダイバー達も感じていた事である為、彼女の言葉を否定する事なくチヨの話に耳を傾ける。

 チヨは続けた。


「あの街に居る悪魔はね、正直()()()()()()()()()()()()()()んだ。やろうと思えばあたし一人で全滅させる事だってできる。だけど……()()()()()()()。あたしと違って、一対一の勝負だとか、フェアな戦いに興味は無いんだ。だから、あの街に入れば最後……空を飛ぶ悪魔達に魔法の絨毯爆撃を食らうだけだよ」

「……」

「ヴィオレットさんが居れば、状況は変わるんですか……?」


 容易に想像できるその光景に息を飲むダイバー達。

 先程『鱗の悪魔』と『長舌の悪魔』を倒したばかりではあるが、あの時と魔都で明確に異なる点がある。それが『天井の高さ』だ。

 天井が高ければ高い程、空を飛べる悪魔に対してダイバー達の攻撃が届く可能性は低くなり、上空からの魔法に抵抗が難しくなる現実。

 ヴィオレット一人でその絶望的な不利が覆るものなのか……そんな疑問がクリムから投げかけられる。


 すると、チヨはその問いに自信満々に頷いた。


「勿論、変わるよ。言ったでしょ? アイツらくらいならあたし一人で全滅させられるって。ヴィオレットちゃんは、あたしと同じくらい強いんだから当然同じ事が出来る」


 そう前置きしたチヨは、更にそこから具体的な展開を予言でもするかのように語り始めた。

 ヴィオレットが空中の悪魔相手に大立ち回りをすれば、一体一体は強くない悪魔達は地上のダイバー達に構ってられなくなる。

 いや、寧ろヴィオレットの方を脅威と見た悪魔は地上に逃げるように降りて来るだろう。真正面から戦えない以上、建物の陰からゲリラ戦を仕掛けた方がまだ勝ち目が見える。

 しかし、そうなれば……


「……そうなったら、あなた達も十分戦えるでしょ? だって、あたしがずっと教えてあげてたんだから──地上での悪魔との戦い方を、さ」


 そう言ってウインクして見せるチヨ。

 その態度から、一部のダイバーは彼女のここまでの行動に一つの確信を得る。


「! まさか、アンタがウチらとやたら戦いたがっとったんは……!」

「私達を鍛えて、悪魔達との戦いに備えさせるため……?」

「確かに、尻尾の攻撃や羽を使った回避なんて、他の魔物じゃなかなか体験できないし……」

「ただの戦闘狂じゃなかったのね」

「あはは……まぁ、戦いたかったってのも本音なんだけどね~」

「そこは本音だったんですね……」


 元・人間の悪魔『チヨ』が最初からこっそりと協力してくれていた事実。

 それを知り、僅かに残っていた警戒を解いていくダイバー達の中から、一人の女性ダイバーがおずおずと手を挙げた。


「あの……一つだけ、気になった事があるんッスけど……」

「ん? 何かな?」

「なんで最初にあたし達のドローンカメラを壊したんッスか? あれも必要だったんッスか?」


 そう言って女性ダイバー──高野恋が足元に転がるドローンカメラの残骸をチラリと見る。

 以前チヨもこれがどう言う物なのか、ヴィオレットのドローンカメラで配信の真似事をしていた以上知っている筈だ。

 その上でこれを破壊した意図について説明を求めると、チヨは今回何度目になるかもわからない爆弾発言を落とした。


「あぁ~、それの事か。……悪魔側のリーダーが、配信を通して皆の動きを監視してるからだよ」

「え……!?」

「そのカメラが生きてる内は、こんな話も出来ない。だから壊すしかなかったんだ」


 チヨの雰囲気がまた変わる。

 場の空気を明るくしようと被った仮面がまた剥がれ、その本心が隙間から滲みだす。


「……私はまだアイツにバレる訳に行かないんだ。やるべき事があるんだよ……こんな身体になる前からの──人間だった頃の、悲願なんだ。私は今、()()()()()()()()


 青白く染まった自身の手を見つめ、やがて拳を作り……視線がダイバー達に向けられる。

 深い決意と悲しみを長い長い時間をかけて煮詰めたような眼だった。……それが力無くフッと緩められ、チヨは一言謝った。


「──だから、皆の事を表立って助ける訳にもいかない。ゴメンね」


 彼女の悲願について、ついに明かされる事は無かった。

 しかし、その言葉に嘘が無い事を理解させるには十分過ぎるチヨの眼を見たダイバー達には、それ以上チヨの事情について追及する事は出来ず、代わりにティガーは一つの問いを投げかけた。


「……アンタにも事情があるんはよぉ分かった。最後にこれだけは聞かせてくれんか? 悪魔のリーダーは何者や。アンタがそこまでせんと戦えもしない相手なんか?」

「そうだね……絶対に口外しないって約束が出来るなら、話しても良いよ」

「……──あぁ、大丈夫や」


 周りのダイバーに順に視線を巡らせ、全員が首肯した事を確認したティガーが答える。

 するとチヨは珍しく緊張した様子で大きく深呼吸をし、口を開こうとしたその時──


「じゃあ……──待って! 街の方から悪魔達の気配が近付いてる……! 配信が中断されたのを怪しまれたのかも……!」

「──なんやて……!?」

「! ちょっと待って下さい……! 何なんですか、この魔力!? 他とはあまりにも……!」

「チヨちゃんが慎重になる理由、頷けちゃうなぁ……! これは、全力出したあたしでも無理そうだもん……」


 魔力感知が得意なクリムの表情が蒼褪め、春葉アトの首筋を冷や汗が伝う。

 それだけで誰が近付いてきているのかを察したダイバー達が、一斉に腕輪に指を添えた。


「──アトちゃん、悪いけどあなただけ残ってくれる? ひと芝居打つ為に」

「……オッケ~、あたしも折角なら顔くらいは拝んでおきたいもんね……!」

「! はるちゃん、危ないよ!?」

「大丈夫。……逃げるくらいの時間は稼いでくれるんでしょ? チヨ」


 春葉アトの確認に、チヨが首肯で答える。

 それを見た春葉アトは、百合原咲に目で訴えた。


『──ゆぅちゃんも、早く』

「……! ──【ムーブ・オン "渋谷ダンジョン"】……ッ!」


 そして、チヨと春葉アトだけが残された。

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