襲われたレーナ 6
「ガルルル……」
立ち上がったペッピーノが、全身の毛を逆立ててベアズリーに向って再び唸りだす。
いつもの優しい感じは消えて、全身が闘気に満ち溢れている。
「ペッピーノにとって、セルジョも恩人。助けようとしているのね」
殺されるかもしれないと分かっていても、見捨てることなどしないのだろう。
「ガルルル……」
ベアズリーに向かって威嚇するが、体の大きさが全然違う。
レーナもセルジョも勝てるとは思っていない。
「ペッピーノ! 戻って!」
「ガオーーー!」
いつものワンワンと違い、この時の咆哮はまるでライオンかトラのようだった。
「何? その咆哮!」
レーナもセルジョもその迫力に驚く。
「ガオーーー!」
咆哮しながら大きな爪でベアズリーの体に一撃を与えると、ベアズリーは怯んで木から離れた。
「ガオオオオ!」
ペッピーノが逃げるベアズリーを追いかけると、山の中へと消えて入っていった。それを追いかけようとしたので、慌てて呼び戻した。
「ペッピーノ! 戻って! 追っちゃダメ!」
ペッピーノが尻尾を大きく振って戻ってきた。
「よくやったわ! 勇敢だった!」
ご褒美にモフモフしてやると、ペッピーノは鼻先をレーナにこすりつけて喜びを表現した。
セルジョが木から降りてきた。
「ハアー、危ないところだった」
もう少し時間が掛かったら落ちていた。
「セルジョ! 無事でよかった!」
「ペッピーノに助けられたようなものだな。格好悪いや」
ペッピーノが追い払ってくれたので、セルジョはまったく戦っていない。
「何を言っているの? セルジョがいなかったら、私もペッピーノもやられていたわ! 格好良かった!」
レーナがセルジョに抱き着いて喜んだ。
「レ、レーナ……」
柔らかい肌、豊かな胸……。
女の子に感謝されて抱きしめられるという初めての経験に、セルジョの心臓は高鳴る。
「助けてくれてありがとう」
レーナに感謝されて、天にも昇る気持ちだ。
怖かったが助けに入って良かったと心から思った。
男らしく頼もしいところを見せられた。自分はレーナとペッピーノの命の恩人でもある。
これで間違いなく好きになってくれただろう。
(これでレーナは俺に首ったけ。このあとは家まで送って、その間に告白して、ああ、あの飲んだくれポンツィオと見栄っ張りゾーエに挨拶しなきゃならないな)
いずれはレーナと結婚する。そこまでこの短時間で妄想した。
「でも、どうして後ろを歩いていたの? とっくに帰っていったんじゃなかった? まさか、私の後ろをつけてきたわけじゃないわよね?」
ドキリとした。




