041 奈々絵VS優心
俺は、前にカーミルと一緒に来た事のある大きな日時計が目印の公園にいた。
《平和を壊す者》の1人、ミアと遭遇した際、バレットさんの指示で急いで公園まで行った。
スキル発動中だった為、そこまで時間がかからず公園までたどり着く事が出来た。
「結菜! カーミル! その怪我は!」
結菜は太ももを、カーミルは脇腹を怪我していた。
「あたしは大丈夫」
「わたしも致命傷じゃないから大丈夫だよ」
2人はそうは言ったが血の跡が結構あり、とても痛そうだった。
「勇崎君……」
七宮さんが驚きを隠せない表情で俺を見ている。
まあ、死んだと思ってた人が生きてたらそうなるわな。
「七宮さん、久しぶり」
俺はあまり七宮さんと話した事はない為、少しぎこちない感じになる。
「良かった……勇崎君……生きてたんだ。本当に良かった」
七宮さんは俺が生きている事を心から喜んでいる様に見えた。
「優心、気を付けて。奈々絵は操られてる――奴隷の首輪で」
結菜が険しい表情で俺に言う。
そうか、それで七宮さんは結菜とカーミルに奴隷の首輪を着けようとしてたのか。
「――奴隷の首輪か……」
なら、やる事は1つ。
奴隷の首輪を破壊するまでだ。
俺は腰に装備している複数の短剣のうち、2本を抜き、両手に持って構える。
「【光剛刃】――勇崎君! 避けて!」
七宮さんが放った光の刃を俺は避けずに短剣で弾いた。
「――【光の矢雨】」
俺は雨の様に降り注ぐ光の矢を両手に持った短剣で全て弾いた。
七宮さんのあんな辛そうな表情は初めてみる。
自分の意思ではないのに勝手に攻撃をしてしまう。
それは心に大きな負担が掛かるだろう。
俺も龍の国で奴隷の首輪を着けられ、命令で歩かされたが、それだけでも気分がいいものでは無かった。
自分意思には反して体が動くのは堪えるものがあった。
早く、解放してあげよう。
俺は一瞬で七宮さんとの距離を詰める。
七宮さんは俺の速さに反応したが、体が追いついてきてなかった。
短剣でローブによって隠れて見えない奴隷の首輪を4回斬りつける。
奴隷の首輪はバラバラになり、地面に落ちる。
「七宮さん、もう大丈夫――――――」
――――七宮さんの顕になった首元には小さな痣があった。
操れていた盗賊と同じ痣が――
「――【屈折光剛刃】」
俺は咄嗟に短剣で魔法を防ごうとする。
「なっ!?」
光の刃は突如軌道を変え、俺の左手首を切り裂いた。
「勇崎君!!」
「優心!!」
「ユウシン!!」
俺は痛みで顔が歪む。
左手は、皮一枚でどうにか繋がっている状態だった。
地面には俺の血が飛び散っていた。
腕からは血がどんどんと出てくる。
俺は、右手で切れそうな左手を手首に押さえつけた。
3人とも「なんで!?」って表情をしている。
七宮さんはスキルでも操られていたのか。
もっと気を付けておくべきだった。
腕の方がスキル〈死からの反撃〉の再生能力のおかげで治ってきた。
「【光刃】――避けて!!」
俺は七宮さんの攻撃を右手で左手首を押さえた状態で躱した。
もう、くっついたかな?
俺は左手の感じをグーパーして確かめる。
よし、問題ないな。
俺は再び短剣を構える。
「勇崎君――――左手――」
「七宮さん、大丈夫。もう治ったから」
我ながら思う。
凄い再生能力だな。
さて、どうするか?
スキルで操られているとなると、解除方法が分からない。
魔力切れにして拘束するか。
魔力がなければ魔法も使えないし、七宮さんのスキルは攻撃するものではないので安全だ。
「ごめん。七宮さん、悪いけど少し怪我すると思うけど我慢してね」
俺は先に謝っとく。
「いいよ。お願い、勇崎君、前みたいに私を助けて」
俺は短剣を1本、七宮さんに投げつけた。
と、同時に走った。
「【光壁】」
短剣は光の壁にあっさり弾かれる。
俺は魔法の無い横から七宮さんに接近し、短剣で撫でるように10回斬りつけた。
「魔力が減った!?」
七宮さんが驚いている。
俺は一旦距離を取った。
スキルがそろそろ切れそうだな。
どうする? カーミルに発動させてもうらか?
いや、七宮さんには悪いけど、こっちの方が確実だ。
「【光刃】――勇崎君!」
光の刃が俺の体を貫いた。
スキルの切れた俺に七宮さんの魔法は避ける事は出来なかった。
俺は後ろに倒れていく。
「嘘! 勇崎君! 勇崎君!」
悪いな、七宮さん――
七宮さんの取り乱した声が聞こえる中、俺の意識は消えていった。
――――――〈死からの反撃〉発動。
俺は立ち上がり、死ぬ時に落としてしまった短剣を拾う。
「良かった! 勇崎君」
七宮さんが安堵した表情で言う。
俺はその隙に七宮さんを間合いに入れた。
「【光纏】」
俺は七宮さんの纏った光をすぐに打ち消し、そのまま短剣で数十回斬りつけた。
もちろん、大きな怪我をしないように気を付けてだ。
「【光刃】――危ない!? あれ?」
七宮さんは俺に攻撃をしようとしたが、魔法が発動しなかった。
俺は七宮さんの腕をすぐに捕まえた。
「勇崎君!?」
七宮さんは戸惑っている。
よく見たら、俺が短剣でたくさん斬りつけたせいで、服はボロボロで見えちゃいけないところが色々と見えていた。
そして、体には俺が付けた浅い切り傷がたくさんあった。
「七宮さん、ごめん」
俺は七宮さんのあられもない姿を見ないように目を反らし、謝った。
「ありがとう、勇崎君」
七宮さんの声は嬉しそうだった。
てか、結菜は服がビショビショで張り付いていて下着が見えてるし、カーミルに至っては全裸だった。
あれ、この状況、誰かに見られたらまずくない?
これ、俺が女の子3人を襲ってるみたいな感じじゃん。
早くどうにかしよう――――
「――【雷獣牙】」
俺は咄嗟に攻撃を防いだ。
「――――ミアちゃん!」
七宮さんが《平和を壊す者》の一員の名前を口にした。
俺達の前には藍色の髪に猫耳のある幼女がいた。
身長はカーミルより少し小さく、顔つきも少し幼い感じだった。
さっきゲースドの屋敷で会った時に纏っていたローブはボロボロになっていた。
「……お前がミアなのか?」
「そうだよ。たしか――ユウザキだったかな」
「ああ、バレットさんはどうした?」
「ユウザキと一緒にいた人? ――――倒したよ」
「なっ!?」
バレットさんがやられただと……
そんな……
「ナナエは渡さないよ」
ミアはナナエに近づこうとする。
「させるかっ!」
俺はミアの腹に蹴りを入れて吹き飛ばした。
「ミアちゃん!?」
七宮さんがなぜかミアの事を心配する。
なぜだ?
いや、今はミアを倒しバレットさん所にいく事が優先だ。
ミアが蹌踉めきながら立ち上がる。
バレットさんとの戦闘で結構消耗してるのか?
「【雷獣爪】」
ミアは手に雷を纏い、引っ掻くように攻撃をしてきた。
俺はその手を掴んで攻撃を止めた。
「!?」
ミアは目を見開いて驚いていた。
俺はそのままミアに一撃を入れた。
ミアは吹っ飛び、地面に倒れる。
「勇崎君! 待って! 殺さないであげて!」
七宮さんが俺とミアの間に割って入る。
「七宮さん――――」
「おいおいおい、ずっと見てたけどよお、お前は命令の1つもろくにこなせねえのかよ。使えねえな!」
俺達の前に身長2mはあるスキンヘッドの巨漢が現れた。
「――ヴァイス様」
ミアは青ざめた表情で巨漢を見て言った。
巨漢――ヴァイスは倒れているミアを片手でつまみ上げる。
「つかえねえ奴はこうだ」
ヴァイスはミアを地面へ叩きつけた。
「仲間じゃないのか?」
気付いたら、俺はヴァイスに聞いていた。
「仲間だー!? なわけあるかよ。ちょっとスキルが便利だから使ってやってあげてんだよ」
ヴァイスはボロボロのミアを再びつまみ上げると、服をすべて引き千切った。
「こいつはオレの奴隷なんだよ!」
ミアの首には奴隷の首輪が着いており、体中に無数の生傷や痣があった。
「こいつが使えねえからよぉお! オレが仕事をするはめになんだよ!」
ヴァイスはミアを投げ捨てる。
俺はミアが地面に落ちる前に受け止めていた。
「――なんで……」
ミアは理解できないって顔で俺に聞く。
「体が勝手に動いた」
俺はミアを優しく地面に寝かせた。
そして来ていた上着を上から掛けてあげた。
何やってるんだろうな。
バレットさんに、敵には容赦するなって言われて覚悟したつもりだったのに――まだまだ駄目だな。
「おいおい、オレの奴隷に何勝手にやってんだよ! まあいい、お前ら全員今日からオレの物にしてやんよ!」
俺はヴァイスに短剣で斬りかかる――――
「【超重力】」
「ぐはっ!」
俺は急に地面に引っ張られる様に倒れ――貼り付けにされたように動けなくなった。
強い。
今の〈死からの反撃〉じゃ、ヴァイスの魔法を無効化する事は出来ないか。
でも、戦うしかない。
俺が負けたら、みんな助からない。
だから、負けるわけには――――
「弱いな――」
俺は気合で立ち上がる。
気を抜いたら地面にまた貼り付けにされそうだった。
〈死からの反撃〉が切れるまで粘れば、勝機はある。
「――気が変わった。てめえはここで殺す――【超加重】」
あっ――――
「優心!!」
「ユウシン!!」
「勇崎君!!」
「――――!」
「ハハハ、ぐしゃぐしゃだな! これが人だったて誰がみてもわかんねえよな! ハハハ!」




