040 奈々絵VS結菜、カーミル
結菜とカーミルの前に現れたのは、任務の目的にして、結菜の親友――七宮奈々絵だった。
「結菜ちゃん、無事で良かった――【光刃】」
「! 【龍炎壁】」
「えっ!?」
突然、奈々絵は結菜とカーミルに向けて魔法を放ってきた。
それを、カーミルは咄嗟に魔法で防ぐ。
結菜は親友の奈々絵が突如攻撃をしてきた事に驚きを隠せないでいた。
「奈々絵、どうしたの!?」
「――逃げて、お願い、私から――【光の弓】」
奈々絵は光の弓を魔法で作り出し、構える。
「ユイナ、一旦に逃げよう」
「待って、何があったの!? 奈々絵!」
結菜はカーミルの提案を無視し、奈々絵に必死で問いかける。
「ユイナ! 危ない!」
奈々絵は結菜に向けて光の矢を放った。
「痛っ!」
結菜は奈々絵の攻撃を躱しきれず、腕にかすり傷が出来る。
「お願い! 逃げて! 私、操られているの!」
「もしかして――奴隷の首輪……」
「わたしもそう思った」
結菜とカーミルは奈々絵の言葉を聞いてすぐに心当たりが出てきた。
「――うん、そうだよ」
奈々絵はローブの襟を下げ、首元を見せた。
首元には奴隷の首輪があった。
結菜とカーミルは奴隷の首輪見て嫌悪感を抱いた。
「【光刃雨】――危ない! 逃げて!」
「【龍炎壁】」
奈々絵が魔法を放ち、光の刃が降り注ぐ。
カーミルは、それを頭上に炎の壁を作る事で防ぐ。
「ユイナ、一旦逃げてバレットさん連絡しよ」
「そうだね、カーミルちゃん」
「【水縛】――ユイナ!」
「うん! 【加速】!」
カーミルが水の魔法で動きを拘束し、2人は逃げる為に走った。
「【剛力】――【超加速】」
奈々絵は水の拘束を解き、走って逃げる結菜とカーミルの前に高速で移動した。
カーミルが「――速い」と呟く。
「奈々絵……」
「ごめんね……」
結菜、カーミルと奈々絵は膠着状態になっていた。
「ユイナ、逃げるのは厳しそう」
「そうだね。カーミルちゃん」
「それに本気出さないと危ない。ユイナ、これ持ってて――――【龍炎纏】」
カーミルはユイナに燃えて困る物をいくつか渡すと、体に炎を纏った。
結菜は一瞬、マジックポーチ内にある大剣を使おうかと思ったが、まだ練習を初めてまもなく拙い所も多々ある為、慣れた素手でいくことにした。
「【百光刃】――防御して!」
奈々絵が無数の光の刃を放つ。
「【龍炎壁】」
カーミルが炎の壁を作り、攻撃を防ぐ。
「【加速】――【剛力】」
結菜が炎の壁の横から飛び出し、奈々絵に攻撃を仕掛ける。
「【光盾】――【光小刃】」
奈々絵は結菜の攻撃を魔法で防ぎつつ、小さい光の刃を太ももに放った。
「っ! 【加速】」
結菜は咄嗟に魔法で移動速度を上げ、距離を取った。
「結菜ちゃん!」
「ユイナ!」
「大丈夫……」と結菜は言いながら、出血している太ももを片手で抑えていた。
カーミルが結菜を庇うように立つ。
「ユイナ、後はわたしが戦う」
「あたし、まだ――」
「お願い、無理しないで」
あの怪我の状態では、万全な動きか出来ず、さらに怪我を負ってしまう。
結菜は引き下がり、ポーションを1つ取り出し、半分を傷口に掛け、もう半分を飲み干した。
「結菜ちゃんごめん――私……」
奈々絵は今にも泣き出しそうな顔で謝る。
「奈々絵は悪くないよ」
結菜は痛みを堪え、無理に笑顔を作る。
「【龍炎弾】」
カーミルは炎の球を奈々絵に向けて放つ。
「【光壁】」
奈々絵はそれを光の壁を張って防ぐ。
「【百光刃】――防いで!」
奈々絵は光の刃を無数に放つ。
「【龍炎壁】」
カーミルは光の刃を避けてしまうと、後ろの結菜が被弾してしまう為、魔法で受ける。
「【龍炎縛】」
カーミルは炎の魔法で相手を拘束しようする。
「【光纏】」
奈々絵は光を体に纏う事で、拘束されるのを防いだ。
カーミルが「強い……」と苦虫を噛み潰した様な表情をする。
「【光刃の暴風雨】」
奈々絵が魔法を放つ。
無数の光の刃が暴風雨のようにカーミルと結菜に襲いかかる。
カーミルは一瞬、【龍炎壁】を自分たちの全面に囲うように展開して防ごうと思った。
しかし、その様に防いだとして、そのまま奈々絵が連続で全面攻撃の魔法を放ってきたら、【龍炎壁】が解除できず、中にいる結菜が炎の熱さで危険にさらす事になる為、違う手段を取る事にした。
「【龍炎暴風】」
嵐の様に凄まじい炎の暴風が結菜を避けるように吹き荒れ、光の刃を全て焼き払った。
「【雨降】」
カーミルは自分の放った【龍炎暴風】により、上昇した辺りの温度を下げる為、別の魔法を放った。
公園一帯に小雨が降り温度が下がる。
急激に温度が下がった事により、霧が発生する。
「【暴風】」
カーミルはその霧が視界の妨げになると思い、すぐに魔法を使い吹き飛ばした。
炎の耐性が高いカーミルは大丈夫だが、結菜達にとっては危険な温度だった。
「【閃光】――見ないで!」
奈々絵は目眩ましの為に強烈な光を放った。
警告をしたが、到底間に合うはずもなく、カーミルはその光を直視してしまった。
「【光刃】――防御して!」
カーミルは強烈な光を見たことにより視界がはっきりしなかった。
「【龍炎壁】」
しかし、奈々絵の言葉に反応し魔法を発動し、攻撃を防ぐ事が出来た。
カーミルの視界はだんだんと回復してきた。
「良かった――【屈折光剛刃】」
奈々絵が光の刃をカーミルに向けて放った。
「【龍炎壁】」
「だめえええええええええ! 避けて――――」
奈々絵は必死に叫んだ。
「!」
光の刃は突如軌道を変え、炎壁が無い横からカーミルの脇腹へと刺さった。
カーミルは出血する脇腹を抑えながら倒れる。
「カーミルちゃん!」
結菜が叫ぶ。
幸い、カーミルは炎を纏っていた為、致命傷にはならなかったが、戦闘を続行する事は不可能だった。
カーミルが纏っていた炎が消える。
服はすべて燃え尽きており、まる裸になっていた。
結菜は、ポーションにより多少良くなった傷を庇いながらカーミル元へ行く。
「カーミルちゃん! 死なないで!」
結菜は必死にカーミルの傷口にポーションを掛ける。
「……大丈夫。致命傷にはなってないから」
奈々絵はローブの下に身に着けているマジックポーチから、奴隷の首輪を2つ取り出した。
奴隷の首輪を見た2人の表情が青ざめる。
結菜はゲースド・ロエリロードに、カーミルはドラーゴ・ケーニヒの事を思い出した。
特に結菜とって奴隷の首輪はトラウマだ。
「お願い――逃げて」
奈々絵は奴隷の首輪を手にしならが結菜とカーミルに迫ってくる。
2人には逃げる気力は残っていなかった。
奈々絵が2人の首に奴隷の首輪を付けようとする。
「「……助けて優心」」
2人が同時にここにいない男、勇崎優心が助けに来ることを願った。
キン! キン!
2つの金属音がし、奈々絵の手にしていた奴隷の首輪が2つとも地面に落ちた。
奈々絵は咄嗟に2人から距離を取った。
「大丈夫か? 助けにきたぞ」
現れたのはここにいないはずの男、そして2人が助けを願った男――――勇崎優心だった。




