039 別行動
俺とバレットさんは、街の中に潜んでいる《完全なる平和》の人に会いに行くところだ。
《完全なる平和》は、各地に情報収集などの為の人員がいるらしい。
普段は、冒険者や宿屋の店員などに成り済ましている。
まあ、一言で言うと、スパイだな。
バレットさんは、たくさんあるお店の並んでいる中の1つへと入っていった。
俺もそれに付いていく。
「ポーションを4つくれ、いや、やっぱ3つでいいや」
バレットさんは店の店員に言う。
店員はポーションの入った小瓶を3つ持ってくる。
バレットさんは支払い済ますと店を出る。
俺はバレットさんに付いてしばらく歩いていると、泊まっている宿屋の前まで来ていた。
バレットさんは宿の中に入っていく。
俺は黙って付いていき、一緒にバレットさんの部屋に入った。
「あれ? バレットさん、誰とも会って無ないのに帰ってきてよかったんですか?」
「心配すんな、もう情報は貰った」
バレットさんは、さっき買ったポーションの1つを飲み干した。
「バレットさんなんで今、ポーション飲むんですか? ――あっ!?」
ポーションが無くなると、中には何かかが入っていた。
バレットさんはそれを取り出す。
取り出した物は石の様な物だった。
その石をバレットさんが砕くと、中から紙を小さく折りたんだ様な物が出てきた。
バレットさんは紙を広げ内容に目を通している。
「嫌な予感がすんな……【着火】」
「! バレットさん、燃やしちゃって良かったんですか?」
「もう把握した。それに、そのまま持っていてそれが誰かに見られたらまずい事になる時だってある。だから、処分すんだ」
なるほど、情報の扱いは大事って事か。
「ユウザキ。ナナミヤの件だが、2日前、ゲースドの屋敷付近での目撃情報が最後で途絶えてる」
「えっ!? どうゆう事ですか」
「誰かに捕まってる可能性もあるって話だ。とりあえず、ゲースドの屋敷に行ってみっぞ」
★★★
俺とバレットさんはゲースドの屋敷内を探索していた。
中は、焼けており、酷い状態だった。
外も酷かったが。
まあ、火を放ってこんな状態にしたのは俺達だ。
「【氷結】」
なっ――――――――――
――――――――――――――――〈死からの反撃〉発動。
「――来るぞ」
通路の角から、ゾロゾロと人が出てきた。
バレットさんが「盗賊か?」と呟く。
俺は短剣を抜く。
「待ってくれ俺達は戦う気は――【雷撃】」
盗賊はそんな事をいいながら魔法を打ってきた。
「【氷壁】――――奴隷か?」
バレットさんが盗賊の攻撃を防ぐ。
龍の国でたくさんの奴隷にされた人たちと戦った時もこんな感じだったな。
本人は攻撃したくないのに体が勝手に動いてるって感じだ。
「ユウザキ、そいつらには奴隷の首輪があるはずだ。殺さないように攻撃してみろ」
「バレットさん、了解です」
盗賊達の首元は服で隠れて見えなかったが、その下には奴隷の首輪があるとの事だった。
それじゃあ、首元の辺りを短剣で攻撃してみるか。
俺は、1人の盗賊の首元を見えない奴隷の首輪を狙って斬りつけた。
あれ? 手応えがない。
服が切れ、盗賊の首元が見える。
――――首元には何も着いていなかった。
えっ!? どういう事だ。
「ユウザキ! 気抜くな! とりあえず、全員を確認しろ!」
バレットさんは他の盗賊と戦いながら俺に言う。
俺はバレットさんに言われた通り、全員の首元を確認した。
盗賊達は誰も奴隷の首輪を着けられていなかった。
「ユウザキ! 殺さないように何人か攻撃してみろ」
俺は、3人の盗賊にそれぞれ数回、軽く斬りつけた。
「呪いでもねえか――――と、なると――スキルか。厄介だな。ユウザキ、全員殺すぞ――【氷結の大剣】」
バレットさんは戦っていた盗賊の1人を魔法で生み出した大剣で切り捨てた。
「バレットさん!?」
「解除方法が分からない。生かして置いておくのは非常に危険だ」
「分かりました」
俺は盗賊の1人の首を刎ね飛ばした。
「悪いな」
「待ってくれ、俺は戦いたくないんだよ――【風弾】」
「悪いな」
魔法で攻撃してきた男の首を斬り飛ばす。
バレットさんは大剣で次々と盗賊を斬り伏せていった。
俺も次々と盗賊の首を刎ねていった。
1分もしないうちに盗賊は全滅した。
正直操られている人を殺すのは心にくるものがあった。
バレットさんは盗賊達の物を漁ったりしていた。
「ユウザキ、あんま気にすんな。こいつらは盗賊だ。どうせ盗みとか殺しとかをしてる」
「…………」
「でもな、ユウザキ、時には仲間と殺し合いをしなくちゃいけない事もある。覚悟はしとけよ――――つっても、無理だろうな」
俺が結菜やカーミルと――――
「ユウザキ! ちょっとこれ見てみろ」
俺はバレットさん言われて、死体の首元を見る。
「なんか痣がありますね」
「他のも見てみろ」
確認すると全ての死体に小さな痣があった。
「この痣、なんですか?」
「キスマークじゃねえか?」
「キスマークって口紅の後じゃないんですか?」
「何言ってんだ、童貞」
俺は「童貞は関係ないでしょう」とバレットさんに言ったが無視された。
「おそらく、これがこいつらを操っていたスキルに関係してそうだな」
「――そこまで知られたら返す訳には行かなくなっちゃった、ごめんね」
幼い子どもの声がした。
「「誰だ!?」」
俺とバレットさんは咄嗟に振り向く。
「こんにちは、ぼくはミア」
そこには黒いローブを纏い、フードを深く被った子がいた。
身長はカーミルより少し小さいくらいだ。
男の子か女の子かは分からなかった。
「《平和を壊す者》か」
バレットさんがもの凄く怖い声で聞く。
「そうだよ」
「ユウザキ、耳を貸せ!」
バレットさんは俺に結菜とカーミルの今いる場所とそこに急いで行くようにと言った。
「いかせない――」
「そうはさせるか! 【氷結壁】――走れ! ユウザキ!」
俺はバレットさんを背に、結菜とカーミルの元へと走った。
★★★
結菜とカーミルは街の食べ物の屋台がたくさんある通りを歩いていた。
2人の手には、串焼きがあった。
「この串焼き、凄く美味しい」
「美味しいよね。前、ユウシンと一緒に食べたんだ。今度はあれ食べよう」
カーミルはりんご飴び屋台を指差す。
結菜は「いいよ」と言う。
2人はりんご飴を1つずつ買う。
カーミルが小さな口でりんご飴を齧る。
「甘くて美味しい」
「なんか夏祭りみたい」
結菜が日本の事を思い出し、呟く。
「ナツマツリ?」
「カーミルちゃん、夏祭りっていうのは、あたし達のいた国である、夏にするお祭りだよ。ここみたいに屋台がたくさん出るんだよ」
「そうなんだ、わたし行ってみたいな」
「その時はあたしが案内してあげる!」
「ありがとう、ユイナ」
結菜とカーミルの2人はそれから、お腹いっぱいになるまで屋台を食べ歩いた。
「あたし、もう食べられない」
「わたしも」
2人は街の公園にあるベンチに腰掛けていた。
公園の真ん中には日時計があり、子供達が元気な声を上げながら遊んでいた。
「ユイナ、ユウシンはここに来る前ってどんな感じだったの?」
「う~ん……優心には、三城と十連寺っていう仲の凄くいい友達といつも一緒にいたよ」
「そうなんだ、ユウシンの友達か……会ってみたいな」
「あたし達が召還された城にいるからいつか会えると思うよ」
「ねえ、ユイナ、ユウシンはここに来る前は裸になったりしてなかった?」
結菜はプッと吹き出す。
「大丈夫だよ。あっちじゃそんな事、全然無かったよ」
「ねえ、ここに来る前にユウシンを好きな子って、いた?」
カーミルはさっきと変わって真剣な表情で聞く。
結菜は、優心の事を好きな人を知っている。
それ言うか言わないかしばらく悩んだ結果、名前を伏せて、言うことにした。
「あたしの親友でね、優心の事を小さい時から好きな子がいるの」
結菜は続けて話す。
「その子は、優心が死んだと思ってる。その子は告白出来なかった事を酷く後悔していた――」
「そうだったんだ。だから、ユイナはユウシンに気持ちを伝えられないんだね」
「カーミルちゃん! あたしは別にその優心の事――」
「いいよ、言わなくてもユイナを見てたら分かるから」
「あたしは――」
「ユイナ、わたしは優心の一番になりたい。今のユイナには負けたくない」
「カーミルちゃん……」
「ユイナの友達に申し訳ないって気持ちも分かるよ……」
「…………」
「…………」
2人は無言になる。
そして、公園には結菜とカーミル以外、誰も人がいない事に気づく。
「あれ……まだ、お昼だよね。なんで人がいないの?」
「なんかおかしい。ユイナ、気を付けて」
公園の奥から2人の方へ向けて、黒いローブを纏った人が歩いてくる。
結菜とカーミルはベンチから立ち上がる。
「【身体強化】【魔法強化】」
「【超身体強化】【超魔法強化】」
2人は強化魔法を自身に掛け、戦闘体制になる。
黒いローブの人物は結菜とカーミルから10メートルほどの距離で立ち止まった。
顔はフードを深く被っており、顔は分からない。
「結菜ちゃん……」
ローブの人物が言った。
「えっ!?」
その声に結菜はとても聞き覚えがあった。
黒いローブの人物がフードに手をかける。
「奈々絵……」
黒いローブの人物は――――七宮奈々絵だった。




