042 優心の死
――――――――――――優心は死んだ。
ヴァイスの魔法に耐えきれず押しつぶされ、人の原型を留めていなかった。
「優心!!」
「ユウシン!!」
「勇崎君!!」
結菜、カーミル、奈々絵は叫ぶ!
「――――!」
ミアは唖然としていた。
「ハハハ、ぐしゃぐしゃだな! これが人だったて誰がみてもわかんねえよな、ハハハ!」
ヴァイスは大きなトマトを投げつた後の様な死体を見て笑っていた。
「優心! 嘘でしょ! ねえ!」
「ユウシン! 嘘だよね…………なんで……」
「嘘……勇崎君が……」
3人は優心の死体の前で酷く取り乱していた。
「勇崎君、お願い! 生き返って! お願い!」
奈々絵は必死にスキル〈絶対蘇生〉を使用するが、優心が生き返る事は無かった。
〈絶対蘇生〉は、死体の損傷が激しいと蘇生する事が出来ない。
当然、人の原型を留めていない様な死体は無理だ。
優心はスキル発動中に殺されてしまった為、〈死からの反撃〉は発動しない。
「お前らうぜえな!! 【重力】!!」
ヴァイスの魔法で重力が強くなり、結菜、カーミル、奈々絵、ミアの4人は地面に貼り付けられた様に動けなくなった。
「喋ったらあいつみたいに殺してやるかな!」
ヴァイスはマジックポーチから奴隷の首輪を3つ取り出す。
それを、優心の死体の前で動けなくなってる結菜、カーミル、奈々絵の3人の首に取り着けた。
「終わったし帰るか――――奴隷に服はいらねえよな!」
突然、ヴァイスは声を荒らげた。
結菜の服を全て引きちぎる。
それが終わると奈々絵のボロボロの服を全て引きちぎった。
「よしよし、それでいい。『おめえら、付いて来い!』」
ヴァイスは、結菜、カーミル、奈々絵、ミアの4人に奴隷の首輪の効果を使い命令する。
裸の4人はヴァイスの後に付いていく。
ミアだけは、優心の上着を着ていた。
「おい! ミア! てめえ、何着てんだよお!」
ヴァイスはミアの着ていた上着を引きちぎり、蹴り飛ばした。
と、――――その時だった。
「――【永久氷結牢】」
ヴァイスは魔法によって、一瞬で氷漬けになる。
「お前ら、大丈夫か!」
ヴァイスに魔法を放った、くすんだ茶髪の男――バレットが現れた。
「あら――酷い事になってるわね……」
「……ですね」
そして、エメラルドグリーンの髪のエルフの女――リザと、青い長髪の男――ドランも一緒に現れた。
バレットはゲースド屋敷で優心が結菜達の元へ向かった後、ミアと戦いながら、リザとドランにロエリロード領に急いで来るよう連絡をしていた。
バレットとミアの戦闘は、バレットが優位に立っていた。
ミアはこのままだと負けると判断し、バレットから逃げだした。
その後、奈々絵を回収して一旦逃げるつもりだった。
「クソがああああああああああああああああああ」
ヴァイスを閉じ込めている氷が砕けた。
「おめえら殺す! 絶対に殺す!」
ヴァイスは、バレット達を殺意の籠もった目で睨みつける。
「【極光牢】」
リザの放った魔法は、ヴァイスをオーロラの様な光で包み込み、動きを封じる。
「クソがあああああああああ――【超重力】!」
ヴァイスは重力魔法で光の魔法を地面に吸い付け、拘束を解除する。
「【龍水の裁き】」
ドランは、ドラゴン固有である水魔法の1つを放つ。
膨大な水がヴァイスを襲いかかる。
「【金剛】」
ヴァイスは体を硬化し、ドランの魔法を受ける。
ドランの魔法が終わると、ヴァイスは所々に浅い傷が出来ていた。
「その強さ、てめえら! 何者だ!」
ヴァイス問いに、誰も答えない。
「【龍水縛】」
ドランが魔法でヴァイスを動けなくする。
「【氷結の大剣雨】」
「【極光の矢雨】」
そこに、バレットとリザの2人が空から降り注ぐ魔法を放つ。
「【金剛】――がああああああああああああああああ」
ヴァイスが魔法で体を硬化した直後、触れたモノを凍りつかせる大剣とオーロラの矢が無数に降り注ぐ。
「――奴の強さ、十中八九《平和を壊す者》の幹部だろう」
バレットの意見にリザとドランは頷く。
「てめえらのその強さ――――《完全なる平和》の幹部か!!」
バレットとリザの攻撃を耐えきり、至る所に傷を負ったヴァイスが叫ぶ。
「クソ! 《完全なる平和》の幹部と3体1はだりいもんがあるぜ! 【超重力】」
「【反重力】」
ヴァイスが広範囲に放った重力を増加させる魔法を、リザが重力と反対の力が掛かる魔法で軽減する。
「めんどくせえな! 奴隷を回収して帰えったらボスに報告だ!」
ヴァイスは、ミアを雑に拾い上げ脇に抱える。
そして、結菜、カーミル、奈々絵を回収しようと近寄る。
「させっかよ!」
バレットは先程大量に降らした氷結の大剣の1本を地面から引き抜き、投げつける。
それをヴァイスが手で振り払う。
「【永久氷結牢】」
バレットはその隙にヴァイスを氷漬けにしようとした。
「クソが! てめえら次は絶対殺してやるからな!」
ヴァイスは完全に氷漬けにされる前――僅かの間にミアと一緒に姿を消した。
「チッ! 転移か!」
バレットは舌打ちをする。
「……幹部なら転移の魔道具を持ってても、おかしくないでしょう」
リザの言葉に、ドランが「ですね……」と言う。
「バレットさん! リザさん! 優心が……」
結菜が優心の死体の前で泣きながら言う。
「リザさん、蘇生魔法でユウシンを……」
カーミルがボロボロと涙を零しながら、リザに懇願する。
「――――カーミルちゃん…………無理よ……」
リザは悔しそうに諦めの表情を浮かべていた。
蘇生魔法では、あの状態の死体から蘇生する事は出来ない。
「ユウザキ……」
バレットは唇を噛み締めた。
「ユウザキ君……僕は龍の国を救ってくれた君に……」
ドランは天を仰いだ。
「ユウシン……わたしはまだユウシンと一緒にたくさんお話したかった。また、一緒に遊びに行きたかった! ユウシンと――――」
カーミルは悲しみで涙が止まらなかった。
「なんで! ねえ! 優心! お願い! いつものように生き返ってよ! ねえ……優心……あたしまだ優心に……」
結菜は顔が涙でくしゃくしゃになっていた。
「勇崎君……私……勇崎君に伝えたい事があるの……話したい事がたくさんあるの……なんで……折角、会えたのに……こんな……」
奈々絵はボロボロと大粒の涙を零しながら吐露した。
そして、奈々絵は何度も何度もスキルを使用し優心を蘇生させようとした。
諦める事が出来なかったからだ。
「お願い! 生き返って! お願い!」
奈々絵はスキル使用し続けた。
スキルを使うのを辞めたら終わってしまう気がした。
「私はどうなってもいいから! なんだってあげるから! 命だって――――」
奈々絵は泣き叫んだ。
――――その時だった。
奈々絵と優心の死体が淡く光初めた。
だんだんとその光が強くなる。
他の5人はそれをただ呆然と見ていた。
奈々絵は何か大事なものが急激に減っていくような感覚がした。
さらに光が強くなる――――そして、弾けた。
奈々絵の黒髪は色が抜け落ち、真っ白になっていた。
そして、ぐちゃぐちゃの死体は無くなっており、代わりに――傷1つ無い全裸の男――――優心の姿があった。
「勇崎君!!」
裸の奈々絵は優心に思いっきり抱きついた。
「えっ!? 七宮さん!?」
優心は蘇生されたばかりで状況を飲み込めていなかった。
「優心!!」
「ユウシン!!」
裸姿の結菜とカーミルも、優心に飛び付くように抱きついた。
「結菜!? カーミル!?」
優心は裸の結菜、カーミル、奈々絵に抱きつかれあわあわとしていた。
「勇崎君! 私――――勇崎君の事がずっと前から好きでした――――」
奈々絵は優心に告白をした。




