022 宿屋にて
俺、結菜、カーミル、リザさんの4人は宿屋に隣接されている食堂で晩飯を食べていた。
「異世界に米は無いかと思ってたぜ」
俺は今、天丼を食べていた。
「あたしは城にいる時何度か食べたよ」
結菜がカツ丼を食べている。
「この米っていうの美味しいね」
カーミルは初めて米を食べたらしい。
ちなみにカーミルは今、親子丼を食べていた。
「カーミルちゃんもユイナちゃんもよく食べるわねー」
現在、カーミルは丼物を8杯目、結菜は、4杯目を食べていた。
カーミルがたくさん食べるのは元々知っていたが、結菜もあんなに食べるとは思わなかった。
知らなかった。
結菜の小さい体のどこに、丼4杯が入るんだ?
リザさんの食べる量は俺と同じくらいだった。
俺はいつもの様にカーミルに天ぷらを1つ差し出した。
カーミルは「ありがとう」と笑顔になる。
結菜がジッと見てきた為、「結菜もいる?」と聞くと頷いた為、天ぷらを1つあげた。
「ありがと」と結菜は恥ずかしさと嬉しさが混ざっているような表情で言う。
あのジッと見てくる感じ、昔を思い出すな。
結菜はあの時なんで俺を見てきたのだろう?
俺が好きで見てた訳じゃないって事は、今ならなんとなく分かる。
「あら、ユウシン君。モテモテだねー」
リザさんが俺を見ながらニヤニヤしている。
「そ、そんな事無いですよー。ただ、分けてあげただけじゃないですか」
俺は口では否定したが内心はちょっと浮かれていた。
「ユウシン君ってすぐ顔にでるよねー。カーミルちゃん、ユイナちゃん」
カーミルと結菜の2人はうんうんと頷いている。
俺ってそんな分かりやすい?
それからも4人で他愛もない会話をしながらご飯を食べた。
最終的にカーミルは10杯、結菜は5杯を食べきった。
ちなみにリザさんと俺は1杯だ。
★★★
宿の廊下で寝る部屋についての話になった。
「私はカーミルちゃんと寝るから、ユウシン君はユイナちゃんと寝てねー」
俺と結菜が「えっ!?」と声をあげる。
結菜と二人っきりだと……嬉しいけど、気まずい。
ベッドは2つあるはず――いや、今までのパターンだと1つだ。
「てか、リザさん部屋2つしか無いんですか?」
「あるけど、ユウシン君1人じゃ何も出来ないでしょ」
俺は魔力が無いから部屋にある魔道具を使うことが出来ない。
「わたし、ユウシンとユイナと一緒に寝る」
「だーめ、カーミルちゃんは私と寝るのー」
カーミルはリザさんに連れて行かれる。
カーミルが助けてって感じで視線を送ってくる。
カーミルは一度、リザさんと一緒に寝たそうだ。
その時に抱き枕のようにされて大変だったそうだ。
リザさんに抱き枕。
あの大きな胸に――俺が変わりに――
結菜とカーミルの冷たい視線が俺に向けられる。
おっと、顔に出てたようだ。
俺と結菜は今夜寝る部屋に入った。
ベッドは1つだけだった。
しかも、1人用と思われる大きさだった。
「ベッド1つしか無いね」
「ああそうだな」
俺と結菜は部屋の中で1分ほど立ち尽くしていた。
「とりあえず、体拭く用のお湯、用意するね」
結菜は部屋に置いてある木で出来た大きなバケツの中を魔法で作った水で満たす。
その中に魔法で小さい火の玉を作り、入れていく。
火の玉を1つ入れることに手で温度を確認している。
「お湯出来たよ」
「おう、ありがと。結菜が先使っていいよ。俺、部屋から出とくから」
「ありがと。先に使うね。いいよ。わざわざ部屋から出なくて。後ろ向いとくだけで」
俺は「お、おう」と後ろを向いて結菜を見ないようにする。
結菜が服を脱ぐ音が聞こえてくる。
後ろで結菜が体を拭いている。
一瞬見たいと思ったが、俺を信用しているから部屋にいたままで良いと言ってくれたんだ。
それを裏切る用な事は出来ない。
せっかく友達になれたんだ。
その関係を崩したくない。
てか、そもそも故意に見るのは良くない。
「終わったからこっち向いていいよ」
結菜は冒険者の装備から、ラフな短パンとTシャツの様な服へ着替えていた。
それから俺は体を拭いていった。
その間、結菜は後ろ向いていた。
俺は着替え終えると結菜に「もう大丈夫だぞ」と知らせた。
結菜が俺を見て口を開く。
「せめて、シャワーがほしいね」
「ああ、森の中の家にはあるがこの宿屋は無いもんな」
森の中の家にはシャワーのような魔道具があった為、非常に快適であった。
「お城もシャワーはあったよ」
「城にもあるのか。それは快適だな」
さすがに毎日体を拭いているだけでは嫌になってくる。
1日くらいなら我慢も出来るが。
「お風呂、入りたいね」
「ああ、そうだな。この世界に来てから一度も入って無いしな」
「あたしも。お湯に浸かってゆっくりしたい」
「この任務が終わったら、バレットさんとリザさんに相談してみようぜ」
「いいね! それ! 一緒に言いにいこう」
結菜のテンションがちょっと高くなる。
それから10分ほど俺と結菜は話していた。
「そろそろ寝るか。明日もあるし。俺は床で寝るから結菜はベッドで寝ていいよ」
「待って……床で寝ても……あれでしょ。一緒に寝よう」
結菜が恥ずかしそうに言う。
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。
結菜に「一緒に寝よう」と言われて俺は、心の中で雄叫びをあげた。
別、そういう意味ではないと分かってるけど、あげずにはいられなかった。
俺は「お、おう」と返事をした。
結菜がベッドに入り、俺もベッドに入った。
お互いにベッドの端の方に寄っている為、真ん中に少しスペースがある感じだ。
「電気消すね」
俺が「うん」と言うと、結菜は部屋の灯りを落とした。
「おやすみ」
俺は「ああ、おやすみ」と返した。
最初はドキドキして寝れなかったが、今日一日の疲れもあってしばらくすると眠りに落ちていた。
俺は泣き声で目が覚めた。
まだ、真っ暗だった。
横で寝ている結菜が泣いていた。
俺は「大丈夫か?」と声を掛けた。
「ごめん、起こしちゃったね。大丈夫。ちょっと夢で見ただけだから」
何の夢を見ていたのかはすぐに察しがついた。
「ごめん、俺がもっと早くに……」
「優心は悪くない」
俺にもっと力があれば、結菜をもっと早くに――
「ねえ、あたしの手、握って―――――――――――また見そうで怖いの」
最後のほうの言葉はなんとか聞き取れるくらいの小ささだった。
俺は結菜の小さい手を握る。
結菜が強く握り返してくる。
――そして、結菜が抱きついてくる。
「えっ!? 結菜? その俺達、友達だしそういう――」
「ただの友達……じゃないからいいの」
「えっ!? それ、どうゆう――」と俺はあたふたしてしまう。
それから結菜は寝付くまで俺を強く抱きしめていた。
ただの友達じゃない?
これが友達以上恋人未満っていうやつか?
しばらく胸のドキドキで眠れなかった。
★★★
「痛っ!」
俺はベッドから落ちて目が覚めた。
そんな寝相悪かったか? 俺。
「うお!」
結菜がベッドから俺の上に落ちてきた。
肺の空気が強制的に吐き出される。
「おはよう、優心――――あっ、ごめん」
目が覚めた結菜が俺に乗っているのに気づき、慌てて退く。
「おはよう。……その寝相、凄いんだな」
「……うん。その……落ち着いて寝れるとこんな感じに……」
結菜は少し恥ずかしそうに言う。
「あれから、ちゃんと寝れたなら良かった」
夜の事を思い出して恥ずかしくなる。
「優心――――あっ、」
結菜の顔が真っ赤になる。
昨日の事を思い出しているのだろうか。
非常に可愛い顔だった。
目に焼き付けておこ――――
俺は起き上がった時に気付いた。
ズボンに立派なワンポールテントが張ってある事に。
男特有の朝、元気になる息子が。
そして結菜が顔を真赤にした時、視線の先に何があったのかを。
カーン、カーン、カーン、カーン、カーン、カーン、カーン、カーン。
突如、大きな鐘の音が窓の外から響いてきた。
『緊急事態発生! 緊急事態発生! 魔物大群がこちらに押し寄せて来てます! 冒険者の皆様は至急冒険者ギルドへ! 繰り返します――――』
外から大きな声が聞こえてきた。
「ユウシン君! ユイナちゃん! 急いで準備して――あら、」
真面目な顔をしたリザさんが部屋に入って来たが、俺のワンポールテントをみた瞬間笑みが漏れる。
遅れて、カーミルも入ってきたが、俺のあれを見た瞬間、顔を真っ赤に染めた。
それから、急いで準備終えた俺達は冒険者ギルドへと向かった。




