023 魔物の大群
俺、結菜、カーミル、リザさんの4人は冒険者ギルドに着いた。
中に入ると、慌ただしい数の冒険者がいた。
「皆様、こちらへお願いします」
ギルド職員がやって来て俺達を案内する。
「よお、可愛い嬢ちゃん達だな」
「なんだ、その冴えない男は?」
「とりあえず、よろしくな!」
案内された先には冒険者の男3人がいた。
冒険者10名ほどで1つの隊として、それをたくさん作って行くらしい。
大斧を背負ったマッチョの男が集まっている冒険者達の前に現れた。
「静かにしろ!!」
その男の一声で、ざわざわしていた冒険者達が一瞬で静まり返る。
「オレの名はグレード! ここを拠点するSランク冒険者だ! 今日の指揮は俺が執る! 異論は認めない!」
そんな感じで街の防衛戦は始まった。
★★★
遠距離攻撃が得意な隊は街付近にある高台から攻撃。
近距離攻撃が得意な隊は前線に。
回復魔法が得意な隊は後ろに待機。
そして、指揮を執るグレードは最前線にいた。
あれ? 指揮執る奴ってそんな前いていいの?
ちなみに俺達の隊は最前線の端の方だ。
てか、リザさんがなんで最前線にいるんだ?
遠距離攻撃に回復魔法、どうみても後ろにいるべき人だ。
まあ、一緒にいてくれるのは心強いが。
「こんな大勢の人と一緒に戦うのは初めてだな」
「あたしも初めて。城では訓練ばっかりだったから」
「わたしも初めてだよ。こんな大勢の人と一緒は」
結菜もカーミルも初めてらしい。
「そんな、緊張しなくて大丈夫だよー。いつも通りやれば」
リザさんが軽い感じで言った。
すると、同じ隊の1人の男がやって来た。
「おいおい、そこの冴えない男。俺達の足、引っ張んじゃねえぞ」
俺は、「あ、はい」と大分テキトーに答える。
一瞬、クラスメイトの蒼井みたいな奴だなと思った。
「そこの可愛い嬢ちゃん達、この戦いが終わったら一緒に遊ぼうぜー。気持ちよくしてやるから」
カーミルと結菜が顔をしかめる。
一瞬、あの男の眉間に短剣を投げそうになってしまった。
「助けてー、ユウシン君―」
リザさんは超わざとらしく俺の腕に抱きついてくる。
おっ、腕に2つの柔らかい物が。
「その冴えない男のどこがいいんだよ!」
なんか面倒くさい事になってきた。
「魔物の大群がこっちに来たぞーーーー」
遠くの冒険者が大きな声で魔物の襲来を教える。
冒険者の男は持ち場に帰っていく。
前線の冒険者達はそれぞれ臨戦態勢を取る。
遠くの方から魔物がゾロゾロとやって来た。
「なんだ!? あの数! いくらいるんだよ!」
「見た感じ1万くらいじゃない?」
俺が魔物の数に驚いているとリザさんが教えてくれた。
ちなみに防衛にあたる冒険者は千人くらいだ。
大丈夫なのか?
結菜が「1万!?」と驚いている。
「ユウシン君、こっちおいでー」
「なんですか、リザさん――えっ!?」
俺がリザさんの所に近づいた瞬間、抱き寄せられ――腕に何か針の様な物を刺された。
――――〈死からの反撃〉発動。
「ユウシン君、ほら、魔物が来るよ。頑張って」
リザさん俺を離し、背中を押す。
きっと人前でいつもの様に俺を殺したらまずいからあんな方法を取ったのだろう。
「街の運命は、お前らに掛かってる! 死んでも魔物を後ろに通すな! 遠距離攻撃部隊、打て!!」
指揮官のグレードが叫ぶ。
後ろの部隊から火や水、雷に氷など様々な魔法が放たれ、前方の魔物大群に次々と着弾し数を減らしていく。
生き残った魔物達が前線と接触し、戦闘が始まる。
俺は、目の前に迫って来たブルーオーガの首を一瞬で斬り飛ばした。
次に近くにいた、身長2メートルくらいの豚の顔した人型の魔物――オークの首を刺す。
「【加速】――【剛力】」
「【業火纏】」
結菜は魔法を使った素早い移動と怪力で、カーミルは全身に炎を纏い次々と魔物を倒していく。
「【光の剣】」
リザさんは魔法で光る剣を生み出し、それで次々と魔物を切っていく。
「あいつら強すぎだろ」
さっき、俺に絡んできた冒険者の男が俺達の戦闘を見て驚いていた。
俺は、犬の顔を持つ人型の魔物――コボルトの首を刎ねる。
俺は両手に短剣を持つと、次々と魔物の首を刎ね落として回った。
狩っても狩っても数が減る気がしないぞ。
寧ろ増えてねえか。
負傷して、後ろへ引いていく冒険者達も出てきていた。
前線が押され始めている。
遠距離攻撃部隊も攻撃しているが、魔力切れも出てきたのだろうか、攻撃の規模が小さくなってきている。
俺は戦場を走り回り、目につく魔物の首を片っ端から斬り飛ばしていった。
「全然、数が減らない」
「本気出せたら、一瞬で焼き払えるのに」
結菜とカーミルの声が聞こえる。
「サラマンダーが出たぞーーーーーー。5匹だ!」
冒険者の1人が叫ぶ。
「サラマンダーだと!?」
「5匹だと!! せめて1匹なら」
「こんなのやってやれるか!」
「俺は逃げるぞ!」
冒険者達に動揺が広がり、前線から逃げ出す者もいた。
「留まれ!! お前たちがここで引いたら街の者はどうする! この魔物の群れに殺されるのだぞ!」
指揮官、グレードの言葉で前線から逃げ出す者はいなくなった。
地を這う翼を持つ大きなトカゲ――サラマンダーの姿が見えてきた。
他の魔物より大きい為、魔物の大群の後ろの方へいても姿が確認できた。
5匹のサラマンダーは一斉に口から炎を吐き出す。
サラマンダーの前にいる魔物達が焼き払われていく。
「リザさん、サラマンダーって強いんですか?」
俺は魔物を狩りながらリザさんに聞く。
「今のユウシン君なら余裕じゃない」
リザさんが魔物を光の剣で攻撃しながら答えてくれる。
なら、これはラッキーだな。
数が多くて困っていた雑魚魔物達をサラマンダーが減らしてくれてるのだから。
サラマンダーの攻撃により魔物数が目に見えて減ってきた。
1匹のサラマンダーの炎ブレスがこちらに放たれる。
「死ぬーーーー」
「助けてくれーーーー」
「死にたくねーーーー」
近くにいた冒険者達が騒ぎ立てる。
「【業火壁】」
「【暴風壁】」
カーミルとリザさんがサラマンダーの炎ブレスを魔法で遮る。
「助かったぜ」
「死ぬかと思った」
「すげえ魔法だな」
助かった冒険者達がそれぞれ喋る。
俺はカーミルとリザさんに目で合図をして飛び出す。
素早くサラマンダーの首元に入り、頭を切り落とした。
「まじかよ、一撃で倒しやがった」
「あいつ、何したのか全く見えなかったぜ」
「化け物かよ、あいつ」
冒険者達が呆然と俺を見ていた。
俺は次のサラマンダーの元へ向かった。
2匹目のサラマンダーの首を切り落とす。
「【金剛力】――うりゃあああああああああああ」
グレードが大斧振り回し、サラマンダーの1匹を倒す。
周りの冒険者から大きな歓声が上がる。
あれ? 俺の時と違わなくない?
まあ、いい。今はサラマンダーを倒すことに集中しよう。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
グレードが雄叫びを上げながら、サラマンダーの1匹と対峙している。
俺はグレードが相手していない、もう1匹のサラマンダー元へ駆け寄り、首を斬り飛ばした。
それと、同時に短剣の刃が折れた。
もっと丈夫な短剣がほしいな。
俺は折れた短剣を捨て、予備の短剣を使う。
グレードは大斧でどんどんとサラマンダーに傷を付けていく。
「【剛撃】――うりゃあああああああああああああああああああ」
サラマンダーはグレードの一撃を受けた後、動かなくなった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
グレードが雄叫びを上げると、冒険者達も雄叫びを上げた。
暑苦しいな。
そこから、冒険者達の士気が上がり魔物大群の数はみるみる減っていった。
俺は目につく限りの魔物を次々と切り刻んでいった。
途中、スキルが切れるたび、リザさんに発動させてもらった。
数時間後、全ての魔物を倒しきった。
冒険者達は魔物を倒しきった事を喜びあっていた。
そんな中、リザさんが口を開く。
「ちょっと、まずいわねー」
「リザさん、どうしたんですか?」
俺はリザさん聞く。
「街は守られた! これはお前たちが頑張ったからだ! 誇りに――」
冒険者に囲まれて演説みたいな事をしていたグレードが、言葉を止め空を見た。
俺も釣られて空を見る。
――ドラゴンがいた。
50mくらいの大きさがある赤いドラゴンが3匹。




