1-10
村外れでは、凄惨な光景が繰り広げられていた。
20頭近くいる狼が、数人のNPCを貪り食っていたのだ。
哀願と断末魔の絶叫を上げるNPC。腹に食らいつき、腸を引きずり出し、得意げに咥えるカルムイーター。ばき、ぼき、と、骨が砕ける音が響く。
「あ、あ、あ……!」
涼の喉から捻じれた悲鳴が絞り出される。
感情が高ぶる余り、喉から押し上げられた空気が漏れている、といった声だ。
涼はわなわなと震える手で顔を覆っていたが、その隙間から、目だけが見ている。目だけが、ただ見ていた。
「……『ファイアウォール!』」
明は火属性の範囲魔法を、カルムイーターからやや離れた位置に打ち込んだ。
本来ならば、直接カルムイーターに叩き込むべき魔法だ。しかし、加害禁止コードが解除されている以上、瀕死のNPCにもダメージが及んでしまう。火属性魔法に怯える動物系Mobの本能を期待しての事だった。
「『ブースト・アレイ・テン・ファイアブリッド』……GO!」
明は魔法の威力を度外視して数で勝負する。
『ブースト』は増幅、『アレイ』は数、『ファイアブリッド』は炎の礫だ。明の頭上に現れた十個の炎の礫は、合図によって、明が指定したカルムイーターを目がけて飛翔する。
ごっそりと精神が削り取られるような感覚に、明は片膝をついた。
明の黒魔法スキルレベルは42。中レベルの入口といったところだ。単発の『ファイアブリッド』なら再詠唱可能時間の3秒を過ぎれば連発できるが、覚えたての『アレイ』まで同時に使用すると、再詠唱時間とMP消費量が一気に跳ね上がる。
それに風妖精族カエリムは、炎属性魔法と相性が良くない。MP消費が1.2倍になるし、魔法攻撃力も2割程度落ちる。精霊の強い加護を受ける妖精族独特のデメリットだ。
しかし牽制のファイアブリッドは、NPCからカルムイーターのターゲットを外すには十分だったようだ。カルムイーターは、楽しみの邪魔をされて苛立ったのか、あるいは本来の敵を補足した喜びからか、鼻づらに皺を寄せ、獰猛な牙を覗かせながら明に向き直る。
「リョウちゃん!」
フォローを促すべく声をかけるが、涼はガタガタと震えたまま動かない。
食われているのは、おそらく涼にとって親しい村人だったのだろう。そして彼らが球体化していないという事は、瀕死状態だ。あのNPCたちは、生きながら食われている。カルムイーターの獲物を嬲る習性が発揮されているのだろう。涼がショックを受ける気持ちは分かるが、今はまごついている場合ではない。
明は、腹にぐっと力を入れた。
「涼! しっかりしろ! 避難が先だ!」
涼の肩がびくりと跳ねる。
明は、カルミナオンラインにおいて初めてロールプレイを放棄した。
口から出る声は舌足らずな甲高さだが、脳裏にイメージとして響くのは、リアルの自分の低く重い声だ。この口調に叱られ慣れている涼にも、同じ音が届いたのかもしれない。
「来るぞ、涼! 『硬気功』だ! 分かってるな!?」
「……はい!」
涼の全身が淡い緑色に光る。格闘スキルのアビリティ、『硬気功』の発動エフェクトだ。
「今は俺がタゲられてる! 直線で来るぞ! 『円気爆裂』で迎え撃て!」
「はい!」
すっと涼が動き、カルムイーターと明の対角線上に入る。
明を目がけて飛びかかるカルムイーターの距離と、アビリティの効果範囲を見計らって、涼が吠える。
「『円気爆裂』!」
涼を中心にして衝撃波が広がる。
9頭のカルムイーターが巻き込まれ、そのうち2頭が気絶する。
『円気爆裂』は格闘スキルの貴重な範囲攻撃だ。効果範囲は半径1.5メートルしかなく、攻撃力も高くないが、範囲内のMobに無差別にダメージを与える。また、2割弱の確率でスタン効果も発揮される。
10匹近いMobを『円気爆裂』の範囲におびき寄せるのは、パーティ戦ではなかなかできない芸当だ。カルムイーターの攻撃対象が複数の前衛職に散らばってしまうからである。カルムイーターの同時一斉攻撃を逆手に取った、2人しかいないからこそ可能な戦法だ。
「涼! タゲを取れ! 俺はNPCを回復する!」
「はい!」
先ほどの一斉攻撃に加わっていなかったカルムイーター達も、のそりと立ち上がる。
カルムーターは唸りながら涼を中心に円を描く。拳だけでなく、最もレンジが広い両手槍の近接攻撃すらも微妙に届かない距離だ。攻撃するタイミングを見計らっているのだろう。それと同時に、プレイヤーにプレッシャーをかけているのだ。群れで行動する動物系Mob独特の厭らしい行動である。
明は間違って自分がターゲットになってしまわないよう、弧を描くようにして回り込み、NPCの傍らへ駆けつける。
「……メイ、様」
サダキチの口から、ごぼりと血が溢れた。喉を抉られているせいか、ひゅひゅうと笛の音のような息が漏れている。
アシッドアイとの戦闘の時もそうだったが、肉体的な損壊を描写するブラッドタイプが、最も高いレベルで固定されている。あまりのリアルさに、PTSDレベルだとか、運営の技術の無駄遣いだとか、医療系VRのビジュアルを盗用したのではないかなどと噂されていた。18歳以上でないとプレイ出来ないカルミナオンラインだからこそ出来たレベル設定だろう。
多くのプレイヤーは正視に耐えないほどのグロテスクさを嫌って、レベルを下げている。しかしごく一部のプレイヤーは、倫理規定が厳しい時代によくぞやってくれたと喜んだらしい。血を見ると気が遠くなる明には、理解不可能な思考だ。
「大丈夫」
明はそれだけ言うと、アイテムポーチからポーションを取り出してサダキチ達に振りかける。ポーションは飲み薬でもあり、塗り薬でもある。NPCにポーションを使ったことはないが、おそらく有効だろう。NPCはプレイヤーよりもHPが少ないので、ポーション1つで全回復するのではないか。
明はNPCの回復を確認する暇もなく、涼に目を向ける。
涼は、思ったよりうまく立ち回っていた。ヘイトを集めた後は、回避に専念していたらしい。体には爪に切り裂かれたのであろう傷がいくつかあるが、皮一枚といったところだ。ヴァンダに似合わぬ素早い動きは、『硬気功』を解いて『軽気功』のアビリティを使っているからだろうか。『軽気功』は回避力を大幅に上昇させるが、その代りに攻撃力と防御力が著しく低下する。
「涼! 『クイックネス』行くぞ! 『硬気功』に切り替えろ!」
涼がこくりと頷く。
明は素早く詠唱を終えると、敏捷度上昇効果のある付与魔法『フィジカルエンハンスト・クイックネス』を涼にかける。一瞬だけ、ヘイトが明に傾く。その一瞬が大切だ。カルムイーターにわずかな隙が生まれ、涼には攻撃チャンスが訪れる。
明は、ヘイトのキャッチボールと言われる現象を試みた。
涼の攻撃によってヘイトが集中した時、明が支援魔法をかけてヘイトを稼ぐ。その隙をついて、涼が再び攻撃する。明はまた、支援魔法や攻撃魔法を仕掛ける。カルムイーターの攻撃対象選択による僅かな硬直時間を連続で引き起こし、群れとしての行動を阻害する。
言葉にすると簡単だが、実際はとんでもない難作業だった。
メインキャラクター時代、明が前衛職のパラディン、『ブッチャーズブルーム』の前ギルドマスター・カーチスが魔法職のネクロマンサーというコンビで何度かキャッチボールをしたことがある。カーチスはにこにこ微笑みながら特に苦もなくこなしていたが、これは魔法職の負担が半端ではない。魔法の選択と発動のタイミングを間違えば、ヘイトの天秤が一気に傾いてしまう。
ヘイトには明確な表示がないので、経験と勘の勝負になる。付与魔法はヘイトの上昇率が低く、黒魔法は高過ぎる。中間である白魔法か祝術が使えれば、あるいはヒーラーがいれば、こんな危ない橋を渡る必要もなかった。早々に離脱しないと、MPも底をついてしまう。
脱出の切り札は『フライト』だ。
NPCが自力で歩ける状態まで回復したら、一気に明にヘイトを集める。
空を飛んでしまえば、狼系Mobであるカルムイーターの攻撃は一切届かない。しかもヘイトは保持されたままだ。『フライト』で飛んでいる間は種族特性アビリティ以外の行動が不可能になるが、カルムイーターを引きつけつつ逃げるだけなら問題ない。その隙に涼とNPCは安全圏へ離脱できるだろう。
明はちらりとNPCの様子を伺った。
その目が、驚愕で見開かれる。
一人当たり1本のポーションを振りかけたはずが、NPCの傷はほとんど治っていなかった。生命の危機は脱しているようだが、横臥したまま荒い息を吐いている。
明は慌ててもう1本を振りかける。しかし、回復量は微々たるものだった。
――NPCにはポーションが効きにくいのか!?
想定外の事態に、明は混乱した。
これまでNPCにポーションを使ったことはないが、プレイヤーと同様に効くと考えていた。クエストの中には、病気の子供を助けるために『エリクシール』というHP全回復・全状態異常解除のレアポーションの素材を収集する依頼もあった。『エリクシール』を飲んだ少女は、あっという間に元気になった。
その時は、プレイヤーですら全回復させる『エリクシール』なのだから、特に疑問には思わなかった。
しかし、もしやそれは、NPCにはポーションの類が効きにくいため、ちょっとした病気を治すだけでも『エリクシール』クラスのポーションが必要だったとしたら。
「いっ、たあああああ!!」
涼の絶叫が響く。
カルムイーターが、涼の太ももに食らいついていた。そして首を左右に振って、涼の肉を食いちぎろうとしている。イーター系狼Mobの特徴、スクリューバイトだ。
「痛い痛い! やめて! やだあああ!」
「しまった! ……『ブースト・アレイ・ファイブ・ウィンドカッター』!」
泣き叫ぶ涼を襲おうとしていたカルムイーターを、風の刃で退ける。
どうすればいい、と明は自分自身に問いかけた。
カルムイーターが顎を放すほどの威力の魔法を使用すれば、加害禁止コードが解除されている以上、涼も巻き込んでしまう。万が一魔法の衝撃で涼が地面に倒れてしまったら、カルムイーターは好機を得たりとばかりに襲い掛かるだろう。そうなっては一溜りもない。キャラクターとしての『リョウ』の肉体は復活するが、複数の獣に体を食い荒らされるという恐怖と、復活の激痛は、『涼』の精神に深い傷跡を残すだろう。
精霊魔法の『スリープ』や『デストラクション』なら、祝術の『テオの小指』や『アスナンの抱擁』なら、もっと黒魔法レベルが高ければ、あるいはメインキャラクターならば――。
しかし今現在の明の手持ちのカードは、たったレベル42の黒魔法と、それよりも低い付与魔法、そして貧弱なカエリムの肉体だけだ。
涼を傷つけずに助けられる手段がない。
蒼白になった瞬間、背中に強烈な熱が走った。
先ほどのウィンドカッターでヘイトバランスが狂ったのだろう。明に標的を移したカルムイーターの爪撃が、背中を抉っていた。3枚の羽根が、鈴のような澄んだ音を立てて砕け散る。
あまりの痛みに、明はしゃがみこんだ。目の裏側に赤い光が飛ぶ。視界の端では体力ゲージが4割も減っていた。紙装甲の上に、風妖精族カエリムの命とも言える羽根を3枚も奪われたせいだろう。
明は声を出すこともできず、激痛を堪えるために体を抱きしめる。
しかしカルムイーターは、小生意気なカエリムが無防備になった隙を見逃すほど甘くなかった。プログラムに従って、冷徹に、冷酷に、じわじわと明の命を嬲る。
「メイちゃん!」
悲鳴のような絶叫が明の耳を叩いた。
痛みで霞む明の視界の中、涼の表情は絶望を形作っていた。
しかしやがてそれは、悪鬼のような憤怒へと変わる。
それと同時に、拳は爪が手のひらに食い込むほど硬く握りしめられていった。
「……あああああぁぁぁ!」
咆哮と同時に、涼は自らの太ももに食らいついたカルムイーターの横っ面を殴り倒した。
間髪おかずに腹部を思い切り蹴り上げる。
その蹴りは、クリティカルヒットだったのだろう。カルムイーターは数メートル先まで吹き飛ばされ、何度か地面でバウンドした後、黒曜石様の球体に変化した。
「来いよ、おらあああ!」
涼の雄たけびが空気を震わせる。
と同時に、涼の体はゴールデンイエローの光に包まれた。モンクのアビリティ、『波動』の発動エフェクトだ。
自己回復の副作用でヘイトを集める『練気』とは異なり、『波動』はまさにヘイトを集中させるためだけに存在するアビリティである。装甲が薄いモンクにとって、ヒーラーの回復があってこそ成り立つアビリティだ。決して、今のように回復役がいない場面で使うアビリティではない。
「……涼、やめ」
明の言葉は、最後まで発せられることはなかった。
カルムイーターが、一斉に涼へと襲い掛かったからだ。
明は、これから起こる惨劇を覚悟した。
しかし、涼は動く。
喉元に噛み付こうとした一匹を、右の掌底で吹き飛ばす。その隙に脛に食いつかれたが、今度は容赦なく頭を踏み潰した。飛びかかって来た一匹を、バレーボールのスパイクの要領で地面に叩きつける。叩き落としたカルムイーターの足を鷲掴みにすると、ジャイアントスイングのように振り回して周囲の敵をなぎ倒す。
いずれの攻撃も、アビリティに頼ったものではない。
プレイヤーは極限状態に陥った時、または感情が極度に昂ぶった時、こういった攻撃をすることがある。人間の戦闘本能と言おうか、獣性の解放と言おうか。しかし大抵は、滅茶苦茶に武器を振り回すだけで、技としての体裁が整わないため、ダメージには繋がらない。
しかしモンクである涼の場合は、格闘スキルの補正が手伝ってか、単なる殴打や蹴りも立派な攻撃として成立していた。そこにアビリティ攻撃のような滑らかさや美しさはないが、鈍く重い力強さがある。
武器を使う戦闘とは全く異なる、純粋な暴力の嵐。
明は体の痛みと、戦闘中であることを忘れて、呆然と涼を見つめた。
体中のいたる場所から血が滴らせ、拳と足のみならず全身が返り血に染まる。しかし涼は全くひるまずに、それどころか更に暴虐たる拳を振るい、カルムイーターを屠り続ける。その姿は、まるで北欧神話の狂戦士のようだ。
現実世界の涼は、まさに虫一匹殺せないほど優しい性格である。カルミナオンラインの中でもMobを倒した後、ごめんなさいと謝っていた。激戦の末に倒したボスMobであってもだ。
その涼が、情け容赦のない暴力を振るう。痛みでどうにかしてしまったのだろうか。明には分からない。
背筋に悪寒が走る。誰よりもよく知っているはずの涼が、全く知らない誰かに変わってしまう恐怖だ。
怯え震える明をよそに、涼は最後の一匹が動かなくなるまで、決して止まらなかった。
「メイちゃん! 大丈夫!?」
先ほどの鬼の形相は何処へやら。涼は半泣きで顔をくしゃくしゃに歪めながら、一直線に駆けて来た。
戦闘終了と同時に返り血は消えていたが、たてがみのような金髪はひどく乱れているし、体に負った傷はそのまま。生きているのが不思議な状態だ。実際にHPバーはわずか2ドットしかなく、真っ赤に点滅している。
「いや、お前の方が……」
「平気~」
顔の表情筋が全て緩んだような、涼独特の気が抜ける笑顔を見せる。
「平気じゃねえだろ! つかその足! 肉えぐれてるし、穴空いたままだし!」
カルムイーターの牙で穿たれた傷跡は、凄惨という言葉そのものだ。
涼は困った顔で、少し考える。
「女は痛みに強いんだって!」
ぴったりな表現を思いついた、とばかりに顔を輝かせる。
「ほんと、お前、なあ……」
明は完全に『可憐なカエリムのメイ』のロールプレイを忘れて、ガシガシと頭を掻いた。
恥ずかしいったらない。
涼は、ブチ切れていたせいもあるだろうが、痛みも恐怖も顧みず勇猛果敢に戦った。明はそんな涼を、ただ座り込んで見ていただけだ。
「はい、ポーション」
「お前が飲めよ!」
「でもメイちゃんの背中すごいもん! 痛いでしょ? 大丈夫?」
「お前の歯型だらけの体の方がすごいだろ!?」
涼はポーションを手に持ったまま、おろおろと狼狽える。
「いいからとっとと飲め! 返事!」
「はい!」
涼はびしりと背筋を伸ばすと、一気にポーションを煽った。
HPゲージが勢いよく回復する。プレイヤーである涼には、普通に効いているようだ。
「涼、理由は分からんけど、NPCにはポーションの効きが悪い。全員に2本使ってもまだこの状態だ」
「え!? 治ってるんじゃないの!?」
涼は慌てて村人の傍らにしゃがみこむと、着物をめくって傷の状態を確認する。
血は止まっているが、傷口から覗く肉や骨は涼のそれと同様に生々しい。明は手で口を押えながら吐き気を堪える。なぜ涼は平気なのだろう。職業柄、耐性があるのだろうか。
「……リョウさん」
「サダキチさん、無理しないで下さい。体重は私の腕にかけて、お薬飲んで下さいね」
サダキチの目から、ぼろぼろと涙がこぼれる。
「怖かったですよね。でももう大丈夫。狼は全部倒しました。一緒に帰りましょう」
「リョウさん、リョウさん……」
「ほら~。泣いたらまたお父さんに叱られちゃいますよ~」
涼はサダキチを抱きしめると、優しく背中を撫でた。それは、子供をあやす母親を彷彿とさせた。
追記事件以後は、プレイヤー本人の精神的な強さと、現実で積み上げてきた経験が物を言うのだなとつくづく実感する。
現実の明は、殴り合いどころかスポーツ経験すらない。背丈だけはひょろ長いが、デスクワークとゲーム三昧で筋肉らしい筋肉もついていない。母親が包丁で指を切った時に流れた血を見て、情けなくへたりこんでしまったくらい軟弱な男だ。
だが涼は、全日本女子バレーボール選手候補にもなったトップアスリートの一人である。高校卒業後はプロチームへの入団も決まっていたし、オリンピック出場も夢ではなかった。あの、アスリートの命である膝をずたずたにした事故さえなければ、今もコートの上で光輝く道を突き進んでいたはずだ。
そして涼は、怪我で再起不能になった後もへこたれることなく、長く辛くリハビリに耐え、それと共に猛勉強して大学入試に合格し、やがて理学療法士の資格を取得した。自分自身の傷ついた体をよく知りたいという思いと、生来の誰かの役に立ちたいという気持ちが上手くマッチしたのだろう。
涼とは、勝負と逆境に対する心構えがまるで違う。
悔しいような嬉しいような複雑な気持ちを抱えながら、明は青空を見上げた。




