54.野盗狩り⑨〜出立前
代官との合意で、追手の不安がなくなったため、
マギー、アリス、ケインの3人は、花屋に戻っていた。
リンがそこを訪れ、今回の作戦を3人に話した。
3人がエマを心配しているのが、リンにも見て取れたため、少しでも安心して欲しいと思っての事だった。
「ホ、ホント?ホントに母ちゃんを連れてきてくれるの?」
ケインがリンに恐る恐る尋ねた。
「だいじょぶ。エリシアお姉ちゃんが、あっちの
だいかん…?のおじちゃんとお話して、アリスちゃんとケインくんのお母さん連れてっていいことになったんだ。
ホサも約束してくれた。
今度、ゼクスじいじとシドおじちゃんとエヴァおねえさんが、あっち行って連れて帰ってくるって」
「…リンちゃん…、それホント…なの…?
代官様が…母ちゃん連れてっていいって……?」
アリスも半信半疑の様子。
それも当然だ。
シュルツの出国制限の厳しさは子供でも知っている。
追手の心配がなくなった事にも驚いたが、自分たちに加え、母親までが国を出るのを代官が許すとはとても考えられなかった。
「あのね、エリシアお姉ちゃんがだいかんのおじちゃんをイジメて、それでおじちゃん泣かしちゃって、そしたらなかよくなったの」
「…代官様を…泣かし…た…?」
「それでね、ホサがね、やとう…っていうひと?を
とーばつしたら、お母さんいなくなるよって、おじちゃんに言ったら、いいよって」
「…??」
アリスとケインにはよくわからなかったようだったが、マギーには理解できたらしい。
「…リンちゃん…、野盗を討伐するから、エマを連れ帰るって、補佐さんが代官様に言ってくれたんだね……」
「うん!そう!ホサが約束してくれたの。
だから、もうすぐお母さん帰ってくるよ!」
マギーがリンの手を握り、涙を零す。
「……ありが…とう…、ありがとう…ね……」
「…ばあちゃん…?」
マギーがアリスとケインに向き直り、諭すように言う。
「ほら…、アリスもケインも、リンちゃんにお礼
言いなさい。
エマを…、母さんを…ここに連れてきてもらえるってさ…」
「……ほんと…なの…?ばあちゃん……?」
「ほんとだよ……、もうすぐ母さんに会えるよ…」
「…ばあちゃん……!!」
ふたりがマギーに抱きつき、号泣を始めた。
「あんたたち、よかったね…、ほんとに…よかったね…」
泣いている3人に、リンも目を潤ませて、それから店の中を見渡してみる。
しばらく休みだったため、花はほとんどない。
「でも…、もうすぐ…、お花でいっぱいになる…」
ちょっと赤くなった目を軽く拭い、リンは静かに店を後にした。
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【リン視点】
お花のおばあちゃんちにお話ししたから、次はゼクスじいじにいってらっしゃい言おうと思って、騎士団のおウチに行く途中だけど…、なんか変……。
前から歩いてくるみんなが、パァって端っこによけてく。
さっきまで笑ってた人も、急に下向いて…。
……なんでだろ……?
「リ〜ンちゃん!」
びっくりした!後ろからガシッって肩をつかまれた。
ふりかえると…ああ!シドおじちゃんとエヴァおねえさんだ!
……あれぇ…、ふたりともいつもの格好と違う。
いつもより少し汚いお服きてる…。
たまに見かける悪いひとみたいだ。
…でも……、なんか…ふたりともカッコいい!
「こんにちは!なんかいつもと違うけど、ふたりともカッコいいよ!」
「あっはっはっは!そうかい、そうかい。
アンタはほんっとに見る目があるねぇ」
「………………」
ふたりに褒めてもらっちゃった。
でも…、ホントにそうだ。
シドおじちゃんはいつもよりすごく強そうだし、エヴァおねえさんも強そうだけど、それよりも、いつもよりすごくキレイに見える。
「シドおじちゃん、すごく強そうでカッコいい。エヴァおねえさんは……いつもよりすごくキレイ」
わあ!エヴァおねえさんがいきなり抱き抱えてくれた。
シドおじちゃんもアタマ撫でてくれてる。
「もう!アンタって子は!ホントにうれしがらせてくれるねぇ!」
「……!……………!!」
ふたりにギュウギュウ頬ずりされた。
おじちゃん、おヒゲくすぐったいよ。
ああ、おねえさん、いつもみたいにいい匂い…。
「…で、今日はどうしたんだい?ドコ行くの?」
「ゼクスじいじのとこ。あ、ふたりもそうでしょ」
「ああ、今日出立だ。じゃあ、一緒に行こか」
シドおじちゃんが、ヒョイっと自分の肩に乗せてくれた。
うわぁ、高〜い。ゼクスじいじと同じくらい高い。
「……………?」
うん、こわくないよ、だいじょぶ、高いの平気。
…え?、おじちゃんの顔のほう…?
なんのこと?
いつもより、ずっとカッコいいけど……
あれ?、お、おじちゃん…どうしたの?
「あれぇ?、ダ、ダンナが……泣いて…る?
ハッハッハッハ、そんなに感激したのかい。
ヤダねぇ、このヒトはホントに。
そんなに歯ぁ食いしばったら、恐い顔がもっと恐くなるじゃないか。ハッハッハ」
すれ違う人々が皆縮み上がるような形相の大男と、
隣で高笑いするキケンな雰囲気の女と、大男の肩の上で、大男の頬をしきりに撫でる幼女。
摩訶不思議な一行が通り過ぎるのを、皆が茫然自失の顔で見送る光景が、騎士団庁舎まで続いていた。
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「あはははははははははははは!」
「…………!……!!…!」
「な、なに笑おとるんじゃ!おのれら!」
騎士団のおウチの、ゼクスじいじのお部屋に入ったら、じいじを見てシドおじちゃんとエヴァおねえさんがまた笑い出した。
なにがおもしろいんだろ?
「いや、だってさ、いつもあのクッソ重そうなヨロイつけて、ガシャガシャいわしてるコワモテ騎士団長サマにゃ、全然見えないよ。
そんな小汚い格好で山ン中彷徨いてたら、まんま山賊の頭じゃないかい」
「アホタレどもが、ソレこそが今回の狙いじゃろが!
わしは溢れ出る品格を抑えて、こんなに見事に
野蛮な輩になりきってるんじゃぞ。
コレはもう、変装の域を超えてもはや変身じゃ。
オマエらはむしろわしを称賛すべきじゃろ!
それよりなんじゃ、シドもエヴァも、いつも以上に危なっかしい気配噴き出しよって……、
オマエらこそ本職にしか見えんぞ!」
「フフン、カッコいいだろ、さっきリンちゃんに褒めてもらっちゃったぁ」
「…な…な…な……、なんじゃとお?!」
……あれ?
…ゼクスじいじが…
笑ってるけどこわい顔して
…こっちくる
シドおじちゃんも…
エヴァおねえさんもだ…
「…リン…、わしゃぁ…信じとるぞ…」
……なにが…?
「どうじゃ…、わしとあやつらを比べて…、どっちがカッコイイ?
ん…?、当然わしじゃろ?……」
「リンちゃん、さっきアタシらに言ってくれたろ、
ホラ、もう一回このジイさんの前で言ってみて」
「………!………!」
……なんか…みんな笑ってるけど……
……お顔…こわいよ…
いちばんカッコイイひと…でしょ…?
ええ〜?
わかんないよ〜
シドおじちゃんはすごく強そうだし
エヴァおねえさんはすごくキレイだし
じいじは……う〜ん……
「………何やってるんですか、あなた方は…」
あ、ホサだ。エリシアお姉ちゃんも一緒だ。
「ねぇねぇ、ホサ。ゼクスじいじが、なんかこわい顔して、どっちがカッコイイかって聞くの。
でも、みんなカッコイイから決めらんない。
どうしよう?」
「……い、いや…違うぞ、リン…コラっ!」
「リンちゃん、ダメ!しー、しー!」
「…………!……!」
え?、なにを?
あれ?ホサが、はぁ〜ってため息……
あ、エリシアお姉ちゃん、ちょっとおこだ
笑ってるけど……、笑ってないよ…
「……ゼクス…、シド…、エヴァ…
出立までの間…、少しお話しようか…」
「おぉっと!こ、こんな事しとる場合ではないな!
うん、スマンな、ふたりとも待たせたな。
それではさっそく出かけようか」
「あ、ああ、そうだね!早くエマを連れ帰んなきゃね」
「………!!」
バタバタみんな出てった
がんばってね〜
いってらっしゃ〜い
「…誰が一番カッコイイかって?」
「うん、そう聞かれた」
「いいオトナが何をしてんだか…」
「でも、いちばんカッコイイ人きまったよ」
「え?」
「エリシアお姉ちゃんがいちばんカッコよかった」
お顔を赤くしたエリシアお姉ちゃんが抱きしめてくれた…けど…
今度はホサがなにか言いたそうにしてた…
オトナってよくわかんない。
お読みいただきありがとうございました。
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いただけましたら大変嬉しいです。
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末永くお付き合い下さいませ。
次回タイトル予告「野盗の村」




