表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/76

49.野盗狩り④〜事前準備

 本日は8時から9時までの間に5話連続投稿します

 

「なにぃ!?、代官が、あのふたりの追跡調査への協力を求めてる!?」


 先触れの書状を手に、エリシアが驚愕する。


 アルベルトも同意見だ。


 なぜ、代官がわざわざ、死んだ事になっている子供

2人の追及をする?

 それに何のメリットがある?

 どう考えても無為な行動だ。

 

 

 いや……、逆に考えれば…、追跡しなければならない理由わけがある…という事か。


 そうなるとこちら側に選択肢が増える。

 正攻法では困難と思われたが、追跡の理由が相手の弱みであれば、搦め手を使って、相手の譲歩なりを引き出す余地もある。



 エリシアも、当然この違和感に気づいていた。

 ニンマリとした笑顔で、堂々と宣言する。


「我がテーゼは信義を重んずる都市だ。

 もちろん協力しよう。友好的且つ真摯にな。

 私も誠実な領主を演じてやる」


 アルベルトが苦笑しつつ皮肉混じりに言う。


「今回の脚本は向こうが書いています。それに相手の

役者としての力量もわかりません。

 ヒロインがいくら優れていても、脚本かお相手、あるいはその両方がお粗末だったら、興醒めもいいところですが」



 エリシアがニヤリと笑う。


「その時はこちらが脚本を書き直す。

 ウチにはお前という傑出した脚本家がいるんだ。

 お相手がどんなダイコンでも、多少は見るに値する演目に仕上がるはずだ。そうだろ」


 エリシアの挑戦的な視線を浴び、アルベルトは些か煩わしげな顔をしつつも、目だけはエリシア以上に攻撃性を帯びていた。


「…では、まず相手の脚本を予想しつつ、改稿版を

3つ4つ用意しておきましょう」





**********************





 ーーー代官が調査に来る

 

 アルベルトは、代官の追跡調査をマギーたちに知らせた。


「今日中にここを離れ、孤児院に移って下さい」


 連中が捜索をするとなると、まず真っ先に対象になるのはエマの母親のマギーだ。


 しかも、秘密裏に先行捜索部隊をテーゼに差し向けている可能性もある。

 すぐにでも痕跡を消して、孤児院に身を隠した方がいい。


 院長も事の経緯は承知している。

 上手く匿ってくれるだろう。





 アルベルトと3人は、すぐに孤児院に赴いた。

 院長の快諾も得て、調査終了までの身の置き場を確保できた。


 ちょうど孤児院に遊びに来ていたリンとともに帰路に着く。


「ホサ…、おばあちゃんたちのおウチ…、危ないの…?」


 リンが心配気な顔で尋ねる。


「そうだね。アリスとケインを探しに来る連中は、まずマギーのおウチを狙うだろうからね。

 もしかしたら、ナイショでもう探しに来てるかもしれない。だから急いで孤児院に行ってもらったんだよ」


「…探しに来る人って…悪い人…?」


 リンから意外な質問が飛んだ。


 ……悪い人……

 いや…、立ち位置が違うだけだ

 善悪では語れない


 アルベルトが立ち止まり、リンの目を見ながらゆっくり説明をする。


「いや、立っている場所が違うだけだよ。

 例えば……、ホラ、あの木を見てごらん。

 こちら側から見える幹や枝葉の様子と、向こう側から見える形は違うだろ。

 私はこう見えてる、でも相手はこう見えてる。

 ただそれだけの違いだ。どちらがいいとか悪いとか、そういう問題じゃないんだ」


 リンが考え込むように呟く。


「…むずかしい……」


「ふふっ、そうだね…」


「……ホサでも…悪い人かどうか…わからない…?」


「そんなに簡単にはわからない…かな…」


「…そうなの……?」


 リンは意外そうな顔をしている。

 リンから見ても、アルベルトはいろいろな事を知っているし、人の心の中まで見通しているのでは、と思えるほど関わる人たちの心根を的確に掴んでいる。


 アルベルトは屈み込み、リンの肩に手をやり、目を見てゆっくりと、自分の思いを伝えた。


「人はね、他の人が考えている事を本当の意味では知る事ができない。

 だからその人の考えをなんとか知ろうとするし、自分の思いをわかってもらおうとする。

 そうやって不完全ながらも懸命に理解し合おうと努力するのが人間なんだ。

 それはとても脆くて壊れやすい、だけどすごく大切な事で、そうやって人と人は繋がっていくんだよ。

 人はそれぞれに、思考の"核”になるものを持っていて、それに従って行動する。

 その"核"を理解し大切にする。 

 それが人の心を慮ると言う事だ」


 リンは、む〜という顔でいろいろ自分なりに考えを巡らせている。


 まだリンには難しすぎる話だったか……


「……人の心を…慮る…?」


「そうだ。その人が何を大切に思っているか、

 それを理解して、尊重してあげるんだ。

 そうする事で君はいろんな人と絆を深めていける」


「……絆……」


 噛み締めるように呟きたリンの頭をポンポンと叩く。


「そうだ。焦る必要はない。君はゆっくりとそれを知っていけばいい」


「……うん……」




 再び歩き始めた時、リンがポツリと言った。


「…ホサ…、探しに来る人と……絆…?ってできる?」


 難しすぎる質問だった。

 代官の為人を全く知らない。

 実直か、怠惰か、尊大か、謙虚か、

 情に厚いか、職務に徹する冷徹か、


 初見で相手の核となる部分を把握し、それに応じて筋書きを使い分けねばならない。

 なかなかの難行だ。

 

 だが、異例な対応には必ずそうしなければならなかった事情がある。


 それを掴めれば、味方に着ける事も、あるいは排除する手段も、おのずと絞れる。

 どっちに転んでも、代官にとっては忘れ難い関係になりそうだ。


「会ってみなくちゃわからない。

 でも、どういう形になるかはわからないが、少なくとも忘れられない絆は築けると思うよ」


 


 


 


 


















 

 

 


  


 


 


 

 



 




 

お読みいただきありがとうございました。


少しでも「続き読んでもいいかな」と思って

いただけましたら大変嬉しいです。

今後の励みになりますので、よろしければお気持ちの分だけ☆をいただけますでしょうか。


できましたら、ブックマークもしていただけると嬉しいです。

末永くお付き合い下さいませ。


次回タイトル予告「代官来訪」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ