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47.野盗狩り②〜運送業組合での一幕

 アルベルトは、その日のうちに、孤児院とシドの酒場に行き、院長とエヴァに協力を頼んだ。

 院長もエヴァも、快く協力を引き受けてくれた。


 領主邸に戻り、エリシアにも事の次第を説明する。


「了解した。いい判断だ。で、今後はどうする?」


「表向きはテーゼとして関与はしません。

 今のところはあくまで市中での出来事として、

一両日中に祖母と引き合わせる事ができるでしょう。

 ただ、保護された子供たちからは、まだ詳細な事情を聞けていません。母親がシュルツにいるはずなのに、なぜ姉弟ふたりだけなのか。

 その答えによっては、また他の対応を考える必要があるかもしれません。

 また、それとは別の問題として……」


「……追手…か」


「はい、領主が子供2人の『国棄て』をどう捉えるか、こちらでは測りかねます。

 放置ならばそれで良し。しかし、追手が差し向けられた場合は、我々はテーゼとしての公式な見解を示す必要があります」


 エリシアが、ふうっとため息をつき、アルベルトに微笑む。


「まぁいいさ。まずは子供たちの身柄の移動、そして祖母との対面だ。

 その他の事は、その時にまた考えればいい。

 しかし、お前も組合長にだいぶ頼られているな。

 私は未だに“青臭い小娘“扱いだぞ」


「あのヒトは特殊な性癖の持ち主ですから。

 それじゃ、リンにも説明してきます。

 失礼します」



 

**********************

 




 翌日、運送業組合の前には、院長に連れられた子供たち10人ほど、それにエヴァとリンがいた。

 

 院長たちとリンたちの間に微妙な距離があり、それを保ちながら建物に入る。


「いらっしゃいませ〜」

 受付嬢が一行に明るい声を掛ける。


 院長が受付嬢に今日の来訪の趣旨を告げる。


「おはようございます。本日、運送業組合さまのお仕事を見学させていただく孤児院の子供たちです」


「はい、組合長から聞いております。

 仕事の妨げにならぬようご注意頂ければ、自由にご覧いただいてかまわないとの事です」


「あリがとうございます。お仕事の邪魔にならぬよう注意致します。

 それでは拝見させていただきます」


 院長たち10人の子供と、僅かな距離を取って、エヴァとリンが歩き出す。


 一見すると、見学会に来た子供たちと引率の大人。

 違和感は全くなかった。





**********************




 

「じゃあ、この辺で……」

 エヴァが、院長にそっと呟き、リンとともに列を離れる。

「よろしくお願いします」

 院長がこくりと頷き、子供たちの一団とともに別方向に歩いていった。


 

「さてと…、じゃあ、あのエロジジイのところに

行こっか」

 エヴァがリンの手を引いて、組合長室に向う。


「…エロ…?ジジイ…?」

 リンには、何のことかわからない様子。

「あ〜、いいんだ、いいんだ、気にしないで。

 アンタにゃ、まだまだ早いよね」

 エヴァが、クククッと笑いながら、歩を進めた。





 しばらく歩くと、目当ての組合長室に着いた。


「お〜い、エロジジイ、いるか〜い」

 ノックもせず、エヴァが部屋に入る。


「バ、バカモンが、子供の前でなんちゅう事言っとる。

 ま、まあ、よう来てくれた。感謝するわい」


 ベンが苦虫を噛み潰したような顔をしつつも、エヴァとリンを招き入れる。


「おじいちゃん、こんにちは〜」

「おうおう、リンちゃん、来てくれたんか。ありがとよ」


 リンがベンに駆け寄り、抱き抱えられる。

 まさに祖父と孫といった絵図。


「ふう〜ん、アンタ、ソッチに宗旨変えしたんだ」

「何言っちょる。子供の笑顔ってのは、熟したおなごと同じくらいの宝モンなんじゃぞ」



 ほう、となにやら感心した表情を浮かべるエヴァ。

「それで、例の姉弟はどこさ?」


 その言を受け、ベンが奥に声を掛ける。


「お〜い、お前ら、出てきてくれ。お前らのばあさんの知り合いが迎えに来てくれたぞ」



 声に促されるように、子供がふたり、おずおずと部屋の奥から出てきた。


 姉は見た目10か11歳くらい、弟は8歳くらいか。

痩せてはいるが、さほど顔色は悪くない。


「……おじいちゃん……」


 姉が弟を背中で庇いながら、ベンに不安そうに話しかけた。


 ベンはふたりに歩み寄り、優しくささやく。


「心配するでないわ。昨日も話した通り、このオバさんは、お前らのばあさんのマギーの知り合いじゃ。

 一旦、お前らを孤児院に連れてって、その後でマギーのばあさんを連れてきてくれる。

 すまんが、お前らをココにこれ以上置いとくのは限界なんじゃ。許してくれんかのう」


 姉弟は頭を振り、ベンにしがみついた。


「ううん、おじいちゃんは弟の看病してくれたし、

ご飯も自分の分を食べないで、アタシらに分けてくれた。ホントにあリがとう」


 ベンも涙ぐんで、姉弟を抱きしめる。


「バカモン、大人が子供を守るのは当然の事じゃ。

 ワシら、子供の頃はずっと大人に守られてきたし、

ずっとそう言い聞かされてきた。

 当たり前の事しとるだけなんじゃよ。

 ほれ、もう行け。後はあのオバさんの言う事よう聞いての、お利口にしとれよ」


「うん、わかった、おじいちゃん、あリがとう」



 涙の別れを済ませ、姉弟がエヴァとリンに頭を下げる。

「「よろしくお願いします、おばさん」」


 エヴァは、ベンが『オバさん』と口にするたびに僅かに眉を動かしていたが、姉弟の挨拶にはさすがにオトナの対応をした。

「ああ、任しときな。それじゃアタシの後に並んで、行儀よく下に行くよ」



 ドアを閉める際、手を振りながら見送るベンに、エヴァがボソッと呟いた。 


「…やっぱり、アンタいい男だよ」


 だが、ワザとドアを閉める音に被せたため、誰にも聞こえなかっただろう。




 エヴァたちがロビーに下りると、ちょうど院長たちも戻って来たところだった。


「時間通りだね」


 また、朝来た時と同じように、絶妙な距離を取り、院長たちの後をついていく。


「本日は貴重な機会を設けてくださり、誠にあリがとうございました。

 組合長さまにもよろしくお伝えくださいませ」


 院長が受付嬢に丁寧に頭を下げ、それに子供たちのお礼の声が重なる。




 朝より少しだけ人数の増えた一団がそのまま建物を出たが、それを見咎める者は誰もいなかった。



 












お読みいただきありがとうございました。


少しでも「続き読んでもいいかな」と思って

いただけましたら大変嬉しいです。

今後の励みになりますので、よろしければお気持ちの分だけ☆をいただけますでしょうか。


できましたら、ブックマークもしていただけると嬉しいです。

末永くお付き合い下さいませ。


次回タイトル予告「母の決意」

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