3.地盤調査②
「これはまずいな…」
旧ウォーケン領主城跡地に佇み、アルベルトは
苦い表情を浮かべていた。
旧ウォーケン領主城跡地ーーー
市街から離れたその地は、地盤がもう相当緩んでおり、このままではいつ崩落事故や崖崩れが起きてもおかしくないと言われていた。
ウォーケン領が滅んでから既に300年。
石畳はあちこちが大きく歪んでいる。
視認できるほど傷みが進行しているようだ。
歩いていると、ところどころ足元が揺らぐような感覚に襲われる。
跡地全体を歩き、問題と思われる箇所をチェックしてメモを見返す。
相当な数だ。
防衛理論上当然ながら、旧領主城跡地は高い丘の上にあり、後背は崖。
特にこの崖が問題だった。
崖下に都市の重要な水源である川が流れている。
もし崖が崩れたら、川は土砂に呑まれる。
生活用水も農業用水も断たれる。
都市にとって死活問題だった。
早急に崖の補強をしなければ……。
思案を巡らせながら跡地を歩くアルベルト。
その足元の感触が一瞬遅れた。
まずい!来た!
崩落だ!
「みんな、下がって!」
叫ぶより早く、地面が割れた。
石畳が割れ、空気が裂け、視界が反転する。
次の瞬間、彼の身体は暗闇に放り出された。
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どれくらい経ったのだろう。
アルベルトはようやく意識を取り戻した。
落下は長い時間ではなかった。
だが、それなりの衝撃はあった。
あれで意識が飛んだか……
土と埃りにまみれ、咳き込みながら、アルベルトは身体を起こした。
「まだ…生きてるな…」
独り言は確認のためだった。
痛みはあるが…骨に異常はない。
出血もほとんどない…。
立てるか…?大丈夫そうだ…。
運が良かった……。
ここは…横穴…?
屈まなくとも立てる…。
上は……ダメか……
陥没した箇所はもう土砂に塞がれている。
だが辛うじて視界は効く。
どこからだろう、僅かな光が空間を照らしている。
時間的には、もう夜のはずだが……
周囲を見渡す。
どこかに出口は……。
横穴の奥からかすかに風を感じた。
空気が流れている。
外につながる道か。
こっちか……
かすかな風に向うように奥に進む。
光も少しずつ強くなっていく。
もう少し…あと少しで、出口に……
突然アルベルトの視界が一気に開けた。
私は運が良かった……?
いや、逆に運が悪かったんじゃないか……
そこは「ただの地下」ではなく、明らかに人工的に
造られた「空洞」だった。
そして……
空洞の中央、まるで祭壇のように組まれた石材の上に、幼い少女が横たわっていた。




