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37.事後処理②〜リンの目覚め

 本日2話目です。

 翌日、リンが目覚めた。


 倒れてから1日半、アルベルト達にとっては、

長く、焦燥たる時間だった。



「…リン、気分はどうだい」

 アルベルトが優しく語りかける。


「……ホサ…、おねえちゃん…、ばあば…」

 リンがその蒼い目で、皆を見渡す。


「よかった…、無事のようだね…」

「…ホントに、ホントに…よかった…」

 エリシアが目尻を拭い、マーサは零れる涙も構わず、リンに笑い掛けた。


「……じいじは…?」

 ゼクスの姿がない事に気づき、リンが尋ねる。

 マーサがようやく涙を拭い、リンの頭を撫でながら

答えた。

「あのクソじいじはお仕事中だよ。

 ほら、メリッサちゃんも子供たちも助けて、悪い奴らを退治したから、その後始末さ。

 リンが起きたって報せたら、『わしも行くぞ!』

って、仕事放り出して騎士団長室から飛び出して、団員4人がかりでやっと止めてね。

『自分のせいでみんなに迷惑かけたら、リンが悲しむ』って怒ったら、しょんぼりしてたよ」


「……メリッサちゃん、助けてくれたんだ…」


「ああ、じいじとアルベルトが助け出した。

 約束を守ってくれたぞ」


 それを聞いて、リンが毛布を被った。

 よほど心配していたのだろう、

 そのまましゃくりを上げて泣き出した。


「…よかった…、よかったぁ……」



 かすかに漏れ聞こえる安堵の泣き声。


 三人にもそれが伝わる。


 三者三様の表情を浮かべ、暫しの間、

 泣き声と時だけが流れた。






**********************

 





 リンが泣きやみ、ベッドの周りに三人が座る。


「リン、あの夜の事を聞かせてくれないか」

 アルベルトがリンに訪ねた。


「あの夜、ここにいたエリシアとゴッヅ達が、僅か間だがメリッサと話をする事ができた。

 あれは君の力…なのかな…?」


 リンに、僅かに緊張が見えた。 

 戸惑うような、躊躇するような、そんな表情。


 コクン、と頷く。


「……そうか…」


 アルベルトがうつむく。

 何も言葉がない。


 リンがアルベルトの方に視線を向ける。

 しかし…

 何かを怖れるように、

 覚悟をするように、 

 その顔を見られない。



 アルベルトが、うつむいたまま、口を開いた。


 かすれるような声。


「……ありがとう…」


 ハッとアルベルトの顔を見る。

 少しだけ、目に光るものが見えた気がした。


「…僅かな時間だった。本当に僅かな時間だったが…、あれでゴッヅたち親子が、どれだけ心を救われたか…、本当にありがとう…」




「……ホサ…。怒んない…の…?」



 アルベルトがリンを手を握る。


「そんな事はしない。皆が感謝している。

 あの家族に、あれだけ焦がれた娘の声、両親の声を、君は届けてあげたんだ。

 今日、ゴッヅ夫妻に会ってきた。

 彼らがどれだけ君に感謝しているか、会ってみて

改めて知ったよ」


 リンが、恐る恐る聞いてきた。

「…怖がってなかった…?

 拝んだりして…なかった…?」


「彼らは言っていたよ。何も覚えていないって。  

 娘が助けられた事が嬉しくて、他のことは忘れて

しまったと。照れくさげにそう言ってた。

 何も変わらない。これまで通り君は、あの店のパンが好きなお得意様で、メリッサの妹分。それでいいんだ」


 

 リンがポロっと涙をこぼす。

 少し泣き笑い気味な顔をした。


「…うれしい…」





**********************

 





 しばらくして、エリシアがリンに問いかけた。


「悪いが、もう少し聞かせてくれ、リン。

 君はあの時、『領主の覚悟』を聞いたと言って、あの力を発現させた。

 私は確かにあの時、領主としての覚悟を心に誓った。

 それは、君に何を与えたんだ?」


 問いに対して、リンは言葉を選ぶ。

 過たず答えられるように、

 ゆっくり言葉を選ぶ。


「おじさんとおばさんが…メリッサちゃんの声聞きたい…って泣いてた。

 わたしも…、お話させてあげたいって…

 ちょっとでもいいから…って思ってた…。

 そしたら、お姉ちゃんが…誓い…を立てた時…、身体がフワァッて…暖かくなったの。

 暖かくなって…、あ、メリッサちゃんとお話させてあげられるって、自分でわかったの。

 メリッサちゃんの姿も見えた…から…、助けられないけど、お話だけなら…させてあげられるって」



「…やはり…、私の誓い…か…」


 エリシアが納得したように呟いた。


 自分の推測は正しかった。

 では、仮説はどうか。


「あの時の力は微弱なものだった。

 おそらくお前は、もっと大きな力を発現させる可能性を秘めているのだろう。

 それを発現させるために、何が必要なのか、自分でわかるか?

 わかるなら教えてくれ。

 試す必要はないし、確かめるつもりもない。

 ただ、知っておきたいんだ」  


 エリシアの問いにリンは首を振る。


「……ううん、わかんない…」

 

 

 少し落ち込み顔になるリン。

 フワッと暖かい手が降りてくる。


「いいんだよ。わからなくていいし、力が必要になるような事は、起きないほうがいい。

このまま、わからないまま、過ごしていこう」


 アルベルトが優しくリンに告げる。


 エリシアも、マーサも、笑顔で頷いている。



 このままでいられるんだ……

 

 よかった…


 リンは、その小さな胸が熱くなるのを感じつつ

小さく頷き、微笑んだ。

 

 

 




お読みいただきありがとうございました。


少しでも「続き読んでもいいかな」と思って

いただけましたら大変嬉しいです。

今後の励みになります。


末永くお付き合い下さいませ。


次回、フリッツがエリシアにある事を求めます。


タイトル予告「フリッツの要望・アルベルトの要望」

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