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36.事後処理①〜ゴッヅ夫妻

 事後処理編スタート。


 誘拐団捕縛後のお話です。


 アルベルトの知略イヤガラセ

 描きたかったもので。


 初回2話投稿します。


 

  【アルベルト視点】


 事件解決の翌日、私は関係先への報告に慌ただしく動いていた。


 孤児院、運送業組合、シドの酒場。 


 孤児院では、メリッサの他、攫われた子供たち全員の救出に、皆涙していた。

 孤児院の子供たちは、こういう子供を狙う人攫いにとって、格好の標的になる。

 だからこそ、他人事ではなかったため、喜びもひとしおだったのだろう。



 運送業組合では、協力に対して丁寧に礼を述べ

地図を返却した。

 組合長が、なぜか地図を指でつまんで、胡散臭げに隅々までジットリ見ていたが、あれは何か意味があっての事なのだろうか。



 シドの酒場は当然開店前。

 誰もいない店の中で、三人で静かに祝杯(約1名

はミルク)をあげた。

 こころなしか、シドの口角が微妙に上がっていたように見えたのが今回の収穫か。




 最後に、ゴッヅの店を訪れた。


 被害者とその家族として、不安と恐怖と苦悩を

味わった。

 最もケアせねばならない人達。


 それから…リンの事もある。

 リンの事を、外に漏らすわけにはいかない。

 絶対に秘密にするよう、ゴッヅ夫妻を説得

せねばならない。




 店には臨時休業の看板が掛けてあった。

 昨日の今日だ。これも当然か。


 もしかしたら、まだ、親子水入らずで、娘の帰還を

しみじみと喜びあっているのかも知れない。

 

 邪魔するのも申し訳ない、と、日を改めようとした時、店のドアが開いた。


 かららん…


 いつものドアベルとともに、ゴッヅが現れ、

私の肩をつかんだ。


「なんでえ、補佐さん、来てくれたんならそう言ってくれよ。危うく不義理かますとこだったぜ。

 ほれ、入ってくれ」


 いつもと同じゴッヅだ。


 アンナも奥から出てきた。


「補佐さん、いらっしゃい。ゴメンね、あれから

店閉めてて、仕入れとかしてなくてさ。

 領主様のとこの納品は明後日くらいからになりそうなんだよ」

 

 アンナもいつもと変わりない。


「……メリッサは?」


「ああ、あいつは部屋で休んでる。

 まあしゃあねえや。あんな事があったんだ。

 家でゆっくりしてりゃ、いつもの生活に戻って、

また毎日過ごせるようになるさ。

 帰ってきたんだからよ、ココにな」


 "家"を少し感慨深げに言って、ゴッヅもアンナも目尻を軽く拭う。


 助けてやれて、本当によかった。

 この光景を見て、しみじみとそう思う。


 安堵する私の前に、夫婦が並んだ。


 そして、ふたり揃って、深々と頭を下げた。


「補佐さん…、ありがとな…。娘を無事に助け出してくれて、ほんとに感謝してる……」

「そうだよ…、アンタはちゃんと約束守ってくれて……。メリッサを私らに返してくれた…。

 本当に…ありがとうございました……」


「いや、気にしないで下さい。リンが無事だったのも、メリッサが守ってくれたおかげなんです。

 こちらこそ、本当にありがとうございました」


 昨日から続く礼の言い合いだが、

 この流れなら話を切り出しやすい。


「それで…、リンの事なんですが……」


「おお、リンちゃんか。あの子も俺らと一緒に

いてくれてよぉ、一生懸命俺らを励まして

くれてたんだよ。

 途中で疲れて寝ちまったようだがな。

 まぁ、そこは子供だ。当然だよな」


「そうだよね。あんなにちっちゃいのにさ、

『おばちゃん、だいじょぶだよ、ホサが約束してくれた。メリッサちゃん、助けるって』ってずっと励ましてくれてたんだよ。それで疲れちまったんだろうね」


 夫婦の言に少し戸惑った。

  どういう事だ。

  疲れて寝た?

  確かに倒れたが

  子供が普通に寝たわけじゃ…




 その戸惑いを察するように、夫妻が語りかけた。


「補佐さん…、あの夜は正直、俺もカカアも頭ん中が

てんやわんやでよ、あんまよく覚えていねえんだ。

 娘が無事って知らせが入ってよ、あんまりうれしかったんで、その前の事はすっかり忘れちまったわ。

 なぁ、かあちゃん」


「そうなんだよ。ゴメンね。全然覚えてないんだ。

 だから私ら、誰かに話そうにも話せないし、

あの夜の事を尋ねられても、覚えてないって勘弁してもらうほかないんだよ。

 私らにとって大切なのは、あの夜、補佐さんが娘を

助け出してくれたって、その事だけなんだ。

 だから、それ以外の事は全部忘れちまったよ」



 ふたりはニッコリ笑って、少し照れくさそうにもしていた。


 私もふたりに釣られて笑ってしまった。


 ふたりの気持ちがうれしくて、

 ありがたくて、

 ふたりに深々と礼をし、店のドアを開けた。



 かららん…


 またあの音がした。

 

 もうすぐ、いつでも聴けるようになるだろう。

 

お読みいただきありがとうございました。


事後処理編では、アルベルトがその知略で

誘拐犯たちを更に追い詰めていきます。


少しでも「続き読んでもいいかな」と思って

いただけましたら大変嬉しいです。

今後の励みになります。


末永くお付き合い下さいませ。


次回、タイトル予告「リンの目覚め」

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