28.誘拐⑩〜メリッサの希望・エリシアの希望
少々短めですので、2話連続投稿します
【メリッサ視点】
日が暮れてから、馬車の勢いがすごい。
急いでるのがわかる。
アイツら、明日にはおさらばって言ってた。
たぶん、明け方までに別な国に入って、そこであたしらを売るつもりだ。
ちくしょう、悔しい。
あんな奴らにいいようにされて…。
こんなちっちゃい子供まで攫って売り払おうなんて、酷すぎる。
父ちゃん、母ちゃん…、早く、早く…助けに来てよ…
…あれ、なんだろう。
なんか、身体の周りが…光ってる…?
あれ?なんか音が聞こえなくなった。
馬車の走る音もしない。
周りの子供の泣き声も聞こえなくなった。
え…?、なんで…?
「…メリッサ…」
と、父ちゃん?、父ちゃんの声?
どこ?、え?、いないのに声が聞こえた。
「…と、父ちゃん?!」
思わず声に応えた。
「メ、メリッサか?!」
「ほ、本当にメリッサ…メリッサなのかい?!」
間違いない、父ちゃんと母ちゃんだ!
う、うれしい、
うれしくて、涙が出ていた。
父ちゃんも母ちゃんも泣いてるみたいだ。
なんで父ちゃんと母ちゃんの声が聞こえるのか、
不思議だったけど、そんなのどうでもいい。
父ちゃんと母ちゃんが、声だけだけど、
傍にいてくれる。
うれしい。
父ちゃんと母ちゃんの声聞いて、うれしかった。
けど、このままだと、別な国に連れてかれて、どこかに売られちゃう。
途端に心細くなった。
「…父ちゃん、母ちゃん…。あたし…どうなっちゃうのかな…?」
弱音を吐いちゃった…。
あんなヤツらに負けたくないケド…。
でも……、やっぱり…怖いよ……。
そしたら、違う女の人の声が聞こえた。
え?、エリシア…?、領主さま?
領主さまが、あたしを助けるために?
補佐さんって…ああ見えてもとってもエライ人なんだって、父ちゃんと母ちゃんが言ってたけど……
補佐さんが領主さまに頼んでくれたのかな…?
でも…、領主さまが約束してくれた。
今夜中に助けてくれるって!
もうちょっとのがまんだ。
ウチに帰れるんだ!
父ちゃんと母ちゃんのとこに、帰るんだ!
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ーーーー領主邸ーーーー
倒れ込んで、そのまま眠ってしまっているリンを、ベッドに寝かせる。
「すまない、後を頼む。マーサ」
「はい、お任せ下さい」
マーサにリンを預け、再び執務室の作戦本部に向うエリシア。
歩きながら、先ほどの出来事を回想する。
あの光、……あれは神気だった
そして、リンの口調が明らかに変わった
幼年のそれではない
もっと成長した少女のような口調
神気を解放したから…なのか
神として…
だが、伝承では、神気によって周囲一帯を
全て“消失“させたとあった
そびえ立つ山の一部さえも消し去ったと
実際に痕跡は現在も残っている
とすると、あれは…完全じゃない
完全な解放には……ほど遠い
ほんの僅か…
ほんの僅かの力しか、解放していない
自分の意志で発露できるのなら
連中に襲われた時にできたはず
自分の意志ではできない
何か制約がある
発露にはきっかけが要る
何がきっかけになる…?
わからない
今ある情報では足りない
ただ、ひとつわかった事もある
リンが神気を解放するのは
災厄が降りかかっている時
悲劇に見舞われている時
たぶん、そうなんだ
リン、そんな力は…
解放しない方がいいよな
解放しなきゃならない事なんて
起きなきゃいいんだよな
封印されたまま、楽しく暮らせれば
それが一番いいんだよな
お読みいただきありがとうございました。
少しでも「続き読んでもいいかな」と思って
いただけましたら大変嬉しいです。
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末永くお付き合い下さいませ。
次回、アルベルトたちの救出の手が
メリッサもとに届きます
タイトル予告「救出」




