25.誘拐⑦〜メリッサ
本日、予定を変更して、2話投稿します。
ゴッヅとアンナは領主邸の一室にいた。
「本日、お嬢さんの救出作戦を決行致します」
エリシアは、今回の作戦を、捕縛と言わず救出と呼んだ。
二人への配慮ではなく、心底そう思っての呼称だった。
いよいよ来た。
アンナの身体がカタカタと震える。
ゴッヅがその肩をぐっと抱き寄せる。
期待より、心配と恐れが勝る…
それも当然か…
「領主様!お、俺達も連れてってくれ!
自分達の娘だ。親としてこの手で助けてやりてえ!
なぁ、頼むわ!」
「あ、あたしからも頼むよ!連れてっておくれよ、
領主様。後生だから、頼むよ…!」
ゴッヅとアンナが、エリシアにしがみついて
懇願する。
エリシアが、二人の肩にそっと手をやる。
「おふたりのお気持ち、痛いほどわかります。
私もリンの後見人です。リンを守ってくれたメリッサ嬢は、私にとっても恩人です。感謝してもしきれない。
だが、一般人のおふたりを救出現場にお連れする事はできない。ご理解下さい」
夫婦は、また涙をこぼし、震えながら立ち尽くす。
昨日から、どれほどの涙を流したのだろう。
どれだけ辛い時間を耐えてきただろう。
エリシアが二人の気持ちを慮って、力強く宣言した。
「メリッサ嬢は必ず助け出します。
おふたりはここで、メリッサ嬢の帰りを待っていてあげて下さい」
涙で声も上げられず、ただ深々と礼をする二人。
その心痛を背に感じながら、エリシアは部屋をあとにした。
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ーーーとある森の中ーーー
「おいおい、マジもんだな、この地図は」
「当たりめえだ、組合特製のマル秘地図だぜ」
「今日でこの街からもおさらばだ。明日にはガキども売っ払って、俺らはカネを手に入れる、と」
「カーチスはもうヤベェから、俺ぁ今度はリヒテンラーデを根城にするわ」
下卑た男たちの笑い声が響く。
リーダー格の男が昨夜手に入れてきた地図。
コレは本物だ、とリーダー格の男は信じているようだったが、他の男たちは多少猜疑的だった。
とはいえ、今となってはこの地図に頼らざるを得ない事も事実。
このため、慎重に地図にある道を進み、取り敢えず、「野営地」と記されている場所を目指した。
目的地に到着する。
地図が示すそこは、まさしく「野営地」だった。
それなりに整備された広地。
水場も、炊事場もある。
男たちは歓喜の声を上げた。
地図の真正を信じ、自分達の逃亡成功を確信し、少し早い祝杯をあげている。
幌馬車の荷台の奥の檻の中、
そこにメリッサがいた。
他に幼い子供が6人。
皆、生気の失せた目。
疲弊しきって、泣き声も出せない。
絶望しきっている。
しかし、メリッサだけは違った。
父ちゃんと母ちゃんが
助けてくれる
補佐さんもいる
補佐さんって、エライ人のはずだ
きっと助けてくれる
救出を、生存を、帰還を、必死で信じ、諦めの感情をねじ伏せ続けていた。
「おう、ガキども、メシだ」
酒臭い息を吐きながら、ハゲ頭の男が檻の中に昼食を放り投げる。
硬いパンと水の入った革袋。
粗末な食料を皆に配りながら、メリッサが男に怒鳴った。
「もうちょっとマトモな食い物出しなさいよ!
ちっちゃい子じゃ、こんなの食べられないじゃない!」
「ああ?」
男が剣呑な目付きでメリッサを睨みつける。
「ナマ言うんじゃねぇ!クソガキ!!」
男が檻を蹴る。
ガシャーン!
不快な金属音に子供たちが怯え、身を縮こませた。
メリッサが、気丈に男を睨みつける。
それがまた、男の凶暴さを煽った。
「テメエ、なんならココで、テメエだけぶっ殺してもいいんだぜ、ああ!」
腰から短剣を抜く。
殺意を滾らせ、男が近づいてくる。
ーーー父ちゃん…!母ちゃん…!
男の手が檻の鍵にかかった時、
「なんだよ、うるせぇなぁ」
別な男が幌の中を覗き込んで言った。
少し空気が変わる。
「このガキが、いちいちやかましいんだ。ホントムカつくぜ」
苛立ちを抑えられない男を、別な男がたしなめる。
「バカ野郎、んなもんほっとけ。明日にはどうせおさらばするんだ。ここで傷モンにしちゃあ、それこそ大事だぜ。それにそいつぁ、おめえが捕まえてきたガキじゃねえか。取り分なくなんぞ」
苛立つ男がギロリとメリッサを睨む
…が
「ケッ!命拾いしたな、クソガキ!」
一応自分のなかで収まりがついたのか、捨て台詞を残して、連中は去って行った。
ほぅ……と安堵のため息をつくメリッサ。
怯える子供たちに優しく声を掛ける。
「大丈夫、きっと助けが来るから。おウチに帰れるから。だから、ほら、ご飯食べよ」
硬いパンを水に浸し、なんとか食べやすくして、子供たちの口に運ぶ。
「……本当におウチに…帰れる…の…?」
子供の一人がメリッサに尋ねる。
メリッサは、無理にニッコリと笑顔を作り
「ホントよ、絶対帰れる。絶対」
自分に言い聞かせるように、そう答えた。
お読みいただきありがとうございました。
初めて「ブクマ」と「評価ポイント」を
いただきました。ありがとうございました。
嬉しくて、急遽2話投稿してしまうほどですwww
少しでも「続き読んでもいいかな」と思って
いただけましたら大変嬉しいです。
次回、いよいよメリッサ救出作戦が始動します。
タイトル予告「出陣」




