17.孤児院
本日2話目です。
アルベルトとリンは孤児院に来ていた。
リンに外出は認めたが、さりとてひとりで行く場所はあまりない。
パン屋か花屋か、その程度。
これでは時間を持て余すし、目的なく街中をフラフラさせるのはよろしくない。
その点、孤児院ならば問題ない。
友達もできるし、遊び相手にも困らない。
院長や職員の目もあるし、危険な目に遭うこともなかろう。
「わかりました。お引き受けします。
リンちゃん、いつでも遊びに来なさいね」
院長が優しくリンに語りかける。
「ありがとう…」
少しモジモジしながらも、リンの目は庭で遊ぶ子供たちにクギ付けだ。
それゃそうだろう。屋敷には年の近い子供はいないし、遊び相手もいない。
「ほら、リン。庭に行って来ていいよ」
リンの顔がパァと輝く。
「うん、行ってくる」
トタトタトタと外に向うリンを眺めるアルベルトに、院長が微笑みかける。
「あなたが身寄りのない子供の保護者にねぇ。
よく決断してくれたわ。大切にしてあげてね」
アルベルトが微笑みを返す。
「私がこの街の人達から与えてもらったものを、今度は私があの子に与える。ただそれだけです」
「あなたはここの子供たちにも、それを与えてくれていますよ」
「まだ足りませんよ。まだまだ……」
院長がふぅとため息を吐き、少しだけ顔を曇らせる。
「あなたが保護者なんて、ある種の人たちには信じ難い事でしょうね」
「何ですか、それ?」
「一部の人たちから『偏屈者』とか『冷血漢』とか思われてるでしょ。そんな奴が幼子の保護者なんて考えられん、そんなところじゃないですか」
アルベルトが苦笑して、院長の言を軽くいなした。
「別に気にしませんよ」
院長も釣られて苦笑しつつ、カップの茶を口にし、少し遠い目をする。
「あなたはそうでしょうね。昔からそうだったわ」
アルベルトが庭に顔を向ける。
いつもながら賑やかな庭だ。
子供たちの笑い声が溢れる賑やかな庭。
「事実がひとつある。人はある角度からしかそれ
を見ない。人の数だけ真実が生まれる所以です」
「あなたをひとつの角度からしか見てない人達には、あなたが定期的にここを支援していることなんて、思いもよらないんでしょうね」
リンの姿を探す。
子供たちに囲まれている。
みんな笑顔だ。
「それでいい」
アルベルトは、どちらに対しての感想かは言わない。
しかし、院長にはわかる。
それで十分だった。
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「楽しかったかい?」
「うん、楽しかった!」
2人で帰路に着く。
よほど嬉しかったのだろう。リンが孤児院での出来事を、事細かに話したがる。
「ホサ、それでね、それでね−−−−」
「ああ、そうか、よかったね」
帰路の間中、アルベルトがこの3つだけで受け答えすれば会話が成立するほど、リンが顔を紅潮させて熱弁をふるい続けた。




