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15.【別視点】執政官補佐の肖像②

 別視点エピソード②です

 ①とセットでお読みいただけると嬉しいです。

 【元上司】

 おお、君か、アルベルトの事を聞きたいというのは。いいとも、いいとも。まぁ、座ってくれ。


 アルベルトか…。

 いや、今や彼は執政官補佐の地位にある。

 アルベルト様、と呼ぶべきか。

 まぁ、彼はそんな些事は全く気にせんだろうがな。


 彼が私の下に着いたのは、確か12,3年ほど前…だな。22才の頃だ。

 彼は中級職に昇格したばかりだったが、とにかく仕事が異常なほど早かった。

 的確に要点を絞り、的確に問題点を洗い出し、的確に対応策を提示した。


 誰もが彼の仕事振りに驚愕していたよ。


 もともと彼は見習いとして入庁した。

 たぶん13,4才の頃だろう。

 君も知っての通り、見習いの仕事は、主に資料整理だ。

 資料館から、指示された資料を探し、使用済み資料を格納する、アレだ。

 数年間はそればかりやっていたんじゃないかな。

 

 20才前に正式に初級官吏になったが、その頃から彼は異彩を放っていたな。


 下級官吏は、上程する政策案の基礎データの取りまとめが主な仕事だ。

 彼の作る基礎データは、いつも正確性と説得力で抜きん出ていてな。誰も彼がデータ付けした政策案には反対できんほどだった。


 その逆に、彼は、基礎データ作成を指示された政策案を、自分のデータを使って効果を否定して、廃案にさせた事も何度もあったぞ。


「堅物」とか「融通がきかない」とかいう声はあったが、職務に対する真摯さを評価され、中級職に昇格して、私の下に着いたんだ。


 仕事振りはさっき話した通りだ。


 一度彼に尋ねた事があったよ。

「なぜ、そんなに素早く案件を処理できるのか」と。


 彼はな、こう答えたんだ。


 自分はいつも『違和感』を探している、と。


 自分は見習いになってから、毎日資料を見てきた。資料は、その事項の現状分析と数値データを示している。

 それを何年も見ているうちに、『違和感』を覚える部分を見つけられるようになった。

 ある指標の変動、ある指標の分析、ある指標の予想。

 指標の変動に『違和感』を覚えるのは、何らかの異変が発生しているから。

 分析に『違和感』を覚えるのは、これまでとは異なるベクトルに進もうとする意図があるから。

 予想に『違和感』を覚えるのは、過度に楽観的な希望が含まれているため。


『違和感』は、そこに何らかの歪みがある事を示す。


 私はそれを探し、対処しているだけだ。


 別に難しい事じゃない。

 時系列で対比すれば容易い事だ、と。



 私はそれを聞いて、なるほどな、と思ったよ。

 だが、ふと気になってな、もう一つ彼に問うてみた。


「その対比する膨大なデータは、どうやって探すんだ?」


 彼は事も無げに答えたよ。



「覚えてますから」

 



 その後、彼のことを知った先代領主様に重用されるようになって、あれよあれよという間に、中級から上級官吏になり、執政官室付き文官になり、30代初めで補佐の地位に着いたんだ。


 彼を高く評価する者もいるし、苦手と捉える者も勿論いる。


 だが、おそらく彼の事を「公私混同」と非難する者は誰ひとりいないだろう。


「執務に私心なし」が、彼に対する共通認識なんだよ。


 枕詞がどうあろうと、な。

 

 

 

 

 


 

 


 

 

 

 


 

 

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