082 : ハイデベルク・1・鳥の目
待ての勇者と急ぎの姫騎士
082 : ハイデベルク・1・鳥の目
この異世界はほぼほぼ中世ヨーロッパ。
街や山、村や川、それに魔物たちの名前でも分かる通りドイツ、あるいはドイツ語圏の様子だ。ここへ来るまでの街や村、山や川はたいていが、そのドイツ語で、例外は親指姫のげんこつ山。
ハイデベルクは荒地の街という意味で、街をとりまく城壁は高くて堅固だ。
進撃の巨人のモデルになった街……なんといったっけ。
寝たらナントカ…………寝るとナントカ…………
「ネルトリンゲンだ」
「あ、そうか……って、ヒルデも同じこと考えていたのか?」
「声が漏れてるぞ」
「アハハハ……(^^;)……どうかしたか?」
俺を注意した姿勢のまま立ち止まった。
「これ以上近づくと悟られてしまいそうだ」
「あ、そうだな……」
俺たちが進んでいる右側は街の左翼に向かってるんだけど、ここから先は地形的な遮蔽物が一つもない。
「ここから見る限り、怪しい様子はないなぁ……」
ズィッヒャーブルグから始まって、いくつかの町や村、人の集まるところも化け物の巣のようなところも周ってきたが、そういうところには邪気というか怪しの気で満ちているんだが……ここから見る限り、その様子は無い。
「ここからでは、分からんのかもしれんなぁ……」
「戻って、エマのドローンを借りてくるか?」
「ドローンは目立つ……よし」
「ん?」
ヒルデは草むらの中で餌を探っていた小鳥に目を付けた。というか目にした。
チチチチ……
飛び立ってビックリした。俺たちの目の前に仮想インタフェイスが現れて、俺たちが見ている景色を映し出している!
「鳥の目を借りた」
「そんな技が使えたのか!?」
「昔使えた技だ。追われているうちに使えなくなってしまったんだが、スキルが上がってきたのかもな。まあ、ドローンほどコントロールも効かないし、画面は白黒、時間も5分がやっとだ……」
小鳥は一分近く周辺を飛ぶばかりで、街に向かおうとはしなかったが、ヒルデが「ン!」と気を籠め直して、やっと城壁を超えた。
「変だな……」「ああ……」
小鳥の目から見る限り、ハイデベルクの街は平穏だ。
広場には市がたって、物売りや買い物客のさんざめき。兵士や冒険者の姿もあるが、緊張感もなく、散歩しているのと変わりがない。年寄りが日向ぼっこ、子どもたちは駆けまわり、吟遊詩人がなにやら歌って投げ銭をもらっている。ズィッヒャ―ブルグや他の街で目にした光景と大差がない。いや、そのいずれの街よりも穏やかな印象。
「魔物も魔族の姿も無いなあ……」
「ギルドの方を見てみよう」
膝立ちになって両手を伸ばし、すごく大きな動作で方向転換。十秒ほど遅れて小鳥が言うことを聞く。
やっぱり、ドローンより数段操作性が悪い。
屋並みの向こうに、剣と盾の旗、ギルドの標だ。
その屋根を超えたらギルドというところで方向転換……と思ったら映像が途切れた。
「ハァ……限界だなぁ」
「自分の目で確かめよう」
「そうだな」
思い切って、自分たちの目で確かめることにした!
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神(甲と乙) 異世界転生の境に立つ正体不明の女神たち
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
・フンメル 西の墓地に葬られている一万年前の勇者
・カルマ フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い
・トルクビルト(工藤甚一) ズィッヒャーブルグの幻影魔法士(娘:ビアンカ、カリーナ)
・シャイロック ヴェニスの商人
・ロキ 荒れ野の神(ヒルデの義理の叔父) シギュン(妻)
・親指姫 げんこつ山のゴーレムに取り込まれていた
・秀を取り巻く人々 先輩 アキ(園田亜妃) 田中
・他の冒険者たち オンケル シュベスタ―
・魔物たち 謎かけ魔物 リーツセル(Rätsel) ガイストターレン シュプルーデ川の魔物 樹叢の魔物 セイレーン(半鳥半人) ギギとクク(元セイレーンの姉妹) げんこつ山のゴーレム 巨大唇の化け物




