081 : 道のギルド再び
待ての勇者と急ぎの姫騎士
081 : 道のギルド再び
『お待ちしていましたぁ(^〇^)!』
前回同様、いや、それ以上の明るさで出迎えてくれる受付さん。
AIみたいなものでリアル受付ではないんだけど嬉しくなってしまう。
「ハイデベルクまではギルドは無いはずじゃなかったのか?」
『そうなんですが、実は……その…………(-_-;)』
「「「「「「うう~ん( ᗜ ω ᗜ)?」」」」」」
屈託のある物言いに、思わず覗き込むようになって、ゴチン、ガツン、と頭がぶつかってしまう。
ウ! イテ! イタイ! ウォッチ! ギギィ! モウ!
『あ、申し訳ありません、画面を大きくします!』
ズゥイ~~~ン
どういう仕掛けか、画面は三倍に。受付さんも三倍になって、ちょっと圧を感じる。気が付いたのか、すぐに二倍ほどの胸から上の画像に収まった。
「ハイデベルクで何かあったのか?」
ヒルデが機先を制して質問。
一瞬、気後れしたように眉を寄せて受付さんは切り出した。
『じつは、魔王軍が浸透してきて、ハイデベルクのほとんどを制圧してしまったんです。魔王の魔法で、街の南側には猫の子一匹出られなくなってしまいました。北側は開いているんですが、北側は、魔王の領域です』
ええ!?
「それって……」
あとの言葉を継げなかった。北側しか開いていないということは、街の住人も街に留まっていた冒険者たちも魔王に屈する以外に生き延びる手立てがないということだ。
「ギルドのスタッフは……その、どうしたんだい?」
ギルドは魔王征伐の司令塔のようなところだ、魔王軍が進駐してきたら一番先に襲われるだろう。
『はい、情報を掴んだ段階で全員避難しました。街にギルドの関係者はいません』
「そうだったのか……」
『みなさんがやってくるのは分かっていましたから、臨時で道のギルドを開いてお待ちしていたわけなんです』
「そうだったのかぁ……」
思わず腕組みすると、みんなの視線が集まる。
ここでの判断は俺に任せるという無意識のシグナルだ。ギギがエマのスカートをきつくつかんでいる。魔物の子供だけあって、上位魔物の怖さは身に染みているんだろう。
「受付さんの意見は?」
『お決めになるのはみなさんです。わたしの役目は情報提供と注意喚起です』
「そうかぁ……」
そうだろう、ギルドはランクに見合ったクエストを提供し、成果が上がればそれに見合った報酬を支払うのが仕事、クエストを受けるかどうかは冒険者に委ねられる。
まして、目の前の状況はクエストではない。
しかし、ハイデベルクを目前に手をこまねいているだけじゃ俺たちに未来はない。
「スグル、決断しろ」
ヒルデは、斟酌なしだ。まあ、姫騎士とか戦乙女の立場からはそうだろう。
「『待て』の思考も重要だが、今は、どう『進む』かだ。後退の姿勢で思考をループさせては実りが無いぞ」
手厳しい(-_-;)。
「よし、まずは偵察だ。偵察と言っても危険が伴う。エマはギギを保護して、ここに留まってくれ。俺とヒルデで右翼、親指姫と魔術師姉妹は左翼から。偵察だから無理はしないで、日暮れまでには、ここに戻ってこよう」
了解!
声は空に吸い込まれて心もとないが、遮るものの無い荒地、気にしない……ことにして、俺たちは左右に散った。
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神(甲と乙) 異世界転生の境に立つ正体不明の女神たち
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
・フンメル 西の墓地に葬られている一万年前の勇者
・カルマ フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い
・トルクビルト(工藤甚一) ズィッヒャーブルグの幻影魔法士(娘:ビアンカ、カリーナ)
・シャイロック ヴェニスの商人
・ロキ 荒れ野の神(ヒルデの義理の叔父) シギュン(妻)
・親指姫 げんこつ山のゴーレムに取り込まれていた
・秀を取り巻く人々 先輩 アキ(園田亜妃) 田中
・他の冒険者たち オンケル シュベスタ―
・魔物たち 謎かけ魔物 リーツセル(Rätsel) ガイストターレン シュプルーデ川の魔物 樹叢の魔物 セイレーン(半鳥半人) ギギとクク(元セイレーンの姉妹) げんこつ山のゴーレム 巨大唇の化け物




