083 : ハイデベルク・2・街の中
待ての勇者と急ぎの姫騎士
083 : ハイデベルク・2・街の中
ハイデベルクは始まりの安全都市、ズィッヒャーブルグに似た大きな街だ。
夜間は城門を閉じるのだろうが、昼間は門衛がいるばかりでそれほど警戒がきついわけではないようだ。
「南からやってきた、ライズゼニヒ山を目指している」
小細工なしに告げると、門衛の下士官が目を丸くした。
「あれを抜けて来たのか! いや、街でも偵察隊を出そうと協議していたところだ。対策本部が役所にある。この先だから寄ってみてくれ」
「そういう話はギルドではないのか?」
ヒルデが聞くと「合同本部を立ち上げたんだ。この件については一元化している」と応える。
あれだけの異変が起こったんだ、魔界への関所のようなハイデベルクなら、そういう対応もするだろう。
街の状況を完全に受け入れているわけではない。この門衛も本物とは限らないのだが、門からうかがえる様子は、さっき鳥の目で確認した通りの穏やかさなので、そのまま街の中に入っていく。
おーーい
通りに入って間もなく、横の道から声がかかる。
「あ、お前たちも入っていたのか!」
親指姫と魔術師姉妹だ。
「はい、西門から」
「普通に入れたから」「ちょっと拍子抜け」
「魔王軍は?」
ヒルデが聞くと「姿が無い」「今のところ」と答える姉妹。
「役所に行くように言われました」
笑顔なんだけど真剣な目の親指姫。
「……ギルドの様子を見るところからだな」
俺の呟きに、四人とも頷いた。
「……今度は犬の目でいくぞ」
道のわきを歩いていた犬が横丁に入っていく。
立ち止まっていては怪しいので、通りをそのまま進んで行く。姉妹たちが先頭で道の左側、俺とヒルデは遅れて右側。ヒルデが集中できるように俺が前を歩く。
「小鳥よりは扱いやすいが……立ち止まった」
思わず振り返ると、裏返しのインタフェイスに細かな水しぶき……犬は街路樹におしっこをひっかけている(^^;)。
ブルっと画面が揺れて、いよいよギルドが見える。
「「これは……」」
同時に声を上げてしまった……
空中にギルドの旗がひらめいているばかりでギルドの建物が無い!
通行人も、その風景を不思議にも思わず道を往来している。
——隠ぺい魔法、それも相当強力な——
——どういうことだ!?——
ヒルデと思念で驚いていると姉妹が割り込んできた。
——隠ぺい魔法じゃない。でしょお姉ちゃん——
——カリーナの言う通りよ、隠ぺい魔法ならわたしたち、感知できるし——
二人は大魔術師トルクビルトの娘だ、魔法や魔術を見抜く力は信用していい。
——この街……何重にもフェイクが重なってるわ——
親指姫が人差し指を立てた!
!?
五人そろって思い至り、俺たちは全速力でエマたちのところに戻る!
街の風景が後ろに流れていくが、街の住人通行人は処理が追いついていないCGのように形が崩れていく。崩れの下にはよからぬ気配。確認していては間に合わないので、そのまま突っ切り、閉じられようとしている門ををすり抜け、道のギルドへ!
エマ! ギギ!
そこには仲間二人の姿も道のギルドも無かった。
「くそ!」
臍をかんでいると、魔術師姉妹が揃って西を指さした!
「「あっち!」」
俺たちは全速で西に走った…………!
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神(甲と乙) 異世界転生の境に立つ正体不明の女神たち
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
・フンメル 西の墓地に葬られている一万年前の勇者
・カルマ フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い
・トルクビルト(工藤甚一) ズィッヒャーブルグの幻影魔法士(娘:ビアンカ、カリーナ)
・シャイロック ヴェニスの商人
・ロキ 荒れ野の神(ヒルデの義理の叔父) シギュン(妻)
・親指姫 げんこつ山のゴーレムに取り込まれていた
・秀を取り巻く人々 先輩 アキ(園田亜妃) 田中
・他の冒険者たち オンケル シュベスタ―
・魔物たち 謎かけ魔物 リーツセル(Rätsel) ガイストターレン シュプルーデ川の魔物 樹叢の魔物 セイレーン(半鳥半人) ギギとクク(元セイレーンの姉妹) げんこつ山のゴーレム 巨大唇の化け物




