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078 : オンケルとシュベスタ―

待ての勇者と急ぎの姫騎士


078 : オンケルとシュベスタ―





「そうだ、あの人たちを!」


 大唇を退治して、ちょっと放心状態の俺たちだったんだが、エマが最初にニュートラルに戻った。


 シュシュシュシュ


 エアダスターを小出しにするような音をさせて、避難者がストレージから飛び出てきた。


 ビアンカ・カリーナの魔術師姉妹、うちのギギ、そして……いっしゅん分からなかった。


「げんこつ山の親指です(n*´ω`*n)」


「「「あ、ああ( ゜Д゜)」」」


 三人とも、あっけにとられた。


 そいつは、げんこつ山で最後に倒したゴーレムの親玉!


 倒した直後は目鼻もはっきりしない、素体の球体関節人形みたいだったけど、ちゃんとしたお姫様風になっている。


「うん、かわいいお姫さまだったのよ!」


 ギギも幼児言葉ではなく、普通の子供みたいに親指を紹介する。


「あの医務室は最高です!」「みんな元気になりました!」


 ビアンカもカリーナも元気だ。


「おお、みんな回復しているではないか!」「よかったぁ!」


 うちの女子二人が感動して、むろん俺も嬉しくて、屋根だけのテントを出してご飯会に!


 しようとしたら、ギギが後ろを指さした。


「げんこつ山の方に人がいるよ!」


 ええ!?


 振り返ってみると、ボロボロなやつらが、ゾンビみたいにヨタヨタ歩いてくる。


「あ、パーティーの仲間たち!」


 ビアンカが飛び上がり、カリーナが駆けていく!


 ウ(>.<)


 そいつらは、大唇が呑み込んだ冒険者たちで、奴が吐き出した反吐の中から自力で抜け出てきたんだ。


 半分近く消化されてしまったやつも居て、みんなすごい有様で悪臭を放っている。


「いや、こうやって助かったのはスグル殿たち、みなさんのおかげです」


 ビアンカたちを逃がすため最後まで戦っていた老冒険者(075 : 魔術師姉妹は見た!)が礼を言う。


「まだ自力では抜け出せない者もいます、救助していただけませんか……」


 四谷怪談のお岩さんみたいになった白魔導士が、反吐が滴る指で後ろを指した。


「分かった、エマ、この人たちを介抱してやってくれ!」


「はい!」


 自力で這い出てきたのは五人、エマたちに任せて、俺たちは風上から反吐の山に向かった。


「「「ウウウ……」」」


 さすがにたじろいでしまう。


 不忍池一杯分はあろうかという反吐は粘性があって、ちょうど鉄板に掻きだしたばかりのお好み焼きの生地のようだ。


「俺は水流で広げていくから、ヒルデはビアンカといっしょに生存者を探してくれ」


「分かった。しかし、これだけの量だ、流して広げてしまったらすごいことになるぞ」


「あ、ああ……そうだな(^^;)……よし、こうしよう!」


 俺は巨大な浄化槽を思い浮かべ、そこに流し込むイメージを持った。


「では、いくぞ」


 トイレチックスワールでは、水流が強すぎるので——お尻洗浄・弱——をイメージして水を流した。


 結果、自力で脱出できなかった二人を新たに救助したが、ほかの者たちはダメだった。汚れを落として遺骨だけを回収。げんこつ山に塚を作って葬った。


 それから、とりあえずお風呂を出して、スッキリしたところで、それぞれ怪我や体調に見合った食事をした。



「じゃあ、みんなのこと頼んだからね」



 ビアンカが白魔導士に頼んだ。


 救助された者たちは、とても魔王遠征の旅には耐えられないので、白魔導士が引率してシュプルーデ川まで後退する。シュプルーデ川にはシィロックの温泉、もう少し戻ればウンターヴェークスの温泉街。治療に専念させる。


「スグルさんたちには、大変お世話になりました。回復しましたら、また……今度は手助けすることもできると思います。みなさんも、どうかお気をつけて進んでください。あ、申し遅れました、わたし、白魔導士の シュベスター(Schwester)と申します」


「儂は、戦士のオンケルじゃ、今度は魔王の城で会おう」


 他の負傷者も、それぞれ名乗ってくれてガッツポーズを返してくれる。げんこつ山では、いっしょにご飯を食べ、ゴーレムとも戦ったが、まだ名前は知らなかった。


「では、これで……」


 シュベスターが頭を下げると、エマが呼び止めた。


「ちょっと待ってください!」


 エマは、ストレージからお面を取り出した。


「失礼かもしれませんが、よかったらお使いください」


 エマが差し出したのは、シリコンのようなものでできた、女性の人数分の美少女マスクだ。


「拙い魔法しか使えませんので、通気性がいいぐらいしか取り柄がありませんけど……お役に立てば幸いです」


「まあ、ありがとう……うん、いい具合ですね。実は鼻が無くなって、喋るのが大変だったんです……『あめんぼ赤いな あ・い・う・え・お』 おお、楽に喋れます。ありがとうございます!」


 もう一度お辞儀をすると、白魔導士のシュベスターはオンケルと共に負傷者を庇いながら道を戻って行った。


 ギギもなにか言いたげだったけど、言葉が見つからず『げんこつ山のたぬきさん』を口ずさむ。少し距離はあったけど、セイレーンの声はよく通るので『だっこしておんぶして またあした』のところでは、みんな口ずさみながら振り返って手を振ってくれた。


 とりあえず、魔術師姉妹と親指といっしょに北に向かう我々だった。




 ☆彡 主な登場人物


・鈴木 すずきすぐる    三十路目前のフリーター

・ブリュンヒルデ         ブァルキリーの戦乙女

・エマ              バンシーのメイド

・女神(甲と乙)         異世界転生の境に立つ正体不明の女神たち

・ハンス・バウマン        ズィッヒャーブルグのギルドマスター

・フンメル            西の墓地に葬られている一万年前の勇者

・カルマ             フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い

・トルクビルト(工藤甚一)    ズィッヒャーブルグの幻影魔法士(娘:ビアンカ、カリーナ)

・シャイロック          ヴェニスの商人

・ロキ              荒れ野の神(ヒルデの義理の叔父) シギュン(妻)

・秀を取り巻く人々        先輩  アキ(園田亜妃) 田中

・他の冒険者たち         オンケル シュベスタ―

・魔物たち            謎かけ魔物 リーツセル(Rätsel) ガイストターレン シュプルーデ川の魔物 樹叢の魔物 セイレーン(半鳥半人) ギギとクク(元セイレーンの姉妹) げんこつ山のゴーレムとドール  巨大唇の化け物


 

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