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076 : 唇の大化け物・1

待ての勇者と急ぎの姫騎士


076 : 唇の大化け物・1





 トイレチックスワールはフェイントだ!


 エマも俺も理解している、旅も長くなってきたからな。でも、魔術師姉妹は付き合いが浅い、とっさには意味が分からずストレージから目だけ覗かせて不安な顔をしている。


「心配いりませんよ、医務室で待っていてください」


 エマが優しく言って姉妹は奥に潜り込み、エマがストレージの口を閉じた時、俺は渾身の力でトイレ魔法を化け物に食らわせた!



 ビッシャーーーーーーーーーー!!!



 俺たちは一気に十キロほど西に逃げた。


 低空にホバリングしながら東を見る。


 巨大な雲は渋谷区は覆ってしまうが世田谷区は無理だろうというくらいの大きさだ。雲は朝日を受けてうっすらと透け、透けた雲の中にNTTドコモ代々木ビルと渋谷スクランブルスクエアビルほどに大きな二つの影……やつの本体だ。

 二つに見えているということは唇を横から見ているということで、その本体は横向きのまま南を指向しているということだ。奴の本体は巨大な上あごと下あごなんだ。二つが重なった時はこちらを向いていることで、また全速で逃げなければならないだろう。


「図体は大きいが、それほど凶悪化はしていないようだな」


「どこがだよ(;'▢')!」


 冷静なヒルデに声が大きくなってしまう。


「もう何人も食べられているのでは……」


 エマも微妙に声が震えている。


「まとっている雲が白い。邪悪なものなら黒く濁っている……」


「それなら逃げ切れるかもしねませんね」


「逃げはせん、あれを放置していては、さらに成長して凶悪化する……」


「え、討伐するつもりなのか?」


「ヒルデさま……」


 顎に手を当て思案するヒルデ、やっぱりヴァルキリーの姫騎士だ、この程度ではメゲないんだ。


「あ、動きます」


 ノソノソと動き出した化け物はスピードを上げて南に進むと、げんこつ山を覆いつくしてしまった。


 ンガア!


「え?」「まさか?」


「いや、そのまさかだ」


 ゴックン!


「「ええ( ゜Д゜)!?」」


 おぞましい嚥下の音をさせ、化け物はげんこつ山を食って、いや呑み込んでしまった!


「スグル、おまえのトイレチックスワールの水は東京をイメージしているんだな?」


「え……意識はしていないけど、トイレそのものは俺の生活圏内にあるやつだ」


「もう一度トイレチックスワールを仕掛けよう、げんこつ山を吞み込んだ後だ、喉も渇いているだろう」


「え、あいつを助けてやるのでございますか!?」


「見ればわかる。スグル、使う水はわたしがイメージする。いくぞ!」


 なんだか分からないが戦乙女の勢いに引っ張られて、低空を化け物の南側に周る。


「こんどは飲みやすいように上に向かって発射してくれ」


 そう言うと、ヒルデは俺の後ろに回って両手を肩甲骨のあたりに当てた。


 ジンワリと水のイメージが伝わってくる。


 ドドド~~~~~~~~


 シンガポールのマーライオン、その数十倍の感じでトイレチックスワールをかます。


 放物線を描いた水流は『待ってました!』という感じで化け物の口に吸い込まれていく。


 ゴクンゴクン……


 ヒルデのサポートがあったからだろう、それまでの最大量の水、おそらく何万トンもの水が呑みこまれていく。


 ゲップ


 小噴火のようなゲップを確認して、俺たちは東に避難。


 南中を過ぎた太陽は上から化け物を照らし、その本体を浮き立たせる。


 グググ……


 少し苦しそうに唸ると、本体は身をよじり始めた。


「今だ! あの唇、縦に切り込みを入れるぞ! エマはサポート!」


「あ、ああ!」「はい!」


 ブブン!


 勢いをつけて飛び上がると、俺は下唇、ヒルデは上唇に迫り、こんなものでやっつけられるのかと疑うほどに浅い傷をつける。


 エマの魔法で加速してもらい、さらに東に退避する。


 ヒルデは、おちょくるように奴の上を飛び回る。


 ビュン ビュビュン ビュン


 ンガア!


 気分を害した化け物は、ヒルデを呑み込もうとして大きく口を開けやがる!


「ヒルデ!」「ヒルデさま!」


 プチ!


 大きな、しかし儚げな音をさせて、化け物の唇が切れた!


 


 ☆彡 主な登場人物


・鈴木 すずきすぐる    三十路目前のフリーター

・ブリュンヒルデ         ブァルキリーの戦乙女

・エマ              バンシーのメイド

・女神(甲と乙)         異世界転生の境に立つ正体不明の女神たち

・ハンス・バウマン        ズィッヒャーブルグのギルドマスター

・フンメル            西の墓地に葬られている一万年前の勇者

・カルマ             フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い

・トルクビルト(工藤甚一)    ズィッヒャーブルグの幻影魔法士(娘:ビアンカ、カリーナ)

・シャイロック          ヴェニスの商人

・ロキ              荒れ野の神(ヒルデの義理の叔父) シギュン(妻)

・秀を取り巻く人々        先輩  アキ(園田亜妃) 田中

・魔物たち            謎かけ魔物 リーツセル(Rätsel) ガイストターレン シュプルーデ川の魔物 樹叢の魔物 セイレーン(半鳥半人) ギギとクク(元セイレーンの姉妹) げんこつ山のゴーレムとドール  巨大唇の化け物


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