074 : なんというか、昔のゲームのようだ
待ての勇者と急ぎの姫騎士
074 : なんというか、昔のゲームのようだ
げんこつ山を過ぎてから「ギギ」とか「ギギッ!」とかは言わなくなった。
あ、ギギのことだ。
ロキが魔法で人らしくしてくれたということもあるんだろうけど、ギギ自身の努力というか能力というかで変わってきつつあるんだろう。ギギ本人も、そういう自分が嬉しいようで、道中の景色やあれこれを見つけては「わ!」とか「あれぇ?」とか「ええ!?」とか歓声を上げる。
幼子が新しい環境、新しい刺激に感動するのは、傍で見ていても楽しい。やっぱり連れてきてよかったと思った。エマは、もうすっかりお母さんという感じだし、ヒルデも無口でぶっきらぼうだけど、癇に障るというような感じはしない。
そんなギギが「あれ!?」と言って立ち止まった。
「どうしたのギギ?」
エマが訊ねると、通ってきた道の向こうを指さす。
「あ、ああ……」
ついさっきまで見えていたげんこつ山が見えなくなっていた。
見ようによっては餃子にも見えるげんこつ山は、そんなに高い山ではないので、道を進めば見えなくなるんだろうけど、それほどには起伏の無い原野なので、俄かに見えなくなるというのはおかしい気もする。
タタタタ
プールの縦幅くらいを走って戻ると「見えるよぉ!」とピョンピョン跳びながら彼方を指さす。
俺たちも戻ってみると、たしかに、突然見えるよようになる。
なんというか、昔のゲームのようだ。
RPGやらレースゲームをやっていると、道の向こうに突然山やら建物が現れることがある。面白いと思って振り返ると、さっきまで見えていた山やら建物が見えなくなっている。
ゲーム機の能力が低かったので、遠くの景色は処理しきれなくて消えてしまう。それに似ている。
「ゲーム機とは事情が違うと思うぞ」
ヒルデが反論。ヒルデは、しょっちゅう令和の日本に避難してきていたので違いが分かるのだ。
「どう違うんだ?」
「目には見えないが妖気が漂っている、そのせいで見えなくなっているんだ。無味無臭だから、ギギが気づかなければそのまま進むところだった」
「あ……げんこちゅ山のみんな!」
「エマ、カメラを飛ばしてくれ!」
「分かりました!」
ストレージから、いつものドローンが飛び出して、すぐに映像を送ってくる。
「……霞んで先が見えませんねぇ」
「無事に進んでいればいいけどな……」
「無事ではないだろう、カスミの向こう邪悪な気が……何人か戻ってくるぞ!」
「後衛の魔導士さんたちです!」
「追われている! 行くぞ!」
「エマ、ギギをストレージに!」
「はい!」
何ごとかを伝えると、ギギはコクンと頷いてストレージの中に消えた。
「東京ドームの医務室に行くように言いました」
「うん、あそこなら親指もいるし、大丈……!?」
言い切る前にファイアボールとアイスタガーがいっぱい飛んできた!
シュシュシュシュ ガキガキ シュシュシュシュ ガキガキガキガキ! チュイーーン!!
最後の一発を弾き返すと、道の向こうから幻影魔術師の姉妹が逃げてきた!
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神(甲と乙) 異世界転生の境に立つ正体不明の女神たち
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
・フンメル 西の墓地に葬られている一万年前の勇者
・カルマ フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い
・トルクビルト(工藤甚一) ズィッヒャーブルグの幻影魔法士(娘:ビアンカ、カリーナ)
・シャイロック ヴェニスの商人
・ロキ 荒れ野の神(ヒルデの義理の叔父) シギュン(妻)
・秀を取り巻く人々 先輩 アキ(園田亜妃) 田中
・魔物たち 謎かけ魔物 リーツセル(Rätsel) ガイストターレン シュプルーデ川の魔物 樹叢の魔物 セイレーン(半鳥半人) ギギとクク(元セイレーンの姉妹) げんこつ山のゴーレムとドール




