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073 : ゴーレム戦 ・3

待ての勇者と急ぎの姫騎士


073 : ゴーレム戦 ・3  





 アキバのドールショップを思い出した。



『せんぱい、すごいのがありますよ!』


 平仮名の響きで俺を呼ぶと二段重ねのガチャの隣を指さした。


『アキ、ドールにも興味があったのかぁ?』


 ガチャの向こう、茶髪の子がアキと並んでショーウィンドウを見ている。


『えへへ』


『あ、あれ?』


 アキと並んでいたのはアマロリ女子かと思ったら、等身大のドールだった。


 ドールは道路側にお尻を向けてショーウィンドウのドールたちを見ているように展示されている。


『考えましたねぇ、一見ドールの品定めしてるみたいだけど——実はドールだった!——てコンセプトなんですねえ!』


 そのドールはシリコンとかTPEのじゃなくて、樹脂製の多関節ドール。ポージングが巧いので一見人に見え、横に立って初めてドールと分かる仕掛けになっている。


『うっひょー! さすがリアルサイズ、素体だけで24万ですよぉ、専用スタンドにコスとか揃えたら30万いっちゃいますねえ』


 まあ、客寄せの意味が大きいんだろう、次に来た時には同じアマロリのまま通りを向いて『お手を触れないようにお願いします』の札がかかっていた。


 何度か、五六回も出くわしただろうか、日によっては微妙に姿勢が変わる。ある時などは、行きはそっぽを向いていたのに、帰りは俺の方を見ているような気がした。


『目玉を変えたんですね、球体の真ん中に瞳があって、どこから見ても見つめているように見えるやつですよ』


『あ、ああ、そうだろうな(^^;)』


 そして、次に通りかかった時、店は定休日なのか臨時休業なのか、スタッフが陳列をやり直している。その店の奥で例の等身大が裸にされヘッドを外しにかかられていた。


『なんかプチショックですねぇ(^^;)』


 多関節ドールなので、エロいわけではないんだけど、ちょっと無残。関節がむき出し、いかにも作り物めいている。コスを着せて見栄えするように、腰と太ももが大きく作られている。腰と太ももを繋ぐのはハンドボールのボールぐらいの球体で、脚の付け根が腫れているように見え、ちょっとシュール。

 それ以来、その等身大は見かけなくなったけど、代わりに1/10ぐらいの素体がいっぱい売り出された。いわゆる美プラ(美少女プラモ)の先駆けになったやつだったんだろう。


 ゆっくり降りてきた親指なんだけど、あとニメートルというところでなけなしの力を使い果たして、糸が切れたように落ちてしまった。



 クシャ



 落ちてしまうと、手足があらぬ方向に向いて、無残なようなコミカルなような。


「み、見ないで……」


 目鼻も無い素体なんだけど、声は震えているけどしっかりしている。


「手足、整えてもいいですか?」


 エマが言うと、小さな声で「おねがい」と言った。


「ギギをお願いします」


 ギギを俺に預けると、しゃがんで上向きにして、手足を整えてやり、ストレージからブランケットを出して掛けてやる。


「腕にヒビが入ってます。治療しますね……どなたか、添え木を探していただけませんか?」


 エマが横顔で頼むと、冒険者たちはキョロキョロして十秒ほどで枝の切れ三本が集まった。枝を持ってきた白魔導士は、そのまま治療を見守り、ほかの者もそれを取り巻いた。


「はい、これで安静にしていれば直るでしょ。脚は……大丈夫のようね」


 脚をチェックすると、すぐにブランケットを元に戻してやる。


 ブランケットを掛けると、アニメ体形というかドール体形というかも自然に感じられ、目が空洞で、のっぺらぼうという以外に違和感はない。


「しばらく動かせませんね……」


 エマが呟くと、ヒルデが冒険者たちに声をかける。


「我々は、ここでこいつの看病をする。諸君らは先に行ってくれ」


 さっきまで戦っていた相手だ、ちょっと不足そうな奴もいたけど、ヒルデのリーダーシップは戦いで実証済みなので大人しく指示に従って北に向かった。まあ、げんこつ山のボスにこれ以上関わりたくない気持ちもあるだろうしな。



「これでよかったんだろう?」



 最後の一人に手を振ると、振り返るヒルデ。


「あ、ああ、すまん」


「東京ドームに医務室があっただろう」


「はい、そこでしばらく休んでもらおうと思います。よろしいですか、スグル様」


「あ、ああ」


 返事をすると、エマは球体関節人形といっしょにストレージに入った。


 五分ほどすると「お待たせしました」と戻ってきて、静かに——大丈夫ですよ——と頷いた。


「さあ、行くぞ」


 ヒルデに続いて立ち上がると、ギギが手を伸ばしてくる。


 甘えているんじゃない、幼いながらも分かっているんだ、俺のモヤモヤ。


 奇跡的に無事……と思ったら知らぬうちに結界を張っていたトイレを収納して、俺たちも北を目指した。


 

 ☆彡 主な登場人物


・鈴木 すずきすぐる    三十路目前のフリーター

・ブリュンヒルデ         ブァルキリーの戦乙女

・エマ              バンシーのメイド

・女神(甲と乙)         異世界転生の境に立つ正体不明の女神たち

・ハンス・バウマン        ズィッヒャーブルグのギルドマスター

・フンメル            西の墓地に葬られている一万年前の勇者

・カルマ             フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い

・トルクビルト(工藤甚一)    ズィッヒャーブルグの幻影魔法士(娘:ビアンカ、カリーナ)

・シャイロック          ヴェニスの商人

・ロキ              荒れ野の神(ヒルデの義理の叔父) シギュン(妻)

・秀を取り巻く人々        先輩  アキ(園田亜妃) 田中

・魔物たち            謎かけ魔物 リーツセル(Rätsel) ガイストターレン シュプルーデ川の魔物 樹叢の魔物 セイレーン(半鳥半人) ギギとクク(元セイレーンの姉妹) げんこつ山のゴーレムとドール 


  

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